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弟子屋

 巨人の通り道だったかのように無残に破壊された竹林。蘆屋は硬直し、ギギギと頭を動かしてこちらを見た。


「えっと……どゆこと?」


「俺が聞きたい」


 まぁだが、俺は飽くまでこの霊術をそのままの状態……魔術で言うところの、教本魔術の状態で使っている。俺用に調整をしたりはしていないということだ。


「自分で言うのもアレだが、俺は色々特殊だからな。バグってる可能性はある」


「確かに、間違えてそうには見えなかったけど……」


 魂が影響を及ぼす力である以上、何らかの異常が起きる可能性は大いに有り得る。となると、俺用に術を弄る必要がある訳だが……その為には、陰陽道というか、霊術についてしっかりと知っておく必要があるな。


「多分だが、自分用に術を改造しないと俺は霊術を使えない」


「ん……どうしよ、それって結構ハイレベルな内容だけど」


 とは言え、やるしか無いよな。


「霊術について、詳しく教えてくれ」


 さっきの霊術は、言わば完成した計算式のような物だ。だが、自分で術を作るには数学で言う記号や公式を知っておく必要がある。


「分かった。じゃあ、予定変更で……うち、行こっか」


「あぁ、そうしよう」


 俺の苦手な、座学の時間だ。




 ♢




 魔術も利用し、俺は陰陽道並びに霊術に関する知識を吸収していった。今なら、簡単な術程度は扱えるだろう。


「じゃあ、ちょっとテストするよ」


 蘆屋は表に数学の問題やらが書かれているプリントの裏に墨を垂らすと、それを操作して一瞬の内に文章を書き上げた。


「はい、これ解いて」


「あぁ」


 蘆屋はプリントをくるっと回転させ、こちらに向けて置いた。


「……割と、難しくないか?」


「だって、勇は暗記問題とか意味ないんでしょ?」


 確かに、無理やり魔術で記憶出来る以上、暗記は簡単に解ける訳だが……いきなり、この応用問題は難しい。


「やってはみるが」


 こいつ勘違いしてないか? 俺は頭が良くないんだ。考えるのは得意じゃない。


「……仕方ないな」


 十秒程度一問目と向き合っていた俺は、魔術を発動した。途端に頭の回りが良くなり、並列して無数の思考が浮かぶ。


「うわ、ズルした」


「自分の能力を使ってるだけだ」


 一問目は、一寸の霊力球を五個同時に生成し、同じ地点に向けて時速150kmで放つ術を作ることだ。自分用に調整する必要は無いので、そこに関してはマシではあるが。


「こう、だな」


 霊術も魔術と同じく、術を式にして現すことが出来る。その式を自身の内で回路を作り、再現するというのは初めの内はかなり難しいだろうな。俺も最初は相当苦戦した。


「お、正解!」


「良し」


 さて、二問目は……もっとムズいな。




 ♢




 蘆屋の家で霊術について学んだ俺は、蘆屋から貰った本やメモを使い魔達と共有し、更に霊術について学んでいた。


「霊術……中々どうして、興味深いですね」


「カァ、ぶっちゃけ魔術が使えるならあんまり要らねえ気がするけどな」


「私も使うこと無さそうね……」


 とは言え、興味を持ったのはステラだけだったが。ステラはかなり好奇心旺盛なので、新しい力にも貪欲になるのは予想できた。


「霊術自体は私とは余り相性が良くないですが……式符主体で戦う陰陽道は私でも利用できる部分がありそうです」


「あぁ、魔術よりも用意が大切な力だからな。ステラには合ってるかも知れん」


 魔術と陰陽道の最大の違いは、魔法陣を使うか式符を使うかの違いだろう。魔法陣は柔軟性が高く用意が不要な代わりに、発動前に無効化される隙が大きく、至近距離であれば容易に魔法陣を破壊されてしまう。

 逆に、陰陽道は発動の隙が少なく、速攻で発動できるのが強みだが、逆に式符などの用意が必要になるので対応力は低く、突発的な戦闘にも弱い。


「だが、確実に切り札にはなり得る筈だ」


 天明の切り札のような式神。アレは、確実に俺の魔女術で作り出せる騎士を超える力を持っていた。陰陽道もある程度極めれば……更に俺は強くなれるだろう。

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