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ショッピング

 本題の話も終わったのでそこからは本当にただの雑談だった。飯を食い終え、会計を済ませると俺たちは一旦解散の運びとなった。次会う時までに俺の保険証を再発行しておいてくれるらしい。


「ソロモン、か」


 預言の巫女とやらの話の真偽は分からないが、悪魔の件で既に向こう側には認知されている可能性がある。他人事と考えておくのは危険だろう。

 しかし、犀川の協力者の立場に落ち着けて良かったな。この情報を貰えたのは、俺が犀川に利益を与える存在に見えているからだろう。


「ん?」


 解散して直ぐだが、LINKで犀川からメッセージが届いた。


『素材に関してですが、すみません。上手い言い訳が思いつきませんでした。それで、あの石は実在するんですか? 確認を求められた場合はどうします?』


「……あぁ」


 俺が西園寺に話した白虹石のことだ。明らかに興味を持っているな。


『実在する。戸籍と保険証が帰ってきた暁には渡しても良い。欲しいんだろ』


『おぉ、本当ですか! 欲しいです!』


 西園寺との契約は既に反故にしているようなものだからな、このくらいはくれてやるのが義理というものだろう。


『今度な』


『ありがとうございます!』


 俺はLINKを閉じ、画面を消してスマホを虚空に入れた。


「さて、取り合えず……寝るか」


 空がすっかり暗くなっていることに気付いた俺は魔術によって姿を消し、持ち前の身体能力を活かしてビルの屋上に上り、横になった。少し早いが、俺はいつでも寝れる。大して眠くなくてもな。




 ♢




 朝だ。ピッタリ八時間。ビルの屋上は風が凄かったが、異世界での野宿よりかは遥かにマシだったのでぐっすりと寝れた。悪くない気分だ。


「今日は……そうだな、買い物だ」


 俺の使っている袋は流石に現代感に欠けている。それに、ある程度は特殊狩猟者として不自然で無い装備を持っておく必要がある。


「何を買うかは……文明の利器に頼ればいい」


 俺はスマホを取り出し、狩猟者に必要な道具を調べることにした。


「ふむ……あぁ、水筒」


 後、いい加減に服も買っておくべきだな。異界用の装備もそうだが、私服も二、三着は持っておこう。肌着も向こうの奴はかなり質が悪いので買っておきたい。


「あぁ、それと新しくスマホ……身分証が無い間は無理か?」


 スマホの契約は本人確認書類が必要だよな。だったら、まだ無理か。


「取り合えず、先にリュックだな。それと、普通のバッグも買っておくか。東京で良い場所を探すか」


 ふむ、東京ならここで買え……? 狩猟者向け複合型施設か。良し、行くか。俺は魔術で姿を消し、ビルからビルへと飛び移り、車よりも速いスピードでそこを目指した。


「見えたな、渋谷HuntersHaunt」


 ハンターズハント、略してハンハンと呼ばれているその場所は日本でも有数の狩猟者向け施設らしく、大抵の装備はここで揃えることが出来るそうだ。実際、近付けば直ぐにそれだと分かるくらいには大きい。飲食店やジムなんかも内包しているらしいが、今回はそれらに用は無い。


「……人が多すぎるな」


 これだとどこで透明化を解いてもバレる。中に入ってからトイレとかで解除するか。


「ここが、ハンハンか。声に出すと中々ダサいな」


 二十階を超える高層ビル。そこには数多の商業施設とオフィスが納められている。取り合えず、俺はトイレに向かい、魔術を解いた。


「さて、先ずはリュックだが……三階か」


 俺はトイレから出て階段……エスカレーターを探す。俺はこういう施設でエレベーターに乗るのは嫌いだ。


「これが、現代か」


 一階から五階辺りまで繋がったエスカレーター。そこを中心に開放的な空間が広がっている。そして、人がやたら多い。狩猟者向け施設と言うからにはそこそこの大人ばかりかと思って居たが、割と高校生くらいの奴が多いな。なんなら男女の二人組も結構居る。


「……良いな」


 エスカレーターに運ばれながらしみじみ呟くと、前の男が怪訝そうな表情でチラリとこちらを見た。俺は静かに視線を逸らした。


「ここか」


 目的の店は三階に着いて直ぐに目に入った。狩猟者用リュックメーカーのアタランタはネットでの評判も良く、迷ったならここのリュックを選んでおけば良いらしい。俺は迷う段階にも居なかったが、ここのリュックを買うことにした。


「良く分からんが、一番高いのにしておくか」


 ザッと店の中を見て回ると、俺は直ぐに一番高いリュックを見つけた。黒くて大きな妙な艶のあるリュックだ。


「……高いな」


 一番高いのにしようと思ったが、高い。高すぎる。リュックサックの癖に二十万もするなんて有り得るのか? いや、これ魔道具か。なるほどな、それなら高くなるのも納得だ。


「にしても、二十万は中々だな」


 俺が呟くと、俺の横に男がスラリと並んだ。店員だ。


「ですが、その価値は十分にありますよ。このリュックはアースクローラーの変異種の皮に特殊な加工を施したもので作られた特別モデルなので少し値は張りますが、容量は大きく、伸縮性にも富み、耐久性は言わずもがなと言ったところです。また、このリュックはなんと傷が付いても自然に再生する機能も搭載した魔道具です。また、魔道具としての効果で言えば重量を軽減し、保存状態を保つことが出来ます。こちらダーククローラー、二十三万八千円。お買い得ですよ」


「……あぁ」


 熱く語る店員の男。しかし、今の地球の基準は分からないがこれだけの効果があって二十万と言うのは確かに高くないかも知れない。


「それで、どう致しますか? お買い上げなさりますか?」


「……あぁ」


 俺が頷くと、店員は満面の笑みを浮かべた。実際、悪くない買い物ではある。特に、再生するというところが気に入った。まぁ、五十五万も一日で稼げたんだ。金に糸目は付けずに行こう。

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