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掛けられた術

 胸を抑え、膝を突く男。それを為したのは俺の術だ。


「ぐッ……!?」


「これと同じだ。自分だけは大丈夫だって慢心から……精神魔術なんか食らったんだろ」


 擦れ違い様に男に触れていた俺は、先ずは行動を制限する為に術を掛けた。警察に突き出す為では無く、調べる為だ。


「アンタには色々と聞きたいことがある」


 膝を突き、胸を抑えたまま睨み付ける男に、俺はゆっくりと近付いてその頭に触れた。


「後で俺も行くから、眠って待ってろ」


 男はバタリと倒れ、その場から姿を消した。


 ”か、勝った……”

 ”終わってみれば余裕だった感あるな”

 ”師匠強すぎです”

 ”え、死んだ?w”

 ”師匠も配信して”

 ”俺も弟子にしてくれ師匠!!!!!”


「殺してないぞ」


 俺はそれだけ弁明しておき、ミミに視線を向けた。


「という訳で、俺は急用が出来たから帰るが」


「あ、はいっ! 何て言うか……頑張って下さいっ!」


 頷き、俺も転移で去ろうとした矢先……俺の背後から熱く燃える闘気が溢れた。


「ォォォォ……ッ!!」


 振り向くと、さっきの数倍の闘気を放つ鬼武者が居た。


「……帰って良いか?」


「ォォ」


 首を振る鬼武者。俺は仕方なく、虚空から剣を引き抜いた。


「一回だけだ」


「ォォ……!」


 さっさと終わらせて、アイツを調べに行こう。




 ♢




 ミミと戦った時の何倍も強くなっていた鬼武者を倒した俺は、魔術士の男を飛ばした先に転移で向かった。


 薄暗い倉庫のような場所を歩く。アメリカに勝手に用意した砲台の近くに造られた施設だ。違法に建築した以前に、そもそも存在自体が許されるか怪しい施設だからな。近い内には異空間内に移転させる予定だ。


「起こす前に……」


 俺は地面に倒れている男の前に屈み込み、額に手を当てた。記憶を覗き、確かめるが……記憶まで弄られてるな。

 コイツの中の記憶では、ミミの配信を見ていたら俺が出てきて怒りのまま飛び出して来たってところだが……明らかに改ざんされた痕跡がある。


「……ミミの配信を見てたのは元からなんだな」


 精神操作は根本から改変するよりも元からある感情や思考を増幅、誘導する方が容易で確実だ。こいつが利用されたのはミミのリスナーである程度の実力があったからだろう。


(しかし、記憶の方を見ても意味は無さそうだな。掛けられた精神魔術を解析してその主を特定する方が良い)


 俺は手を額から胸に動かし、刻まれた術を解析しようとする。しかし、既に術は解除され、痕跡も残さず消滅していた。


「この消え方……元から削除出来るように術を編みこんでいたな」


 つまり、バレる前提。負ける前提である可能性が高い。それに、少なくともこっちの基準で考えれば中々の魔術士だ。


「……おい、起きろ」


「ッ!? な、何だ……」


 軽く頬を叩いて男を起こすと、目を見開きながらも立ち上がり、近くに落ちていた剣を拾って咄嗟に構えた。


「落ち着け。もう洗脳は解除されてる筈だぞ」


「洗脳……? 俺が、洗脳されて……確かに、記憶が……俺は……」


 混濁している記憶を整理しているのか、暫く俯いてぶつぶつと何かを呟いていた男は、急に顔を上げた。


「悪かった。お前のこと、殺そうとした」


「別に良い。アンタも被害者みたいなもんだからな」


 俺が言うと、男は首を振った。


「いや、結社の魔術士である以上、操られるのは俺に責任がある」


「まぁ、今後は気を付けてくれ」


 そんなことよりも、こいつには聞きたいことがある。


「因みにだが、アンタは心当たりはないか? 術を掛けた奴について」


「分からん。俺と関わりがあって精神系の魔術に心得がある結社の魔術士なら数人には絞れるが……話したことがある程度の奴なら、何倍にも増える」


 いや、もっと絞れる方法がある。


「アンタがミミのファンだってことを知ってる奴はどのくらい居る?」


「……今の条件なら、一人だ」


 精神系の魔術を使える結社の魔術士。その中でもこいつがミミのファンだと知ってるのはたった一人。殆ど確定だな。


「精神系の魔術士に限らなければ何人かは知ってると思うが……そいつらが態々言い触らしてるようなことが無ければ、確定だな」


「……出来れば俺から探りたいが」


 俺が言うと、男は直ぐに頷いた。


「一番の被害者はお前だ。好きにしてくれて良い」


「なら、そいつの連絡先と名前……アンタが教えられるだけの情報をくれ」


「分かった」


 話は早いな。さっさと確かめさせて貰おう。

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