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神話生物

 数は八つだ。最も巨大なクトゥルフ本体と、小さな山程度の大きさを持つ二足歩行の半魚人であるダゴンとハイドラ、無数の触腕に全身を覆われた不定形の巨大生物ガタノソア、奴らの中では一際小さな人型の蛙イソグサ、円錐型の巨体にヒトデのような平らな四つの触腕が足となり、トカゲのような頭の付け根から大量の触手が茂るゾス=オムモグ、残りの二体は目の無い巨大なイカと深い青色の全身鎧に曲刀を持った騎士で、俺は名前も知らない。


「この星での神殺しは二度目、か?」


 俺は虚空から一振りの剣を引き抜いた。血脈のような赤い線が走る純白の剣、その銘は魔剣ヴァルターラ。英雄の恨みだけが満ちる、神器だったものだ。


「……そんなもの、どこで手に入れてきた」


「遠くだ」


 俺は続けて、二つの魔術を唱える。


「『神殺し(ディナイアルフェイフ)』『大敵の滅殺(アーチエネミー)』」


 目の前の敵は紛れも無い神性。そして、滅ぼされるべき世界の敵。俺はそういう奴には、滅法強いんだ。


「仕掛けてこないな」


 俺が一言言った瞬間、ここら一帯を覆う巨大な結界が展開された。効果は単純な逃亡禁止で、物理的に破壊することは不可能だ。つまり、ここで俺達を仕留められるという絶対的な自信があるんだろう。


『何を思って二人残ったか知らぬが……貴様らは、最早逃れることは出来ぬ』


 あぁ、こいつは瓢達が逃げたと思ったのか。確かに、状況的にはそう思われても仕方なくはあるが。


『ここで終わりだ。死ぬが良い』


 瞬間、あらゆる方向から尖った水が殺到する。神力と魔力によって創られたそれは、背理の城塞(ゼノン・アルチス)を凄まじい勢いで削り取り、一瞬にして背理障壁(ラストウォール)まで到達した。


「やるか」


「ッ!?」


 俺は神力を解放し、迫り来る水を全て弾き飛ばした。驚愕に目を見開くハスターの横を通り抜け、クトゥルフの眼前まで移動する。


「なんだッ、貴様ッ!?」


 クトゥルフが素の声で叫ぶ。俺は答えることなく神殺しの剣を振り下ろし……クトゥルフを覆う球状の水のバリアに防がれた。


「何だ……?」


「ッ、消えよ!」


 神力の光がクトゥルフの杖から放たれ、俺を呑み込もうとする。だが、俺は先にクトゥルフの背後に転移し、それを回避した。


「その図体の割に魔術士タイプってことは分かったが……ッ!」


 背後から振り下ろされたダゴンの巨腕を回避し、俺は考える。あの水の障壁、その正体は何だ? 特殊な魔術が組み込まれている訳でも無い。単純に神力だけで防がれた訳でも無い。反射や無効等の効果が備わってもいない。


「「ォオオオオオオオオオッッ!!!」」


「邪魔だ」


 俺を挟み込んだダゴンとハイドラ。同時に襲い掛かって来るところを、俺は刃の一振りで二体とも斬り殺した。


『貴様、よくも我が駒を……ッ! 許さぬッ!』


 水の無い海底のそこかしこから巨大な触手が生え、こちらに迫って来る。しかし、一陣の風が吹くとそれらは八つ裂きに斬り裂かれた。


「凄まじい活躍だな、老日勇」


「ハスター、あの障壁は何だ?」


 俺は時間を節約するべく、短く問いかけた。


「アレは、奴の星辰そのものと結び付く障壁だ。奴が自身の星に貯め込んだ魔力が繋がっている」


「……そういうことか」


 外見からはそこまでの魔力を感じなかったが、接続された先の魔力で防がれたのか。攻撃の威力に応じて魔力が星から引き出されるって仕組みか?


「ピギョォ」


「あ?」


 背後から現れた人型の蛙が、俺の背中に張り付こうとして障壁に弾かれる。その直後、ハスターの風によって木っ端みじんに切り刻まれた。


「老日勇。取り敢えず、他から片付けるぞ」


「確かに、その方が楽そうだな」


 俺が頷いた直後、突如として背理の城塞(ゼノン・アルチス)が溶け落ちた。

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