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夜道には

 明日の夜に作戦を決行する。と言っても、異界で狩った魔物の素材で創り出した奴らをプローデとかいう捕獲した天能連のメンバーを犯人に見せかけてけしかけるだけだ。俺が体を張るようなことは何もない。


「……人払い、か?」


 既に暗闇に落ちている空。コンビニからの帰り道で、俺は周囲に誰も居なくなっていることに気付いた。


(さっさと逃げても良い、が……)


 このタイミングだ。どうせ天能連だろう。戦力を減らしておけるならそっちの方が良い。


「来たな」


 空が光り、暗雲の中から一条の稲妻が俺に降り落ちる。


「数は……十三か」


 雷を軽く回避し、周囲を見回す。全員隠れてはいるが、俺には無意味だ。


「『崩落』」

「『魚雷』」


 地面に亀裂が入り、足場が崩れると同時に無数の細長いミサイルのような形状のものが俺に飛来した。


「異能……何でもアリだな」


 俺はそのミサイルを障壁で防ぎ、それを飛ばしてきた奴の方に指先を向けた。


「『腐り落つ心臓(コラプションハート)』」


 男は建物の向こう側で胸を押さえて倒れる。そこで俺は周囲一帯をドーム状に黒い煙が覆い尽くしていることに気付いた。


「結界的な役割か? いや……」


 違うな。俺は巨大な腕の形を取って伸びてきた黒煙を見て確信した。


「ウォオオオオオオッ!!」


 建物を一つ挟んだ場所から巨人が立ち上がる。人払いの魔術がかけてあるとは言え、ここまでのことをすればバレるのは必然ってレベルだが……そこまでして俺を殺したいのか。


「まぁ、アレからだな」


 俺は黒い煙の腕を飛び越えて躱し、そのままビルの上に乗って巨人と目を合わせた。


「シネェエエエエエッ!?」


「弱いな」


 見掛け倒しか。俺は巨人を縦に両断し、背後から現れた男の黒煙と化した腕を避ける。


「ッ、避けるか」


「こいつは面倒臭そうだな」


 剣を振るうが、刃が触れた部分は黒い煙となって擦り抜けてしまった。この男を殺すのは少し手間がかかりそうだ。


「ジャアアアアアアアッ!!」


「蛇か?」


 足下に漂ってきた黒い煙の中から飛び出して来たのは蛇のような肌をした人間。その手が蛇になって伸びて来るが、その蛇ごと斬り殺した。

 しかし、この煙は中に収納も出来るのか……汎用性が高そうだな。


「『切断』」


 瞬間、俺はその場から飛び退く。それでも間に合わず、俺の腕からは血が垂れていた。切断の異能、話に聞いていた黒い仮面の一人だろう。


「これでも仕留められないか。流石に評価通りの強さだな」


 呟く灰色の髪の男。その姿が煙の中に消え失せる。


「ッ、また……」


 崩れる地面。俺がそこから飛び退くと、亀裂の中から間欠泉のような勢いで猛火が噴き出した。


「どうだッ、燃え朽ちるかァ!?」


「中々聞かない表現だな」


 赤髪の男が獰猛な笑みを浮かべながら走り込んで来る。俺は剣を振るって迎撃しようとするが、煙が男を呑み込んで逃がす。


「『切断』」


「ッ!」


 こいつが一番ヤバいな。直接指定位置に斬撃を発生させる能力、素の状態でもミスリル以上に硬い俺の皮膚を薄くとは言え斬り裂けるこの異能なら、大抵の相手は瞬殺だろう。


「『闇霊の再現(リプロダーク)』」


 俺の影から無数の黒いナニカが生まれ、吸い込まれるように敵に向かって行く。


「くッ、物理じゃ殺せねぇ!? ぐ、うぉッ……」


「オレの炎ならちったァ遠ざけられるが、消せはしねェ! 魔術士ども、テメェらの役目だろ!」


「駄目だ! こんなの明らかに上級精霊レベルの代物……私達ではッ、自分を防護することが精一杯だッ!」


 なるほどな。分かって来た。


「スモーク、撤退だ。このままじゃ戦力を減らすだけだ」


「ッ、仕方ないか……全員回収するぞ」


 闇霊で倒せたのは十人程度か。このまま逃がしたくは無いが……


「ハァ!? ふざけんじゃねェッ、オレは逃げねェッ!!」


 煙の中から飛び出してきた赤髪の男から、凄まじい熱が溢れる。


「『火炎』ッ!!」


 黒い煙のドームの中を全て焼き尽くす勢いで溢れる炎。俺は魔術で生み出した障壁によってそれを防いだ。


「ギャハハハハハハハッ、どうだァ!? 焼き殺されとくかァ!?」


「『喇叭男の火消し(ニヒルビィ・ソウファ)』」


 喇叭の音がどこかから鳴り響くと、視界全てを埋め尽くしていた炎が一瞬で消え去った。


「なッ、オレの炎が――――」


 赤髪の男を斬ろうとするが、その体が炎に変わって擦り抜ける。そのまま炎は煙と混ざり合って消える。


「……逃がしたか」


 気付けば煙も晴れ、砕けた地面だけが残されていた。

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