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班分け

 それから詳しい情報の共有を済ませた俺達は、二つの班に分かれることになった。全員で行動するのは、動きが鈍くなるリスクがある。悠長にしていれば、邪神が蘇っていく危険性があるからな。


「前衛、後衛、情報。この観点でチームを二つに分けようと思うけど……先ず、一番大事な情報に関しては玉藻、天明、アステラスになるかな。遠隔で情報を取れる手段を持ってるって意味だとね」


 そうだな。忍者や瓢も情報収集は得意だが、飽くまで潜入等によるモノだ。低いリスクで情報を得られるのはそこら辺になるだろう。


「それで、前衛が出来るのは……忍者、勇、玉藻、弥胡、僕かな」


「吾と弥胡もか」


 玉藻が不満そうに言うと、瓢は微笑んだ。


「だって、君は命が沢山あるじゃないか。神力でフィジカルも高いし、正直耐久力で言えば忍者君や僕より圧倒的に上だと思うよ」


「……そうかも知らぬが、吾は飽くまで術士じゃからな」


 実際、本気を出した玉藻のフィジカルは七里や黒岬を超えるレベルだろう。近接戦闘の技術があるかは、微妙だが。


「私も術士と言えば術士ですけど」


「でも、君は薙刀が得物でしょ? 得意な戦闘距離で言えば、前衛になる筈だ」


 弥胡は納得したように頷いた。


「それで、後衛は……玉藻、天明、アステラス、瑠奈ちゃんかな」


「吾だけ全部の面子に入っておるんじゃが?」


 また不満そうに言った玉藻を無視し、瓢は考え込む。


「だから、二つに分けるなら……玉藻、弥胡、天明、忍者。勇、僕、アステラス、瑠奈ちゃんって感じで良いかな。潜入調査が可能な人材でも分けられるし、既に関係値があるところも纏められてる」


 瓢は俺達の反応を伺うように周囲を見回した。


「問題ないと思うが」


「うん、良かった。じゃあ、班は決定ってことで」


 瓢は未だに宙に浮かんでいた地球を捕まえ、手元に持ってきた。


「次は、皆で協力して情報の確度を上げよう。ここに全員が揃ってるからこそ、出来ることもあるだろうからね」


 さて、そうなると俺がやることも特に無さそうだな。




 ♢




 そして、俺達は幾つかの教団や組織がニャルラトホテプと関与している裏付けを取り、それらを標的に定めた。


「組織は世界中にあるけど、取り敢えず実地調査として小さい組織から順に探っていこう。目標としては、相手に気付かれるより先に一番大きな組織を潰すことだね」


「小さい組織は、一旦情報を抜くだけ抜いて潰さないってことだな?」


 瓢はこくりと頷いた。


「小さい組織から潰すのは簡単だけど、その間に大きな組織に行動されるのは嫌だからね。逃げられたり、総力を挙げて襲われたりするのも避けたい」


「つまり、組織の暗殺でござるな」


 相手に勘付かれるより早く、最も重要な頭を刎ねる必要がある訳だ。


「そんな訳で、特に潰したい主要組織は……星の智慧派だ」


 瓢はアステラスの作った地球を摘まみ、アメリカの辺りを指差した。


「ここは明確にニャルラトホテプを信仰している上に、規模も大きい。他組織との関係もありそうだし、明らかにメインで活動してるよね」


 星の智慧派はアメリカで主に活動している宗教団体らしく、百年以上前から存在していることが分かっている。


「だけど、もう一つ気になるのがエジプトにある。ここはあんまり情報が得られなかったんだけど、化身が何体も集中してた以上、何かあるのは間違いない筈だ」


「とはいえ、詳しいことは現地に行かねば分からんでござるな」


 忍者の言葉に、瓢は深く頷いた。


「そうだね。これ以上、何を話しても話が進みはしない。だから、明日……行動を開始しよう。一応言っておくけど、飛行機のチケットを取る必要は無いからね」


 瓢はニヤリと笑い、浮遊する地球に手を触れてどこかに消し去った。アステラスは眉間に皺を寄せたが、何も言うことは無かった。


「僕に言ってくれれば何時でも行き来は出来るけど、連れていきたい仲間は明日までに決めておいてくれると有難いね」


 瓢はそう言うと、懐から無数の小さい紙を取り出した。


「皆、無くさないように持っといてね。玉藻が作ってくれた、通信用の式符だよ。これを握って通信したい相手を念じれば、言葉を伝えられる。魔術での盗聴は難しい筈だから、ニャルラトホテプに盗み聞きされる可能性も低い筈だよ」


「折り畳んでも問題は無いのじゃが、燃えたり千切れたりすれば流石に使えん。無くさないのは当然じゃが、壊さないように気を付けよ」


 紙は浮き上がり、その内の五枚ほどが俺の手元まで運ばれてきた。


「これは予備か?」


 俺は紙を潰さないように握り、玉藻に問いかけた。


「予備であり、仲間用じゃ。お主が他の仲間を連れて来るならばそれを渡せ。あの機械娘やらも連れて行くんじゃろう?」


「そのつもりだ」


 俺は紙を握り締めながら、どこか似ている状況に魔王を倒す為の旅を始めた日のことを思い出した。

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