表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/486

食堂

 帰ってきた天明によって色々と説明を受けた俺達は、飯の時間だと言うことで荷物を置いて食堂に赴いていた。


「ふ、ふふ……い、いえ、すみません何でもないです」


「ちょっとシュールよね」


 口周りは空いている仮面なので普通に食べれはするが、呪いの仮面をつけてる男が普通に食堂で飯食ってるのは確かにシュールかも知れない。


「人を馬鹿にしながら飯を食うのはどうかと思うが?」


「い、いや、馬鹿にはしてないですよ!」


「碧ったら、最低ね」


「だから、そんなつもりは無いですからね!?」


 日頃から好き放題遊ばれてそうだな。お似合いって感じだが。


「こんにちは、少しお邪魔しても良いかな?」


 四つの席の内、余っていた一つの席に男が手をかける。年齢は俺と近そうだが、俺よりは少し若いくらいか。


「私は法少家の耶座母(やざも)。始めて見る顔の方もいらっしゃったので、ご挨拶させていただきたいと思いまして」


「はい、私は勿論良いですよ~!」


「私も好きにしてくれて構わないわよ」


「別に、断る理由も無い」


 耶座母はにこりと笑って頷き、席を斜めに傾けた。


「では、食事を持って来るよ」


 耶座母は手を振り、一旦この場を去った。一応、決まった料理が出る訳では無く、ある程度は好きな料理を選べる。数は大して多く無いが。


「さっきの奴は誰なんだ?」


「耶座母さんは、典型的な非戦闘タイプの陰陽師ですね。法少家という家系的にも、物探しや占いを家業にしていた陰陽師ですから」


「後入りの陰陽師でも無いのにこの歳まで卒業できていないのは珍しいけれど、彼の場合はそうなるべくしてなってる感じね」


 まぁ、温厚そうだったからな。ちょっと腹黒そうな雰囲気もあったが。


「ただ、私が思うに彼がまだここに残っているのは……」


 杏が続きを話そうとした時、耶座母が手を上げて帰ってきた。


「やぁ、待たせたね」


「いや、寧ろ早かったくらいだと思ったが」


 耶座母は席に座り、料理の乗ったトレイを机に置いた。


「いただきます」


 耶座母は丁寧に手を合わせ、持ってきた食事に手を付けた。


「うん、美味しいね」


 確かめるように咀嚼していた耶座母は、そう呟いた。


「今年も、かしら?」


「あはは、そうそう。正に、そう思ってたところだよ」


 去年と味の違いがあるのか確かめてたんだろう。門人試合は十二歳からいけるからな。こいつは普通に八年くらい居るんだろう。ただまぁ、半年に一人しか卒業できないと考えるとそこまでおかしなことでも無いだろう。


「門人試合ってのは、昔と今で変わってたりするのか?」


「いや? そこまでは変わってないね。ただ、他の術の利用に関しては何度か協議がされたみたいだけど……結局のところ、積極的に魔術を使用したりする人なんて居ないからね」


 まぁ、そりゃそうだろうな。そこまでして門人試合を卒業する意味も薄いだろう。何なら、デメリットの方が上だ。


「それじゃあ、こっちからも質問をして良いかな?」


「あぁ」


 俺に質問か。まぁ、気にはなるだろうな。こんな素性の知れない仮面の奴は。


「君は……元から陰陽師だった訳では無いよね? というか、陰陽師の生まれではないと言うべきか」


「そうだな」


 最初から知っていたかのように、耶座母は頷いた。


「だとして、君は何が理由でこの世界に踏み入ったのかな? いや、正確には……どうして、蘆屋干炉が君を弟子にしたのか、それが気になる」


「それは私も気になるわ。彼女は、言っては何だけれど捻くれているし……何より、男嫌いって話も聞いたわ」


「単純に、良い人だからじゃないですか? 私のことも助けてくれましたよ」


 どうして、か。


「はっきり言うと、俺も知らん。アイツがどういう考えで俺を選んだのか、アイツから直接聞いたりはしてないからな」


「……ふむ、そうか」


 耶座母は顎に手を当て、こくこくと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ