表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
372/487

アステラス

 現れたアステラス。その姿は皆の知るモノとは違っており……少し、歳を取っていた。


「お主……アステラス、か?」


「フハハハハッ、大人なレディーとなって再登場! 吾輩こそは夜の化身にして美の女神ッ、アステラスよッ!!」


 元の子供のような容貌から、数歳だけ歳を取ったような見た目のアステラス。溢れ出す神力は、玉藻すらも凌駕している。


「何と言う、凄まじい力じゃ……まるで、本当の神のような……信じられん」


「とは言え、この力はラストスパートと言う奴だ。長くは持たんのでな……一瞬でケリを付けさせて貰うぞッ、アブホースッ!!」


 アブホースは呆然とその少女を見ていたが、表情が段々と憎々しげに歪む。


「貴様……ニュクスかッ、貴様ッ!!!」


「随分怒っているようようだがな……憎んでいるのは吾輩の方だぞッ、アブホースッ!!」


 アステラスの手に漆黒の刃が握られる。虹色の光が星のように浮かぶその刃は、美しい軌跡を残しながらアステラスの手によって導かれ、アブホースの肩を切り裂いた。


「喰らえッ!!」


「ぐッ!? 馬鹿か貴様ッ!!」


 肩から大量の神力が流れ込み、マグマが血管を流れているような感覚に襲われたアブホースは悲鳴を上げてアステラスを睨む。


「一撃でそれだけの神力を浪費するとは、後先を考えない奴めッ!!」


「違うな! 後先を考えているからこそだ! どうせ吾輩の力は長くない……故に、一撃一撃に全力を籠めるッ!」


 アブホースの足元が真っ黒に染まり、渦を巻いてアブホースを吸い込もうとするが、アブホースは神力で蹴りつけてそこから飛び退いた。


「『陽光(ソリス)』」


 次の瞬間、網膜が焼け落ちる程の光が洞窟内を埋め尽くした。それを齎したのは、アブホースの頭上から落ちた巨大な熱光線だ。

 洞窟の天井には巨大な穴が開き、本当の陽の光がそこから差し込む。


「貴、様……ッ!」


「『金霊刀落(きんれいなたおとし)』」


 アステラスを睨み付けるアブホースの背後から振り下ろされた弥胡の薙刀が、その頭を真っ二つに割った。怒りと驚愕に目を見開きながらも、背中から棘のような触手を生やして弥胡を串刺しにしようとするアブホースだが、瓢の擦り抜けによってその目論見は崩れる。


「師匠には色々聞きたいことはあるけど……今は、こっちっ!」


 黒き海がアブホースを包みこみ、神力によってそれが吹き飛ばされたところに、光の剣が振るわれる。黄金色の斬撃は空中で無数に分かれ、アブホースの体をズタズタに斬り裂いた。


「ぐッ、邪魔だ……ッ!」


 アブホースの体が弾け飛び、無数の破片となってその場から消える。洞窟の端で再構成されたアブホースは、アステラスを見上げてそこに手を伸ばす。


「死ねッ、ニュクスッ!!」


「させぬ」


 空中で無数に枝分かれする灰色の触手は巨木の枝のように広がっていき、アステラスを追い詰めようとするが、降り注ぐ無数の槍によって砕かれる。


「貴様……ノーデンスッ!!」


「知っているだろう? アブホース」


 ノーデンスは得意げに笑い、アステラスの隣に並んだ。


「大いなるもの達の庇護こそ、我が役目だ」


「おぉ! ノーデンス、久しいなッ!」


 それに気付いたアステラスは笑みを浮かべ、ノーデンスの肩を叩いた。


「もうじき、貴様のことも忘れてしまうからな。今の内に懐かしんでおこう!」


「……そうか」


 ノーデンスは察したように頷き、槍の穂先をアブホースに向けた。


「クソ……クソめッ、こうなれば、もう……」


 アブホースは悔しそうに地面を蹴りつけ、そこに陣を描いた。


「逃げるしかないではないか」


 転移陣が完成し、魔力の光を高まらせる。神力によって保護されたその魔術は破壊することも出来ない。


「ニュクス……貴様が力を失った後に、殺しに行ってやる」


「ッ、逃がさん!」


 虹の奔流がアブホースを呑み込むが、灰色の障壁に防がれてアブホースまで攻撃が届かない。


「ではな」


 魔術が発動し、アブホースが何処かへと消え……無かった。


「ッ、何故だ!? 発動はした筈だ……ッ!」


 周囲を見回すアブホース。それと同時に、この洞窟を覆う白い炎の縄が実体化する。



「――――勝ちが確定した狩りでやるべきことは、一つじゃろう」



 アブホースの前に、姿を消していた九尾の狐が現れた。


「逃がさぬように、囲い込むことじゃ」


「ッ、貴様ッ! 女狐がァアアアアアアアアッ!!」


 振るわれる刃は、瓢の擦り抜けによって透過され、反撃の炎を避けた先にはノーデンスの槍が突き刺さる。


「クソ……クソ……クソ共がッ!!」


「フハハハハッ、神らしく無いなアブホースッ! 余裕が無いぞアブホースッ!」


 虹色の星が大量に生み出され、溢れ出んばかりの神力を籠められて撃ち放たれる。誘導能力を持つそれは、どれだけ裂けてもしつこく追いかけてくる。


「『白火天剣羅』」


「ッ!」


 更にその逃げ場を無くすように大量白い炎の剣が放たれ、アブホースは足を止めて神力の障壁を展開する。


「クソ……この我が、ジリ貧だと?」


 敵の攻撃によって削られ、障壁の維持の為に神力を消費し続けるアブホース。焦燥のあまり、障壁を()()()()()入って来た少年に気付かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ