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偽物・造り物

 砕け散った氷壁。白雪は少女の目を睨み、その異能が『破壊』であることを知る。


「ふぅ~、ちょっと苛ついちゃったじゃん!? まだ14だけど、僕は大人より余裕で強いしさッ、それに君も大して変わんないじゃん!?」


「私はぴちぴちJKだし、確かに考え方によってはすっごく子供だけど……でも、大人らしい行動なら出来てるよ!」


「良く言えましたね」


 隣で突っ込む章野を無視し、白雪は話を続ける。


「ほら、大人しいって言葉あるでしょ? つまり、騒がず静かに落ち着いてるのが大人ってことなんだよ!」


「ん……何言ってるのか分かんないから、壊すねっ!」


「うわっ、話通じなかった! どうしよう章野君!?」


「いつも通り、鎮圧しましょう」


 章野の言葉に、白雪は頷く。


「じゃあ、一旦凍ってもらおっかなっ!」


「あはは、無理だよ!」


 さっきのフィックスと同じように、少女の周囲だけが凍らない。だが、さっきと違うのは氷が砕けるような音が響いたことだ。


「『破壊』ッ!!」


 白雪に破壊の波動が迫る。しかし、それは氷の壁に防がれ……


「うわっ」


「『破壊』」


 その隙に目の前まで接近していた少女が、狂気的な笑みを浮かべながら手を伸ばす。ピシリと白雪の肌を氷が覆い、そこに少女の指が触れる。


「『卒倒』」


 バタリ、少女が地面に倒れた。その背後に立っていた章野が伸ばしていた手を下ろす。


「おー、ナイスだよ章野君!」


「十分気は引かれてましたからね」


 意識外から相手の首筋に触れること。それが章野の持つ異能の条件だ。それさえ達成すれば、即座に相手は気絶する。


「……あれ、ちょっと何か嫌な予感がする」


「貴方の嫌な予感は大体当たるので勘弁して欲しいんですが」


 嫌そうな顔をする章野を放置し、美しい蒼色の目で周囲を見回す白雪。それから直ぐに、そこかしこから中世の騎士のような見た目をした男達が現れた。


「何これ……皆、心が無い?」


「ッ、戯典だ! 天能連に回収されたって話だった筈です!」


 章野の推測通り、彼らは戯典の能力によって生み出された兵士の役者(アクター)。魂は無く、与えられた役をこなすだけの人形だ。


「全部偽物……だったら、容赦なしっ!」


 白雪が地面に手を付くと、兵士達の足元から氷が鋭く伸び、一斉に全員を貫いた。


「次、来ましたよ」


「今度は一人……でも、さっきの何倍もやばいかも」


 凍て付いた廊下の向こうから、一人の男が足音を立てて現れる。


「……え」


 結界でその身を覆い、無骨な剣を握るその男は、白雪にとっても見覚えのある人物だった。



「――――老日君?」



 老日は、冷たい目で白雪に剣を向けた。




 ♢




 遂に、最深部まで顔の無い少年は辿り着いた。あと少しで天能連のボスが潜む部屋へと辿り着く。しかし、その背後に一人の男が立った。


「『切断』」


「ッ!」


 咄嗟に飛び退き、斬撃を回避する少年。その背後から白い髪の男が現れ、少年に手を伸ばす。


「『転移』」


 少年はそれを察知してギリギリで男の手を躱し、冷静に二人の敵を捉えた。狙うは切断の男、レンドだ。


「『魔力の沸騰(マナクラッシュ)』」


「ッ!」


 発動した魔術に顔を顰めるレンド。しかし、皮膚が溶けることも爛れることも無い。保有する魔素量が多く、通じていないのだ。


「『輝晶散弾(ルメンクラース)』」


 その結果に焦ることも無く、少年は二人に向けて輝く結晶の欠片をばら撒き放つ。転移の男はどこかに消え、レンドは向かってくるそれらを空中で木っ端微塵にした。


「『乱れた空の最果て、キダンの穴より溢れ出す』」


「『切断』」


 詠唱する少年を狙うレンド。躱そうとする少年だが、回避先を読まれて脇腹辺りに線が入る。


「『止め処無い洪水(エンドレスフラッド)』」


 地面から、凄まじい勢いで水が溢れ出す。転移の男が溢れた水を消し飛ばすも、また直ぐに溢れて来る。


「……面倒」


「どうやら、無限に湧いて来るらしいな」


 既にくるぶしの辺りまで湧いて来た水。そこから伝わる温度が一気に冷え下がる。


「『水気の凍結(フリージング)』」


 ピシリと凍て付くような音が響き、周囲の液体全てが凍結する。足を覆う水が凍ったことで、二人は動けなくなる。


「ぐッ!?」


「ッ、トラン!?」


 体内の血液が僅かに凍ってしまった転移の男、トランはふらっと倒れそうになり、その肩をレンドが支える。


「『超化魔力砲(スーパーマナカノン)』」


 そこを目掛けて、廊下を埋め尽くすような巨大な魔力の光線が放たれる。それが全てを薙ぎ払い、破壊した後には……何も残っていなかった。


「適性体、ロスト」


 だが、少年は敵が死んでいないことを見抜き、周囲を見回した。どこにもその気配は無く、仕方なしと進もうとした瞬間……目の前に一人の少女が現れた。


「敵性体、出現」


 制服を着た黒髪の少女。その手の平が開き、少年に向けられる。


「『念力』」


 少年の体が浮き上がり、壁に叩き付けられた。

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