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腹黒

 迫る波動を反射する鏡。それは向かってくる波動を真っ直ぐに跳ね返す。老日の霊力によって強化されたその波動は、向かってくる波動を呑み込みながら方心に帰っていく。


「ば、ばかな――――ッ」


 俺は方心の横に転移し、方心の体を掴んで横に引っ張る。


「ッ!? ハァ、ハァ……!」


 方心の横を波動が通り抜け、隆観を消し飛ばしたあと結界に直撃してビリビリと罅を入れる。


「な、な……!」


「札とか付けてなかったからな。当たったら死ぬだろ?」


 抗議するような目線を向ける方心から手を離すと、どさりと落ちる。


「……ッ」


 状況を理解し、何も言えなくなった方心は俯いて黙りこくった。


「お見事だった」


 パチパチと手を叩きながら直人が歩いてくる。


「しかし、すまなかったな……まさか、守護の札を付けていないとは」


「俺が付けてないのは仕方ないだろう」


「いや、私も注意するべきだった。十分、気付ける余地はあった筈だったんだが……歳かも知れないね」


 歳と言うほどの歳でも無いだろう。


「お疲れ、勇」


「あぁ」


 手巾を取り出して俺の首回りを見た蘆屋だったが、汗一つかいていないことに気付くとつまらなそうに手巾をしまった。


「それで……君、もう文句無いよね?」


「ッ!」


「邪魔だから、早く消えてくれないかな」


「わ、私は……」


 表情が赤くなったり青くなったりする方心。その前に立って問い詰める蘆屋。


「そのくらいにしてあげなさい、干炉」


 蘆屋の肩に、ぽんと手が置かれた。


「お父さんには関係ないでしょ」


「無いことは無いさ。彼も大事な門弟の一人だからね、戻らなくなるまで心を折りたくはない」


 直人は方心の前に立ち、手を差し伸べた。


「君もこれで分かっただろう。陰陽師は血や家系が全てでは無い……それに、だ」


 立ち上がった方心の耳元に、直人は口を寄せた。


「……うちの娘を好いているなら、暑苦しいアプローチは逆効果だ。威張っている人間も嫌われる。それに、自分より弱い男と付き合うことも無いだろう」


「ッ!!」


 小声で語る直人に、方心は目を見開き頷いた。


「分かり、ました……」


「ほら、最後に彼に謝っておきなさい」


 方心は頷き、こちらを向いた。


「……今、回は……大変、ご迷惑をおかけ、した」


「あぁ」


 迷惑と言っても、ありがたい迷惑だったな。ありがた迷惑……ではないか。


「本当に、申し訳ありませんでした」


「あぁ」


 頭を下げた方心を満足気に眺める直人。こいつも大概、腹が黒いな。

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