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外なる邪神

 ナイアルラトホテップ、どこか聞き覚えのある響きだ。


「認識はしているということでござるな?」


「あぁ、そいつが来たと同時に俺はここを離れたからな。それに、俺の仲間もそいつについては良く知らない。瓢……俺の知り合いがどうにかしたらしいからな」


「それは知っているでござるよ。ここで起きたことも観測はされていたでござるからな」


 しかし、思ったよりも情報を握ってるんだな。


「どうやってそこまで見てるんだ?」


「一番大きいのは預言の巫女を抱える組織の存在でござるな」


 あぁ、ソロモンの時に西園寺が言っていたな。


「天暁会、とかだったか?」


「ほう、良く知っているでござるな。それでござるよ。預言の巫女は基本的に大きな預言しか賜らぬが、他の巫女や予知系の異能や魔術を持つ者もそこに所属しているでござるからな。バラつきはあるでござるが……本来は、花房華凛が暴れて割と大変なことになる可能性が高かったんでござるよ」


 まぁ、そうなってた説はあるな。


「それ故に天能連関連は注意深く観測することになったんでござるが、予言されていない事態が次々に起きて、終いには老日殿が解決してしまったでござるからな」


「……待てよ、俺の存在はどれくらい国にバレてるんだ?」


「そこそこ、でござろうか」


 そこそこってどんくらいだよ。


「俺が花房を倒したことはバレてるのか?」


「いや、バレておらんでござるな。拙者、老日殿のことは話せぬ契約故。観測が途中から遮断された以上、老日殿が花房華凛を倒したと知っている国側の人間は拙者しかおらんでござる」


 あの時の契約、まだ生きてるのか。良かった良かった。


「とは言え、ある程度存在は露呈しているでござるよ」


 忍者はそう言いながら、部屋に入って来たステラを指差した。


「ちな、これのせいでござる」


「失礼ですね。これとは何ですか」


 ステラの言葉に、忍者は首を振る。


「いや、ステラ殿単体のことを言っている訳ではなく、状況の話でござるよ。この、ステラ殿やメイア殿と平気で同居している状況、なんかもう色々と隠す気ないでござろう」


「まぁ、最初よりはな」


 ソロモンも殺して、九尾も倒して、大嶽丸も殺して、ニオスも殺して、それでまだ何もバレないと思っている程、俺も楽観的じゃない。


「少なくとも、協会には割とバレてそうな雰囲気もあったしな」


「協会は協会で情報網があるでござるからな……」


「協会も国の組織じゃないのか?」


「国の組織と言えば国の組織でござるが……一枚岩ではないということでござるよ。それはそれで、悪いことばかりでも無いでござるが」


 なるほど、俺には良く分からない話だな。


「それで、マスター。この忍者は何をしに来たんですか?」


「一応、こいつのことは前にも話したと思うが……日本に忠誠を誓ってる系の忍者だ。天能連について話を聞きに来たらしい」


 ステラは納得したように頷いた。


「……貴殿らはどういう関係なんでござるか?」


「同居人だ」


「私たちのような人外にも人権が与えられるまでの間、匿って貰っていたんですよ」


 外向けの説明をしてみたが、忍者は微妙そうな顔をしている。


「まぁ、話す気が無いなら聞いても無意味でござるな」


「そういうことだ」


 忍者は肩を竦め、息を吐いた。


「話を戻すでござるが……取り敢えず、天能連の足取りを追いたいんでござるよ」


「さっき言った天暁会とやらじゃ探せないのか?」


 忍者は首を振る。


「無理でござる。向こうが何か大きな事でもやらかそうとしない限り、予言は難しいでござる。それでも普通なら位置の特定くらい出来るんでござるが……向こうは情報の遮断が相当得意なようでござるからな」


「確かに、今は大きな拠点も持たずに動いている可能性もあるしな……」


 俺が言うと、忍者は残念そうな顔をした。


「ということは、老日殿も天能連の位置は検討すら付いていないんでござるか?」


「そうだな。探そうとは思っていたが……少なくとも、現時点では情報も無い」


 一先ずは地道に探すしかないか。そう考えた瞬間、窓から少年が擦り抜けて入って来た。


「や」


 丁度良いな。


「瓢か。話を聞かせてもらうぞ」


「おー、そこの君は……何気に、ちゃんと顔を合わせるのは初めてかな?」


 瓢はじろりと忍者を眺め、うんうんと頷いている。


「良いね。君も来るってことで良いよね?」


「ぬらりひょんの瓢、でござるか……随分と、陰陽寮の者からは厄介がられているようでござるが?」


「そう警戒しないでよ。僕は悪い妖怪じゃないからさ」


 瓢はベッドに乗り上げると、胡坐をかいて座り込む。それを見たステラが直ぐに頭を掴み、地面に叩き落した。


「い、いったいなぁ……」


「この無礼妖怪は確かに得体の知れない厄介者ですが、恩を返しに来るぐらいの義理はあるかと」


 まぁ、あの女を止めてくれたのはかなり助かったな。


「ん? いやいや、あの時は別に恩返しのつもりで来た訳じゃないよ。僕は個人的に無貌を追いかけてるだけだからね」


「無貌とは?」


 ステラの問いに答えたのは、忍者だった。


「一言で言えば、邪神でござる。良く知られている名で言えばニャルラトホテプでござるな」


「クトゥルフ神話の、ですか?」


 ステラは訝しむような目で忍者を見た。

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