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緊急警報

 異常個体の処理は終わった。七里も戦闘可能な状態に戻った。俺の役目は終わりと言っても良いだろう。


「帰るぞ、カラス」


 カラスを呼び戻し、俺はそろそろ東京に戻ることにした。


「……何だ?」


 俺の感覚が何者かを捉えた。そこだ。


「グェッ!?」


「小悪魔か?」


 お粗末な隠形で姿を隠していたのはゴブリン程度の大きさの小悪魔だった。小さな翼を必死に動かして逃れようとしているが、俺に首を掴まれている状態でそれは叶わない。


「『答えろ』」


 俺の姿は透明化しているので、小悪魔には俺の声だけが聞こえているだろう。


「『何をしに来た』」


 自分より格の低い相手ならこれだけで命令できる。ただ、問題も多く人間には積極的に使えないが。


「キ、キィ……オ、オレハ、タマシイヲカイシュウシニキタダケダ」


 聞き取りづらいな。今日はやけに片言の奴と会う日だ。


「『詳しく説明しろ』」


「ア、アルジカラ、ココデホウカイガオキタカラ、タマシイヲカイシュウシテコイッテ」


 なるほどな。異常個体や群れに殺されたハンターの魂だけを回収しに来た訳か。


「『その主ってのは誰だ?』」


「オ、オトコッ! トシヨリジャナイ。ソレクライシカワカラナイッ!」


 成る程な。まぁ、一応記憶も見ておくか?


「じゃあ、悪いが」


 そう言って俺が剣を抜いた瞬間。


「グギャ――――ッ」


 小悪魔の体が爆発四散し、消え去った。まぁ、大した情報は持って無さそうだったから良いだろう。


「さて、帰るか」


 一応、東京をホームタウンということにしているからな。帰ることにしよう。


「の前に、連絡を見ておくか」


 スマホを取り出して開くと、画面に見たことの無い通知があった。


「……緊急警報?」


 通知をタップしアンロックすると、現在日本で大規模な組織的テロ行為が行われている可能性があるという件について書かれていた。一般市民は避難せよとのお達しだ。


「大規模なテロ行為……何だ?」


 少し調べれば直ぐにニュース記事が出た。


「関東圏を中心に各地で連続的に事件事故が発生。これらが意図的に起こされたテロ行為である可能性は非常に高い、か」


 飛行機墜落、鉄道の脱線事故、ビルの爆破、大規模火災、異界の崩壊、そして……悪魔の出現。


「ソロモンか」


 悪魔の出現、そしてこの異界に現れた小悪魔。間違いなくソロモンの仕業だろう。


「時間的にはどれもこの異常個体発生の後だな……」


 小悪魔の口ぶりからすれば、まるでこの異界の崩壊自体はソロモンの仕業ではないかのようだった。もしそうなら、この崩壊をきっかけにソロモンは事件を起こしたのかも知れない。

 恐らく、関東のハンターは少なくない数がこの異界の近辺に集まってきている筈だ。となれば、そのタイミングは事件を起こす絶好のチャンスだろう。


「遂に本気で動き出したって訳か」


 ……アイツにも連絡しておくか。LINKから電話を掛ける。


「生きてるか?」


『生きてるよ。君こそ大丈夫?』


 繋がったか。蘆屋干炉、この前遭遇した陰陽師だ。


「知っているかも知れないが、今日の騒ぎは間違いなくソロモンの仕業だ。アンタは今どうしてる?」


『僕は……っていうか、僕達は関東周辺に散らばって人命救助に注力してるって感じ』


「そうか……ソロモンは魂を集めようとしてる。復活の為にだ。今日の事件でその目的が達せられる可能性もある」


『へぇ……君はどうするの?』


 蘆屋の問いに俺は少し考え、答えを出した。


「魂を収穫するのは悪魔だ。積極的にそいつらを狩る」


 俺が対処すべきは悪魔、そもそも他の奴じゃ倒せない可能性もある。


「取り敢えず、何か重要な情報を得たら教えてくれ」


『うん。そっちもよろしくね』


 俺はLINKの通話を切り、スマホを直した。


「行くか」


 なりふり構うことなく、俺は転移した。






 ♦




 栃木県、宇都宮市。四方八方から聞こえる悲鳴。倒壊するビル、燃え上がる街、転がる死体。そこは正に阿鼻叫喚の様相を呈していた。


「ハハハハハハハッッ!!! 楽しいなぁ!? 久方ぶりの現世だが、これは中々悪くないッ! ハハハハハッ!」


 それは悪魔だ。二足歩行する筋骨隆々の鹿、その背からは翼が生え、尻からは炎の蛇が尻尾のように生えている。


「どうした蛆虫共ッ! 悪魔の大伯爵たるこの我に恐れを成して誰も近寄れんかッ!? ならばよかろう、雷の嵐よッ!!」


 悪魔の頭上の空に暗雲が浮かび、その雲の中を雷が渦巻いている。悪魔を止めるべく集まったハンター達は冷や汗を垂らし、その光景を見た。


「来ないならば死ぬだけだぞ? ほぅら、一人目だッ!!」


 ハンターの内の一人に、嵐の雲の中から雷が落ちた。



「――――見つけたぞ」



 ハンターに落ちる雷。それは僅かにズレて隣の地面を焼いた。それと同時に悪魔の体が八つ裂きにされ、消滅する。


「次だ」


 誰がそれを為したのかも分からない。ただ暗雲は晴れ、ハンター達は呆然と取り残された。






 ♦




 長野県で発生した異常個体と崩壊。それは正しく、好機だった。


「……これで、正真正銘の外道だな」


 地獄行きは決まりだろう。だが、それでも俺はやり遂げると決めた。


「かなり無理やりだからな、回収効率は良くないだろうが……それでも、規定数には届く」


 目標の分だけ魂を収穫できれば……竜殺しは、殺せる。


「待っていろ、竜殺し……もう直ぐだ」


 俺は今日、沢山の人を殺す。それについては許されようという気も無い。だが、だからこそ俺は完遂しなければならない。


「……復讐を」


 必ず、殺す。

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