砲台
現状蘇っている邪神に関してだが、ラーン=テゴス、イゴーロナク、アイホート、クァチル・ウタウス、アルワッサ、ツァトゥグァ、イオド……そして、それらの配下となる生物達。分かっているだけでもこれだけ居る訳だが、彼らに関しては殆どが生物的に実体を持つ邪神であるらしく、極めて厄介とまでは言えないだろう。
「久方振りでござるな」
「あぁ、忍者か」
隠された施設に訪れたのは忍者だ。
「瓢はおらんでござるか?」
「今は居ないな。どうしたんだ?」
俺が言うと、忍者は難しそうに唸った。
「色々と話を擦り合わせようと思ったんでござるが……居ないのであれば仕方ないでござるな」
「一応、暫くしたら帰って来るとは思うけどな。小っちゃい組織を覗いて来る程度って言ってたからな」
「ふむ、ならばその間にここを色々と見させて貰うでござるよ」
「あぁ、案内してやる」
俺は施設の中を歩き、壁際にポツンと作られた部屋を指差した。
「実はな、この施設自体が一つの砲台のような役割を持ってる」
「砲台でござるか」
俺は頷き、大広間の壁際に作られた簡易的な部屋の扉を開けた。
「ここがその操作室だ。当日はステラに任せようと思ってる。一応、カラスとメイアをサポートに付かせるつもりだ」
「ふむ……雑な壁の作りからは想像も出来ぬほどに緻密な魔導回路でござるな」
まぁ、ここ数日は殆ど砲台の為の作業をしてたからな。
「それで、その砲台は何を目的として作ったんでござるか?」
「クトゥルフの眠るルルイエには巨大な結界が展開されている。この砲台の目的はその結界を破壊し、その後もルルイエに対する攻撃を続けることだ」
正直、結界に関しては俺だけでどうにかなる可能性もあるが、どっちにしろ無駄になることは無いだろう。
「まぁ、操作室はこんなところだ。地下に来てくれ」
俺は操作室を出て、そのすぐ近くの床を軽く足で突いた。すると、床が二つに割れて横にズレていく。現れたのは地下への階段だ。
「秘密基地っぽいでござるな」
「紛うことなき秘密基地ではあるぞ」
俺は忍者を連れて地下に降り、それを見せた。
「……思った十倍くらい広いでござるな」
「砲台としてのメイン設備はこっちだからな」
地上の施設の五倍ほどの大きさがあるその空間には、桜色に輝く巨大な球体と、地面に突き刺さり上を向いた巨大な筒のようなものがあった。
「こっちのピンク色の奴が魔力炉だ。つまるところ、エネルギー源だな」
「魔力炉、でござるか……」
興味深そうに観察する忍者。その襟首を掴み、筒の方を見るように促す。
「それで、こっちが砲台……というか、砲身だ」
「いかにも、と言った感じでござるが……地下に設置して良いんでござるか?」
施設がパカッと開いてそこから砲身が飛び出す形でも想像しているかも知れないが、違う。
「座標を直接指定してそこに砲撃を飛ばす砲台だからな。地下から発射しても全く問題ない。寧ろ、地下にある方が発射の際に外部にバレないからな」
「なるほどでござるが……そんなこと出来るんでござるな」
「知識だけは割とあるからな。それに、今回はアステラスと瑠奈も居た。細かい部分はアイツらに任せられたってのもある」
「アステラス殿は魔術結社の魔術師でござるからな。納得でござるよ」
実際、どのくらいの威力をクトゥルフ相手に出せるかは分からないが……役に立たないことは無いだろうな。