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稽古

 端正な顔立ちで俺を見下し、冷嘲する男。


「そうですか。では、先ずは言葉遣いを学び直してから出直した方がよろしいかと思いますよ?」


 ニヤニヤと笑いながら言う男。すると、俺の隣から舌打ちが聞こえて来た。


「あのさ、誰だか知らないけど邪魔だから消えてくれない?」


 蘆屋だ。つまらなそうに訓練を見ていた蘆屋は、更に不機嫌そうになった表情で男を睨み付けている。


「ッ、干炉様……私は行蔵家の方心です。まさかお忘れになられてはいませんよね?


「知らないって言ってるじゃん。あと、消えてって言ったよね? 耳付いてないの?」


「ですが、師としてこの態度を許すのは……」


「何? 敬語使えないのがダメって話なら、僕も使ってないけど?」


 ぐっ、と息を詰まらせ、方心を名乗った美青年は表情を歪ませた。


「何故、そのようなどこの馬の骨かも分からぬ輩を弟子に……!」


「君に関係ある? 僕の自由でしょ?」


「ッ! ですがッ!」


 方心は憎々しげに俺を睨み付ける。


「すまないね、方心。今は干炉の弟子の為、模擬戦を見せているんだ……後で、私が話を聞くから待っていてくれないか?」


「…………ならば」


 方心は直人に視線を移し、上がっていた目尻を下げた。


「私が直々にこの弟子に稽古をつけて上げましょう。ただ見ているだけよりも、よっぽど身になるかと思いますが?」


「ッ、それは出来ない」


「何故ですか? 修業の為を思うならば受けるべき提案かと思いますがね」


「今の君がまともに稽古をつけるとは思えな……」


 俺は直人の言葉を遮り、方心と目線を合わせた。


「折角だからな、見せてくれ」


 こんだけ自信満々に出て来るってことは、ここに居る奴らの中では相当強いってことだろう。良い機会だ。


「はははっ、ほら本人もこう言っていますから。大丈夫です。傷が残るようなやり方はしませんから……ね」


 方心は上手く行ったと笑っていたが、俺を見ると表情を僅かに歪めた。


「……先に一つ断っておきますが、私はここで訓練に励んでいる者達の誰よりも強いですよ。だから、舐めているならその態度を早めに改めておいた方が良い」


 訓練場の中心に歩いて行き、門弟たちを退かしていく方心。


「でないと、貴方はここで泣き喚くことになる」


「……そうか」


 大丈夫だよな? こいつ、この感じだが実力はあるんだよな?


「まぁ、霊力は……申し分無さそうか」


「ッ!」


 最近は、相手を見ればそいつが扱える霊力量の最大を計算できるようになってきた。こいつの霊力量は、確かに蘆屋にも及ぶ程度だった。


「知ったような口を利くなよ……青二才が」


 とても修業を付けてくれるような雰囲気では無いが、俺としても実戦形式の方が好みではある。


「模擬戦形式ってことで良いんだな?」


「……」


 敵意剥き出しの視線をぶつけてくる方心。何なら、殺意すらある。


「結界の準備は出来ましたね……始めますよ」


「あぁ、いつでも良い」


 俺が頷くと、方心は結界の外に視線を向けた。


「合図は私がやろうか」


 方心の意図に気付いた直人が結界の近くに寄って来る。


「両者、準備は?」


 俺と方心が頷いたのを見て、直人は片手を上にあげた。


「用意、始め!」


 直人の腕が振り下ろされ、模擬戦が始まった。

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