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本体か、黒幕か。

 瓢の言葉に、忍者は納得したように頷いた。


「ニャルラトホテプが同時に何体も存在しているならば合点がいくでござるよ。エジプトやアメリカでもニャルラトホテプに関する濃い噂が立っているでござるからな」


「寧ろ、本拠地としてはそっち側だと思うよ」


「……そこに本体が居るってことか?」


 瓢は曖昧な表情で首を振る。


「さぁ、そこまでは分からないね。そもそも、本体ってのがどんな存在かも分からないし、本当に居るのかすら分からない。ただ、確かなのはこの地球上には数え切れないほどのアイツの化身が存在してるってことさ」


「……本体が居ない方が逆に厄介だな」


 魂同士に繋がりがあるなら、纏めて削除してやれるかも知れないが、そう簡単に行きそうな雰囲気じゃなかった。


「うん。でも、間違いなく黒幕的な奴は居ると思うよ。無貌の化身の数がどのくらいかは分からないけど、その内の何割かは確実に同じ目的で動いてる」


「なるほどな」


 となれば、この世の全部のニャルラトホテプを探し出して殺す必要はない訳だな。


「それと、気を付けて欲しいんだけど……化身の間でも個体差はある。きっと、それぞれで信仰や畏怖を集めてるからだと思うんだけど、さっきの個体とは比べ物にならないくらい強い奴が出て来る可能性だってある」


「ふむ……老日殿が倒した個体は、拙者でも倒せそうでござったか?」


 神力自体は持っていたが……まぁ、行けるだろう。


「勝てる」


「ならば、そこまで絶望する必要は無さそうでござるな」


 明るく言う忍者だったが、瓢の顔に笑顔は浮かんでいない。


「どうしたでござるか?」


「ここまで踏み込んじゃったから、もう話すけど……」


 瓢は俺達の目を見て、口を開いた。


「無貌の目的は、恐らく邪神の復活だ」


「……邪神か」


「何という邪神でござるか?」


 忍者の問いに、瓢はふっと笑う。


「何という邪神も何もないさ。全部だよ、全部。無貌は殆ど全ての邪神を蘇らせようとしてるのさ。封印を解こうとしていると言うべきかな」


「……全部でござるか」


「……相当やばいな」


 敵を作ってあげるってのはそういう意味か。確かに、邪神が何体も復活すれば退屈とは一切無縁になるだろうが……それが、混沌か。


「しかも、どうやらその計画は既に進んでるらしくてね……もう、何体かの邪神は復活してそうなんだよね」


「マジか?」


 大分話が変わって来たな……そりゃ、俺達を巻き込もうとする訳だ。


「……天暁会は感知してないでござるが」


「復活したところで、直ぐに行動を起こさなければ災厄としては感知されないでしょ? 邪神が何体も復活してから、時間を置いて行動するようにすれば、封印が解かれるのも予知はされないだろうね」


 確かに、予知や預言の類いも無敵の代物じゃないだろうからな。抜け道もあるって訳だ。


「僕ももっと早く気付ければよかったんだけどね……情報の操作に関しては相当向こうの得意分野みたいだからね。かなり気付くのが遅くなったよ」


「いや、本来ならば拙者たちが気付いておかねばならぬことでござる……不甲斐ない限りでござるよ」


「……」


 俺は気付いてなくてもしょうがないよな?


「取り敢えず、今からどうするんだ?」


 俺の問いに、二人は顔を見合わせる。


「拙者はこいつを国に連れ帰るでござるよ。それと、邪神について色々報告する必要もあるでござる」


 そう言うと、忍者の足元に簀巻きにされた天能連のボスが現れた。顔は青ざめ、白目を剥いている。


「僕は一旦、日本全体を探ろうかな。また玉藻にも協力してもらって、日本に他の個体が残ってないか調べるよ」


 俺は大事なことを思い出し、ずぶずぶと地面に沈んでいく瓢の頭を掴んだ。


「そういえば、戯典はどうなった? 殺せたか?」


「あぁ、勿論だよ。君の偽物を出してきたけど、見た目だけだったね」


 白雪は本気じゃなかったとはいえ若干苦戦してた記憶があるんだが、やっぱりこいつも相当強いんだな。


「アンタ、やっぱり玉藻とも戦えただろ?」


「さぁね? でも、僕と玉藻じゃ塩試合必至だよ」


 つまり、試合にはなるってことだな。


「まぁ、取り敢えず無貌については君の方でも調べといてくれると嬉しいな。じゃないと、どうせ大変になるのは君だろうし」


 そう言って、瓢は地面に沈んで消えた。


「……確かにな」


 ソロモンのように、本気で向き合わなかった結果一番面倒なことになったりもする訳だ。多少存在が露見する危険性があったとしても、本気で調査するべきかもしれない。


「面倒だな」


 俺は溜息を吐き、ピンク色の液溜まりを見下ろした。

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