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ここはアメリカ

 赤いレンガの建物が背を揃えて並んでいる。ボストンの中でも、観光客に人気の高いビーコンヒルという街だ。


「カァ、アメリカってこういう街もあるんだな」


「ジョージアン様式ですね。イギリスで生まれた建築様式で、左右均等でクラシックな雰囲気があります」


「こういうところに来ると、ちゃんとした海外旅行に行きたくなってくるな」


「良いですね、主様。どうせなら、このまま観光致しますか?」


 並んで歩くのは俺と使い魔達、そしてその後ろを歩く瑠奈とアステラス、最後に先頭を一人で歩いている瓢だ。


「あはは……言っとくけど皆、観光じゃないからね?」


「らしいですよ、師匠?」


「安心せよ。吾輩は一度訪れたことがあるからな……旨いステーキハウスを知っているぞ」


 胸を張って言ったアステラスを瓢は呆れたように睨み付けた。


「どこに安心出来る要素があったのかな……もう一回言うけど、観光じゃないからね!」


「カァ、とは言え腹は減ったぜ。飯が食いてぇ」


 人の姿をしたカラスが言う。


「ステーキハウスか。俺も食いたくなってきたな」


「……良いけどさ」


 瓢は溜息を吐き、アステラスに先頭を譲った。




 ♢




 地下にワインバーの併設された、高級感のあるステーキハウス『Moo』。俺達はアステラスに連れられて地下の席に座った。


「……さて、ここならある程度秘密話も出来るであろう?」


 注文を済ませ、店員が離れて言ったのを見てアステラスが言った。


「そうだね……とは言っても、今話すことはあんまり無いかな?」


「ホテル周辺の調査も殆ど終わったしな」


 俺達はダウンタウンに仮拠点となるホテルを取り、そこを中心に色々と調査を行っていた。主に安全確保の為の調査だ。


「まだ向こうは気付いていない可能性が高そうですね」


「そうね、少なくとも生き物を使った監視はどこにも無かったわ」


「吾輩も見つけられなかったな」


「うん、私もそれっぽいのは無かったよ」


 ニャルラトホテプがこちらに気付いている要素は見つけられていない。だが、これで気付かれていないと断定するのは危険だ。


「とは言え、警戒はした方が良い。全く俺達の感知できない手段で俺達の行動を捉えられている可能性もあるからな」


「そうだよね……邪神とか、何してくるか分からないし」


 全くだな。


「それで、瓢さん。プロヴィデンスにはいつ接近するんですか? 星の智慧派の活動拠点はそこら辺って話だったと思いますが」


「ん、まだ近付かないよ。勇から聞いてない? 小っちゃい組織から順番に情報を集めていくつもりだからさ」


 プロヴィデンスから離れた位置にあるダウンタウンに仮拠点を置いたのも、それが理由だ。


「取り敢えず、ボストンにある組織から調べていくよ」


「名前も分かってないんだったよな?」


 俺の問いに、瓢は頷く。


「規模がかなり小さそうだからね……ただ、グリーンウェイの辺りで活動した痕跡が見つかってたから探し当てるのはそう難しくないと思うよ」


「そもそも、何をしている組織なんですか? 今のところ、何らかの組織であるという極めて断片的な情報しかありませんが」


「多分、シカゴのマフィアの分派っていうか……元々そこに雇われていた犯罪者の集団って感じかな? 元々は小規模な犯罪を繰り返してたんだけど、突然それをパッタリとやめて怪しげな呪具を集めたり、人を攫ったりし始めたって感じみたいだね」


「なるほど、死ぬ程怪しいですね」


 あぁ、死ぬ程怪しいな。


「ある程度の安全も確保出来てきたし……そろそろ、その辺りの情報も探っていきたいって感じだね」


「カァ、それはバラバラで調べる感じか? それとも皆で一緒になって調べるのか?」


「バラバラでも良いと思うよ。正直、ニャルラトホテプからしたら相当木っ端の組織だろうし、慎重にやり過ぎて時間をかけるのも好ましくない」


「だったら、そこら辺の鴉に勧誘を始めても良いんだな?」


 カラスの問いに瓢が頷いた瞬間、ウェイトレスが食事の乗ったトレイを持って現れた。


「お、飯が来たな」


「あぁ、一旦落ち着いて飯でも食おう」


 今だけ、アメリカ観光の気分を味わうとしよう。

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