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蒼色

 悪魔、悪魔、悪魔。その階級に関係なく次々に切り裂き、殺し、消滅させていく。


「十体はやったが……まだ居るな」


 悪魔は気配が分かりやすくていい。居ると知っていれば、簡単に位置が分かる。


「次は、アンタだ」


 ビルの屋上から飛び降り、剣を振り下ろした。羽根飾りを被り、孔雀の尾を付けた男の体が切り裂かれ、消滅する。


「な、何だッ!?」


「急に悪魔がまっぷた……消滅したぞッ!?」


 戦っていたハンター達に重傷者は居ない。次に行こう。


「これで十一……ここら辺には、もう居ないな」


 小悪魔も含めれば既に百体以上殺している。かなり狩れただろう。これでどれだけの魂が回収されるのを阻止できたか分からないが、十分ではある筈だ。


「気になる報道が幾つかあるな」


 事件は更に広がりを見せているが、中でも気になるのは三つだ。


「東京に出現した赤い男、群馬の異界崩壊、新潟に現れた魔物」


 どれから対処すべきか、考えるべきだ。


『カラス、東京の様子は分かるか?』


『ボスか。東京は特に大きな被害は無いな。中途半端な魔物や悪魔がチラホラ居るみたいだが……この感じは、恐らく囮だな。東京には強いハンターが多いから、そいつらを東京に縛り付けておく以上の意味は無いんじゃねえか』


 なるほどな、囮か。


『赤い男、というのは分かるか?』


『あぁ、そいつだけかなり暴れ回ってる。ただ、かなりの量のハンターが対処に回ってるからボスは違う奴に向かった方が良いかもな』


 まぁ、東京だからな。態々向かっても人手が過多になるかも知れない。


「となると、群馬の崩壊か新潟の魔物だな……」


 崩壊は数さえいればどうにかなる節がある。新潟に行くか。



「――――おぉっと、待って待って」



 現れたのは青髪の男。目も綺麗な青色で、空のように透き通っている。そして、強者の匂いがする。


「君、誰? それと、ヤバい悪魔が居るって聞いて来たんだけど、知らない?」


「アンタこそ誰だ? この状況だ。無駄話をしている時間は無いんだが」


 男は肩を竦めてこちらに歩いて来る。完全に見えているな。気配を察しているというよりも、明確に見えている様子だ。


「誰って、俺のこと知らないの? ま、それは良いとして……この状況で透明になって気配まで消してる人が居たら気になるじゃんねぇ?」


「……俺はハンターだ。アンタは違うのか?」


 見えない筈の俺が見えるってことは一般人じゃないだろう。


「ハハハ、そんな質問をされる日が来るなんて思わなかったなぁ」


 男は笑顔のまま懐からカードのようなものを取り出した。協会の登録証だ。


「見てこれ、一級の特殊狩猟者の証」


 確かに、そこには一級の文字が刻まれていた。


「『(あお)』とか『蒼天(そうてん)』とか、聞いたことないかなぁ。佐渡(さど)海梦(かいむ)って言っても分かんない? 最速で一級になったハンターとして有名だと思うんだけど」


「知らん。それと、どうでも良い。だが、アンタもハンターなら分かるだろう。今は、話してる暇なんて無い」


「まぁね。でも、君がもしこの事件に関わってるなら……ハンターとして、狩っておくべきだと思ってさぁ」


 男の……佐渡の目に剣呑さが宿る。


「悪魔が発生してる場所で透明になってる奴なんて、最大級に怪しいと思わない? 俺は思っちゃったんだけど」


「……寧ろ逆だな。俺は悪魔を倒した方だ」


 俺が言うと、佐渡は目を細める。


「まぁ、確かに悪魔は居なくなってるけどさ……処理のスピードが早すぎるでしょ。ここら辺、結構居たよ? それなのに俺が着くまでに全部いなくなってるなんて、流石に有り得ないと思うんだよね」


「……何が言いたい?」


 俺の問いに、佐渡は笑顔を消した。


「回収してるんだろ? 各地で起きてる事件、事故。その魂を収穫した悪魔たちを回収してる最中なんじゃないのかって、俺は疑ってるんだよ」


 なるほどな。


「違う。それ以上の言葉は用意できないな」


「だったら、ここで拘束されててくれないかな? この事件が終わるまで待っててくれれば良いからさ。大丈夫、俺は一級だから……直ぐに終わらせて来るよ」


 流石に、時間を使い過ぎている。それに、こいつには俺がある程度の実力を持っていることは既にバレているだろう。


「しょうがないな」


 俺は新潟に近付くべく転移を使うことにした。


「一応言っておくが、俺の疑いは既に晴れている。後で調べてみろ……じゃあな」


 転移を発動……阻害されたな。閉じ込められている。


「結界か」


「その通り。早速だけど、気絶して貰うよ」


 一瞬でこちらに駆けてくる佐渡。高速で振り抜かれる拳を回避し、そのまま佐渡を地面に転がした。


「はッ!?」


「今度こそ、じゃあな」


 魔術によって結界が崩壊する。それと同時に転移を発動し、俺はその場から姿を消した。






 ♦




 老日勇……やはり、邪魔だな。悪魔だけを執拗に狩っているのは、こちらの狙いに気付いているからか。


「とはいえ、一人の動きでは限界がある」


 その為にこの広範囲で事を起こしたのだ。


「一級の奴らもある程度位置を捕捉出来ているな……」


 標的の『竜殺し』は勿論、『蒼』や『彩雲』も位置を把握できている。他も大体の位置は特定済みだ。危険を感じた悪魔は直ぐに回収できる。透明化して動き回っている老日相手では不可能だが。


「この調子なら……三か、四。二は無いだろうな」


 配置した覚えは無いが、東京で暴れているという赤い男による被害もあり、その程度は集まりそうだ。


「そろそろだな」


 時は来た。第二段階の準備を進めよう。

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[一言]  まさかの黒幕と赤い男は無関係!?
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