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道化

 白雪と花房の戦いの途中、中継されていた映像が突然途切れた。


「切られたな」


「この二人が干渉してきたようには見えませんでしたが……誰の干渉によるものでしょうか」


 魔術的な干渉に見えたが……どうだろうな。


「……ダメだな。もう見れない」


 結界の類いが張られてるな。恐らくやったのは第三者というか、天能連側の人間だと思うが……まぁ、取り敢えず行くしか無いな。


「仕方ない。俺が行って……あぁ、そう来たか」


「カァ、何だこれ? 多くねぇか?」


 困ったな。それをやられるとは、流石に思っていなかった。


「襲撃だ」


 凄まじい衝撃と共に、窓ガラスが割れる。ぐらりと揺れるような感覚は、マンションそのものが倒れかけていることを知らせている。


「マスターッ、マンションが倒れます! 一階部分で爆発ッ、十秒後にマンション全体が炎上します!」


「戦闘術式、展開」


 元の演算能力じゃ、全員を助けるには間に合わない。


「カァ、倒れるのはオレの影で食い止めてるぜ」


「私は直接止めて来るわ」


 マンションが傾いたまま止まり、メイアが何処かへと消える。俺に出来ることは、これだ。


「『人体保護(フィジカルプロテクト)』」


 取り敢えず、マンション内や周辺の一般人っぽい奴らには保護をかけておいた。判定基準は明確な俺への殺意を持っているかどうかだ。まだ死者は出ていないので、爆発や余波程度ならこれでどうにかなるだろう。


「マスター、全ての敵を把握出来ました」


「あぁ、助かる」


 共有された情報を基に、俺は敵全員を捉えた。


「……妙だな」


 さっき、天能連のアジトの中で死んだ筈の奴らが何人も混じってる。アンデッドって感じもしないが、まさか復活したのか?


「『心停止カーディアックアレスト』」


 敵全員の心臓を強制的に停止させようとするが、手応えは無い。


「……なるほどな」


 向こうも魔術による防護がかけられている。それも、地球基準で言えばかなり高度な物だ。


「しかし、妙ですね……仕掛けて来た割に、何もしてくる気配がありません」


「カァ、メイアは外で戦ってるらしいが、それでも五人程度しか来てねぇらしい」


 生存能力の高いメイアが敵を引き付けようとしてくれているようだが、それでも残りの奴らは何もしないのが謎だ。


「時間稼ぎ、か?」


 確かにこの状況を放置する訳にも行かないが、向こうも相当やばいことになっていそうだ。あの状態の白雪にどれだけの力があるかは分からないが、それは花房も同じことだ。どちらが勝つかは分からない。


「決めた。ここは任せる」


「カァ」


「分かりました」


 俺が言うと、二人も外に出て襲撃をかけて来た奴らに向かって行った。俺はそれを見届け、転移を発動しようとして……阻害された。


「……何か、居るな」


 予感がする。この事態を引き起こしている黒幕的な何かが、俺の転移を妨げている。


「そこか」


 俺は虚空から剣を引き抜き、空間を斬り裂いた。すると、空間の裏側が捲れて一人の男が現れた。


「くふっ、バレちゃった?」


「……アンタは、何だ?」


 過去最大級に、嫌な予感がする。道化師のような姿をした男。得体が知れないのは、見た目だけじゃない。中身も真っ黒で、何も見えない。


「僕は『道化』のクラウンさ。天能連に忠誠を誓う黒い仮面の一人だよ」


「違うな」


 こいつは、そんなんじゃない。もっと、別の何かだ。


「酷いなぁ、別に嘘ってワケでもないのにさ」


 適当に投げつけられる色付きのナイフを素手で弾く。


「茶番をする気は無い」


「おっと」


 男を斬り裂くと、その体が真っ二つに分かれた。そして、その中から黒い液体が零れて人型に蠢く。


「何だかんだ、これが一番お気に入りの私かな」


 黒い液体の色が変わり、そこに絶世の美女が現れる。しかし、それも決してこいつの本質では無いのだろう。


「こんにちは、老日勇。はっきり言わせて貰うが、君はとっても邪魔なのだよ」


「……邪神の類いか」


 俺が殺した邪神のような圧倒的な力は感じられないが、死ぬ程厄介そうな気配がする。どうやって斬るか、そもそもこいつの相手をしている暇はあるのか、俺は一瞬思考に耽り……



「――――やぁ、久し振り」



 ぬらりと地面から現れたのは、和装に身を包んだ黒い髪の少年だった。


「瓢か」


「うん。説明してる時間も無いから、取り敢えず送るけど……こいつの相手は僕がしておくよ」


 ずぶりと、俺の足が地面に沈んでいることが分かる。


「面倒だね……君達妖怪には私の力が通じ難くて、少し困る」


「あはは、だから来たんだよ。歯が立たない相手なら、神や仏にでも祈ってるさ」


 気持ち悪い感触と共に視界が入れ替わる。




 頭が地面から出ると、凄まじい魔力と冷気が漂う戦場が俺を出迎えた。


「はぁ、はぁ……」


「もう、お終いですね」


 そこには、荒く息を吐く白雪と神々しく髪を逆立たせる花房が居た。

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