表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
392/488

コラボ

 球体型のドローンがその青い目で映し出すのは、何処かも分からない紫色の空間に立つミミと、その横に立つ黒髪の女だ。女の顔は白色の仮面で覆われている。


「ふふ、皆さんこんにちは」


「おはぴょん、ミミです!」


 配信が始まると、視聴者たちは直ぐにその様子のおかしさに気付いた。


 ”え、誰?”

 ”コラボ? なんか場所キモくね?”

 ”また仮面かよww”

 ”なんかすげぇ怪しいんだけど雰囲気”

 ”ミミちゃん、ちょっといつもと違う!!”


 コメントが流れるのを見て、女はフッと笑みを零す。


「大丈夫よ、みんな安心して……これはただのコラボ配信だから、ね?」


「はい! ただのコラボ配信ですよ~!」


 いつもと同じような笑顔に見えるミミだが、それは女の洗脳によって作られた偽物の笑顔だ。


「皆、私が誰か気になってると思うけど……私はミミちゃんと個人的な親交を持つハンターで、噂の仮面の男の知り合いよ」


 ”だから同じ仮面なのかw”

 ”マジ? 仮面の男も来る?”

 ”この前の襲撃と関係ある説無いか……?”

 ”操られてるとかどうとか仮面が言ってたからな……ミミちゃんも心配だわ”

 ”ミミちゃん元気ない?”


「ふふ、皆疑ってるみたいだけど心配しないで。だって、私がミミちゃんに危害を加えるなら……こんな配信しても意味ないって思わない?」


「ですです! 私は全然大丈夫ですよ!」


 ”それはそう”

 ”良いから仮面についての情報キボンヌ”

 ”怪しげな喋り方やめてね”

 ”一応通報した”

 ”仮面取って”


「さて、じゃあちょっと……皆が気になってる仮面の男を呼んでみようかしら」


 女は仮面の下で笑みを浮かべ、スマホを取り出した。


「じゃあ、かけるわね?」


 スマホが数回揺れた後、電話が取られ……女は配信の音をミュートにした。






 ♦




 蘆屋との話が進み、気が付けば時間は昼に差し掛かろうとしていた。


「じゃあ、取り敢えず受ける方向で進めるか」


「うん、よろしくね」


 後は天明に話を付けるだけだが、まぁアイツなら寧ろ喜んで受けてくれるだろう。


「どうする? もうお昼だし……なんか作ってあげよっか?」


「いや、大丈夫だ」


「別に、遠慮しなくて良いけど?」


「どうせ、飯は使い魔が作ってくれるからな」


 それに俺も飯を作るのは結構得意だ。自信があるのは炒飯くらいだが。


「そう……? まぁ、僕は別にどっちでも良いけどさ」


「あんまり、他人の世話になるのは好きじゃないんだ」


 俺は借りを作るのが得意じゃない。まぁ、そんなのは誰でも同じことだろうが。


 Prrr……電話の音がポケットから鳴り響いた。


「勇、着信音とか設定しないんだね」


「俺がすると思うか?」


 俺は電話を取り、耳にスマホを当てた。


「どうした?」


 電話の主はミミだった。大したことのない話だったら即切りしようと思っている。



「――――ふふ、こんにちは」



 あぁ、クソ電話だった。


「誰だ?」


「貴方に仲間を傷付けられた人間……かしらね?」


 俺に仲間を傷付けられた人間、か。心当たりが多過ぎて何とも言えないな。


「せめてどこの組織の人間とか教えて貰えないか?」


「それは出来ないけど……もう少しヒントを上げると、貴方が記憶を操作した子達が居るでしょう?」


 俺が記憶を操作した奴、か。心当たりが多過ぎて何とも言えないな。


「すまん、もう少しヒントをくれ」


「……貴方ねぇ」


 溜息を吐く女。喋り方の割に、声は若めだ。俺よりは上だとは思うが。それに、音質が悪いのか若干くぐもって聞こえるな。


「まぁ、取り敢えず会って話をしましょう」


「もう行って良いのか?」


 電話越しに場所はもう探知出来たが。


「……恐ろしいわね。先に伝えておくけど、私はミミと貴方の情報を人質に取ってるわ」


「俺の情報?」


 ミミが人質に取られてそうなのは察していたが、俺の情報となると面倒だな。


「今、ミミちゃんのチャンネルで配信をしてるんだけれど……私に手を出せば、配信を見ている私の仲間が貴方の情報を直ぐに拡散するわ。話題の仮面の男の正体となれば、興味を持つ人は沢山居るでしょうね?」


 話題なのか。嫌だな。


「分かった。取り敢えず、行って良いんだな?」


「ふふ、平和的に解決出来ることを祈ってるわ」


 俺は電話を切り、溜息を一つ吐き出した。


「という訳で、俺はもう帰るぞ」


「なんか、大変そうじゃない?」


 俺は頷き、立ち上がった。


「あぁ……面倒な用事が、一つ入った所だ」


「手伝ってあげよっか?」


 俺は首を振り、片手を上げた。


「まぁ、多分大丈夫だ。行ってくる」


「えぇ~?」


 俺は手を下ろし、目を閉じてその場から消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ