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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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潜入開始

 天能連の本拠地は山奥にあるって聞いたけど、そこを出入りする人は見当たらない。


「もしかしたら、拠点の位置はここってだけで出入りは何かしら別の方法でやってるとか……?」


 転移系の異能でどうにかしてるのかも知れないし、もしかしたら魔術とかかも知れない。そうなったら割と大変だけど……


「良し、作戦変更」


『どうする気?』


 私は飛行の異能によって空を飛び、山の周りをぐるりと一周する。


「やっぱり、誰も居ないかな……でも」


 まだ、手札は沢山残されてる。


「『探知』」


 異能を発動すると、山の中に大量の人が居るのが分かった。数は三百人くらいだ。


「やっぱり、ここは本物だよね……『透視』」


 山の中が透き通って見えるようになる。複雑に見えるその構造を一目で理解するのは難しいが、私にはシンカーが居る。


「シンカー、共有したよ。ルートを教えて」


『正気? 中に入るつもりなの?』


「教えてくれなくても良いけど、それなら無理やり入るだけ」


『……罠っぽいのが幾つも仕掛けられてる。飛んでれば基本問題無いけど……入り口はあそこだね。今は誰も居ない』


 シンカーに従い、入り口の方まで向かう。そこは山の中腹、土に隠れているが、非常用の出入り口のようだ。別に入り口から入る必要も無いが、人が居ない場所なのは好都合だ。


「『透過』」


 私はシンカーを掴み、土で隠された入り口を擦り抜けて中に入り込んだ。透明化している上に音や匂いも消しているので見た目でバレる心配は無いだろう。


「正に秘密基地って感じで凄い……悪の組織のアジトに相応しいね」


『感心するのは良いけど、気を抜かないでね』


 青っぽい金属で作られた無骨な建造物。目の前の地面に刻まれた魔法陣みたいなのは一応避けつつ、先に進んでいく。


「ッ、危機察知が反応してる……警戒しないと」


 私の異能が警鐘を鳴らしている。ここから先、何か危ない要素があるってことだ。


『そもそも、どこまで行くつもりなの? 情報収集目的だったよね?』


「いや、折角順調に進めてるから……サクッとボスとかやっちゃえば良いでしょ」


『そんな、楽観的な……』


「大丈夫大丈夫、このまま一番奥の部屋とかまで辿り着ければ直ぐ終わるから」


 シンカーもここまで来た私を止めることは出来ず、どんどんと私達は施設の中を進んでいった。


『……不自然だ』


 シンカーが、突然呟いた。その言葉に、私も気付く。


「確かに、ここまで敵と鉢合わせないのはおかしいよね……まるで、避けられてるみたい」


『ほぼ間違いなく、気付かれてる。逃げた方が良い』


 逃げる、かぁ……。


「今逃げたら、次は絶対警戒されちゃうよ。それに、私達の所為で警戒が強まって警察の人たちが動きづらくなったら、大変だし」


『仕方ないよ。今ここで挑んで犬死するよりはよっぽどマシだから。一回、逃げよう。最悪、遠くから異能で施設ごと破壊したって良い』


「そんなことしたら、施設内に居る人質とか無理やり働かされてる人とか、関係無い人達が纏めて死んじゃうよ」


『それはそうだけど……バレてる以上、逃げない選択肢は無い』


 私は首を振り、廊下を抜けて次の部屋に入り込んだ。


『ッ、動きがおかしい……違う、部屋自体が変だ!』


「『帰還』」


 危機察知が激しく警鐘を鳴らす。咄嗟に逃亡用の異能を使おうとしたが、何故か発動しない。


「な、何で……」


「姿を現しなさい。そこに居るのは分かっています」


『囲まれたッ、転移して来たんだッ!』


 私を数十人の敵が囲んでいる。まるで、位置が分かっているかのように。


「『光翳し(オーペイク)』」


 一人の男が杖のようなものを振るうと、強い光が私の体を照らし、透明化が破られた。


「ッ、これが魔術……!」


 戦慄する私に、シンカーは冷静に語りかけた。


『転移系の異能はどれも使えない? 異能自体は使える?』


「転移系は、使えない。異能自体は……使える!」


 私は地面に手を当て、異能を発動した。


「『震動』」


「ッ、地震みたいな……!」


「早急に無力化しなさい。能力はそれだけではありません」


『あの指示を出してる奴ッ、多分現在進行形で情報を抜かれてる!』


 髪の長い男の指示に従って、揺れる地面で転げそうになりながらも構成員達が襲い掛かって来る。


「『発火』しろッ!」

「『視覚消失』だ」

「『腕力変動』、最大ッ!!」


 燃え上がった火は一瞬で消え、暗転した視界は一瞬で戻り、振り下ろされた拳は障壁に弾かれた。


『早く終わらせた方が良い、敵が追加される可能性だってある!』


 大丈夫、もう終わるから。


「『夢霧』」


 薄っすらと空間に満ちた桜色の霧を吸った者達は、バタバタと地面に倒れていく。


「洗脳とか支配の異能を食らってる可能性もあるからね……不殺で行くよ」


 意気込んだ瞬間、倒れていた者達が同時にどこかに消えた。

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