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真偽調査

 真偽調査とか言うのが始まった。この感じ、今までも何度か同じようなことをしてきたのかも知れない。


「じゃあ、早速……悪魔を召喚したのは君?」


「違う」


 俺は白雪と呼ばれた女の目を見て答えた。


「うん、真実だね!」


 白雪はにこりと笑い、章野と呼ばれた男の方を見た。


「……これだけ怪しくて無罪なんですか」


 少し驚いたような表情を章野は浮かべたが、白雪の言葉を否定することは無かった。


「他に聞くようなことあるかな? 章野君」


「……千葉での事件当日、老日さんも講習に参加していたとの話ですが、悪魔が現れた際の行動について聞きたいです」


 やっぱり、聞かれたか。


「だってよ、老日君?」


「あぁ。悪魔が現れた時だが、俺は特に何もしなかったな」


 悪魔が現れた時は、本当に何もしていなかった。その瞬間、という意味ではな。


「じゃあ、悪魔が殺された瞬間は見た?」


「……あぁ」


 これに関しては、誤魔化せそうにないか。


「誰がどうやって殺してた?」


「……黒い服の男が、剣で殺していた」


 ふむふむ、と白雪は頷く。嘘は言っていない。


「どんな顔だったか覚えてる?」


「いや、顔は見えなかったな」


 俺だからな。


「このくらいで良いかな? 章野君」


「そうですね。少なくとも犯人では無いようなので、あまり長々と拘束するのも良くないでしょう」


 良し、乗り切ったか。少し危なかったな。


「今回の応答に嘘はありませんでした。白雪 天慧。真偽調査を終了します」


「……そういえば、俺が嘘を吐いていないのはアンタは分かるかも知れないが、アンタが嘘を吐いてないのは上の奴らは分かるのか?」


「その為の宣言だよ? さっきの開始しますとか終了しますとか言ったら、その間は嘘吐けないんだよ。そういう契約を結んでるの」


 なるほどな。契約で縛っているのか。だが、契約は飽くまでも過信できるものではない。彼らにその認識があるかは分からないが。


「……取り合えず、俺は行っても良いのか?」


「すみません、一つ良いですか?」


 章野が小さく手を上げた。


「これは個人的な質問なのでさっきの真偽調査では聞かなかったんですが、どうやって僕の尾行を見破ったんですか?」


「視線だ。尾行には慣れているみたいだが、アンタの視線が……つまり、意識がこっちを向いているのは感覚的に気付ける」


 要するに、俺に強く意識を向けている時点で気付く。その他の技術がどれだけ高くても意味は無いな。


「それは……どうやったら回避出来るんですか」


「悟りでも開けば良いんじゃないか」


 自分の感情と意識を完全にコントロールするのは、仙人の領域だ。かなり難易度が高く、俺も自力での仙術は少ししか使えない。つまり、俺自身が仙人と言うには程遠い。


「まぁ、五年やそこらで開けるもんじゃないが」


 俺は正直、百年やっても完全な悟りを開くのは無理な感じがした。向き不向きもあるんだろうが。


「……ちょっと、どうしようもないので忘れておきます」


「あぁ」


 賢明な判断だな。


「そういえば」


 俺が言うと、俺の目を見てボーっとしていた白雪がハッと姿勢を正した。


「ん、な、何ですか?」


「アンタら、どっちも若いが今の警察ってそんなもんなのか?」


 高校生って言われてもおかしくない見た目だ。


「私はぴちぴちのJKだけど、流石に現役の高校生で警察の人は私以外に居ないと思うよ?」


「そうですね、彼女は特別巡査なので。自分もスカウトされた形ではありますが、試験自体は受けました。彼女は試験すら受けていません」


 何だそれ、結構終わってるな。


「一応、今は二人とも地域課ということになっていますが、基本的に同じ上司の下で命令を受けて動くことが多いです」


「なるほどな」


 俺は頷き、そして白雪を見る。瞬きもせずにずっと俺の目を見ている。妙だ。


「……何だ」


「ぇ、い、いや、何でも、何でも何でもないですけど???」


 挙動不審ってレベルじゃないが。


「まさか、眼の力で俺に何かしているんじゃないよな?」


「な、何もしてないよぉ」


 してるな、コイツ。どう考えてもしてるな。


「何をした? 答えろ」


「い、いや、えぇと……も、もうちょっとだけ……」


 そう言って、白雪はまた俺の目をじーっと見つめだした。


「おい」


「ぎゃッ!?」


 かっぴらいた眼球に指を二本勢いよく近付けると、白雪は悲鳴を上げて後ろに倒れた。


「答えろ」


 起き上がろうとした白雪の肩を抑えながら屈みこむ。


「アンタ、真偽調査ってのを始めたら嘘を吐けなくなるんだろ? 始めろ」


「ぅ、ど、どうしよ……」


 こいつ、答えない気か? だったら、しょうがない。


「ッ、老日さんッ! 一旦待って下さい!」


 強硬手段に出ようとした俺の雰囲気を察したのか、章野が俺の両肩を掴み、必死に止めに来た。


「話させますからッ、ちょっとだけ待って下さい!」


「……あぁ」


 俺が一歩下がると、章野は白雪を起こした。


「白雪特別巡査。あの人は、やばいです。ちゃんと話してください。戦闘になったら、かなり不味いです。貴方でも勝てるか分からないんです」


「……そんなの、分かってる。分かってるから、話せないんだってば! だって、あの人ッ、邪神をッ!」



「――――おい」



 白雪の襟を掴み、異界の木に押し付ける。


「今、なんて言った?」


「い、いや、えっと……」


 あぁ、そうか。やばいな。成るほど、分かったぞ。


「……記憶か」


 間違いないな。こいつ、俺の記憶を読んでいる。

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