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アトラクションというか

 俺達が向かったのは夢の国でもユニバーサルなスタジオでも無かったが、それでもそこそこ大きい遊園地だった。


「初めて見る場所だな」


「そこそこ最近出来たとこだからね、でも結構人気あるよ」


 確かに、人もかなり多いな。流石にアトラクションに数時間並ぶようなことは無いだろうが、多少は待つことになるだろうな。


「来た事はあるのか?」


「うん、何回もあるよ。私、遊園地好きだから結構色んななところ行くんだけど……ここも凄い面白いんだよ」


 遊園地、好きなんだな。故郷には遊園地なんて無かったから知らなかった。


「んー、どうしよっかな……良し、先ずは私のおすすめアトラクションに案内します!」


「分かった」


 瑠奈は楽しそうに俺の手を取った。




 段々と暗くなる空、幾つものアトラクションを乗り越え、俺達は最後のアトラクションを目の前に並んでいた。


「はーい、こちらを付けてどうぞ~! 絶対に外さないで下さいね~! 頑張ってクリアを目指してくださいね~!」


「はーい、行ってきます!」


 腕輪のようなものを渡され、スタッフに誘導されて入るのは明らかに不穏な雰囲気のある暗い館。当然ここは異界でもダンジョンでも無く、お化け屋敷的なホラーアトラクションだ。

 しかし、クリアか……ゲームオーバー的な概念があるってことだな。


「私、ここは初めてなんだよね……ワクワクするね」


「怖いのは苦手か?」


「んー……びっくり系は苦手かも?」


 びっくり系か。確かに、魔術士は苦手かも知らん……そういう話じゃないか。


「おぉ、凄いね!」


 館に入り扉が閉まった瞬間、その景色がぐにゃりと歪む。


「空間魔術か……テーマパークで、凄いな」


「うわ、雰囲気あるね」


 何も見えない程に暗い一本道。古い館のような雰囲気はあるが、汚さは感じない。


「廃墟……というには綺麗すぎるか」


 流石に本物の廃墟とかでは無いだろうからな。


「取り敢えず、進むか?」


「うん、そうだね……わっ」


 暗い廊下が、一瞬で照らされる。壁に並んだ無数の燭台、その上の蝋燭に一斉に火が点いたんだ。


「凄い……ドキドキするね」


「ダンジョン感あるな」


 魔物でも出て来そうな勢いだが、流石に演出でもそれは許されないだろう。


 二人で並んで歩いて行くと、左右に道が分かれた。


「これ……どうする?」


「左が正解だな」


 右は行き止まりだ。恐らく、何かの仕掛けがあったりするのだろう。しかし、客側が選択を迫られるアトラクションというのは、中々無いかも知れない。正直、アトラクションというかお化け屋敷だが。


「……そういうのは良くないよ、勇」


「二度手間になるのも嫌だろう」


 俺がそう言うと、瑠奈は溜息を吐いた。


「ダンジョンに潜ってる訳じゃないんだから、効率よくする必要なんて無いんだよ?」


「……それは、そうか」


 寧ろ、最大限楽しむには間違えた道に進む方が正しいのかも知れない。


「じゃあ、右行ってみるか」


「でも、明らかにヤバい方だって分かってて行くのも違くない?」


「……左、行くか?」


「うん、こっからはネタバレ禁止!」


 俺は頷き、僅かに先導して左の道を歩む。これと言って生物の気配もしない……ってのも、言わない方が良いな。


「……何だ?」


「燭台、だね」


 道の先、地面に燭台が転がっているのを見つけた。拾い上げると、異常なまでに軽かった。これなら子供でも簡単に持てるだろう。


「うわっ」


「魔術か」


 ぶわり、燭台に直接青い火が灯る。蝋燭もついていないので、明らかに魔術的なものだろう。


「単純に青い炎のような光が灯るだけの魔道具……か? 温度も無い」


「重要アイテムっぽいのは間違いないね……なんか、本当にダンジョンの探索みたいになってきちゃった」


 俺が燭台を瑠奈の方に差し出してみると、瑠奈は燭台を受け取った。変わらず、青い炎が揺らめいている。


「……ねぇ、死体があるよ」


「あぁ、死体っぽいのがあるな」


 更に、燭台が落ちていた場所の近くには、死体のような物が転がっていた。当然ながら、本物ではない。しかも、単なる死体では無く、かなり腐敗しているように見える。見えるだけだ。


「これは……血文字か?」


 壁に寄りかかる死体の横の地面には、血で文字が書かれていた。


「えぇと、なになに……いきたければせいなる火をまもれ、火をまもるにはけんがいる」


「聖なる火なのか……これ」


 急いで書いたからか、平仮名が多いな。しかし、聖なる火と……それを守るけん、恐らく剣だな。


「まぁ、進むか」


「うん、剣はここには落ちてないみたいだね……」


 まぁ、剣が無かったからこいつは死んだってことだろうな。


「きゃっ!」


「何だ? あぁ、なるほどな」


 俺の目が壁際を飛ぶドローンのようなものを確かめ、幻を見る。


「これは、幽霊ってことか」


「どう見てもそうだよ……」


 壁から顔だけを半分出している白い幽霊。特に透き通っている訳では無いが、まぁ幽霊だろう。半分の顔しか見えていないが、少年のようだ。

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