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呼び声

 やられたな。やけに攻勢が甘いと思ったが、やっぱりこのパターンだったか。まぁ、別に良い。


『衣は剥がれ落ちた。さぁ、死を与えよ!』


 俺は四方八方から迫る無数の触手を回避しつつ、飛び上がって戦場を俯瞰した。


「……残りは五体か」


 ダゴンとハイドラ、イソグサは死んだ。クトゥルフは後回しとして、ガタノソアは石化能力と硬いくらいで、ゾス=オムモグは攻撃特化で柔そうだ。デカいイカの化け物は見た目に似合わず魔術士タイプっぽいな。それで、あの騎士は……潜伏してるな。


「取り敢えず、アイツからだ」


 一人残らず神性を帯びた化け物だが、中でもガタノソアとゾスは神性が高い。魔術も使えて厄介なイカからサクッと殺そう。


「援護する」


 風が吹き、視界を覆っていた触手の群れが一斉に切り刻まれ、吹き飛ばされて道が出来る。俺はそこを一瞬で突き抜けて、一太刀でイカを消し飛ばす。


「シネ」


 背後から振り下ろされた青い曲刀。俺はそれを後ろを向いたまま回避し、片手の平だけを向ける。


「『滅光砲(ブライトレーザー)』」


「ッ!?」


 凄まじい光量のレーザーが騎士を呑み込む。神力もある程度混ぜているので、耐えることは困難だろう。


「ォオオオオオオオオオ……」


「そう来たか」


 無数の触腕に覆われた不定形の巨体、ガタノソアが騎士と入れ替わるように現れた。レーザーによって肉体の半分以上が消し飛んだようだが、一秒と経たずに元の大きさを取り戻した。


「斬れば死ぬだろ」


 こちらに伸ばされた触手を避けながらガタノソアの懐に潜り込み、俺は刃を振り下ろした。


「ォオオオオオオオオオッッ!!!」


 咆哮のような悲鳴を上げながら、ガタノソアの体が真っ二つに引き裂かれる。その肉体は見る見るうちに崩れ落ちていくが、俺は念の為に何度か剣を振るい、完全に消し飛ばした。


「ッ!」


 直後、俺を覆う極小規模な結界が展開され、頭上から緑色に濁った大量の水が降り注いだ。視界の端をハスターが駆け抜け、ゾス=オムモグの肉体に触手を突き刺している。どうやら、こっちは勝手に生き残ると判断されたらしい。


「『神玉壁(フラグマ・トゥフェオ)』」


 仕方なしに、俺は透明な神力の障壁を展開し、触れるだけで精神と肉体と魂の全てを腐食するであろう水を防いだ。そのまま神力を込めた剣で結界を貫き、崩壊させて外に出る。


「『膨れよ』」


 ゾス=オムモグを貫いたハスターの触手から風が、大気が、溢れ出す。それは一瞬にしてゾス=オムモグの肉体を限界まで膨張させ、醜い巨体は風船のように弾け飛んだ。


『『枯死の衝撃(アトロフィー)』』


 クトゥルフは杖をハスターに向け、魔術を発動する。すると、ハスターの肉体が枯れるように萎びていくが、途中で止まり、ハスターは直ぐに元の姿を取り戻した。


『『肉の溶解(リクェファクション)』』


 続けてクトゥルフはこちらに杖を向け、魔術をかけてくる。俺の肉体に干渉し、溶かそうとしているようだが、戦闘術式によって無効化された。


「後は騎士と本体だけだが……」


「騎士は俺が殺す」


 ハスターが風と共に消える。残された俺はクトゥルフを見た。クトゥルフもこちらを睨み、杖を向ける。


『『深淵の息(ブラインズキス)』』


 直後、俺の体内から塩水が溢れ出す。体内への干渉は難しい筈だが……そうか。ここがルルイエだからか。飽くまで自身の支配するルルイエという空間そのものから邪悪な塩水を溢れさせたんだろう。さっきの魔術と違って、俺の肉体に直接干渉されている訳じゃないからな。


「『滅却の火(ゼァシュトゥーロ)』」


 俺の体内から紅蓮の炎が溢れ、呪われた塩水の全てを蒸発させた。俺は口から炎を零しながら、クトゥルフに接近する。


「なるほどな」


『何を分かったつもりだ?』


 紅蓮の炎を剣に纏わせてクトゥルフの水の障壁を斬り付けてみたが、手応えは無かった。だが、戦闘術式による解析で少しずつ分かって来た。


「星辰との繋がりを直接断ち切るのは難しそうだな」


『当たり前だ。人風情が』


 俺達を囲むように、無限にも思える量の水の針が出現し、こちらを向く。それらを回避する隙間は無いように見える。


「『滅却の火(ゼァシュトゥーロ)』」


『無駄だ』


 俺は全身から紅蓮の炎を溢れさせ、迫る水の針を全て蒸発させていく。しかし、今度は周囲一帯の地面から巨大な触手が生えて俺に襲い掛かる。


『『昏き底、深き淵。淀みと濁り、穢れの海』』


 俺は触手を回避しながら、クトゥルフの持つ結界の解析を続ける。


『『深淵の呼び声(コール・オブ・アビス)』』


 頭上を見上げると、空からここら一帯を埋め尽くしてしまうほどの量の水が……海が落ちてきているのが見えた。


『その炎ごと潰れてしまえ!』


「『無閃(フラス・フィン)』」


 俺は迫り来る触手の全てを薙ぎ払う斬撃で消し飛ばし、落ちて来る海を一応斬り裂いて直撃は回避した。


『深淵より甦れ、我が眷属よ!』


 海底に到達した海は、凄まじい勢いで水量を増やし、元の海の姿を取り戻そうとする。そして、その中から無数の半魚人達が発生し、俺を睨み付けた。


「限定的な蘇生術か」


『それだけではない』


 クトゥルフが杖を掲げると、膨れ上がっていく海の中からクトゥルフすらも超える大きさの巨大な鮫が現れた。

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― 新着の感想 ―
鮫の元ネタを探してたら鮫映画のクトゥルフ系TRPGのセッションが出てきて草
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