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吸血鬼とは、根源とは。

 ストックから復活できるのであれば、アカシアもその根源とやらから復活している筈だ。そう思ったんだが、東方は否定するように首を振る。


「仕組みがストックと同じってだけで、ストックとして利用出来るって訳じゃない。始祖の吸血鬼の為に根源がある訳では無く、寧ろその逆だ」


 逆ってことは、つまり……


「根源の為に始祖の吸血鬼が居る。そう考えた方が自然なんだよ。始祖の血が根源に還ると、その際に知識や魔素、魂も根源へと還る。そして、それから百年が経つと……人格をリセットされた新たなる始祖が生み出される」


「待てよ、メイアはどうなるんだ? メイアもアカシアの娘、つまり始祖の血を引いた吸血鬼ってことになるが」


「始祖の血を引いた吸血鬼と、始祖の吸血鬼は別だ。始祖の吸血鬼は根源から生まれた吸血鬼のことを指す。だから、メイアが死んでも根源に還ることは無い」


 成る程な。それなら、アカシアは相当特別な吸血鬼だったんだな。


「根源は始祖の吸血鬼を作り出して力を蓄えさせ、新たなる始祖の吸血鬼を生み出す。それをひたすらに続けるだけの機関だ。始祖の吸血鬼は時間と共に強くなっていき、眷属を作って仲間を増やしていくことで種としても強くなっていく」


「……吸血鬼、中々に恐ろしいな」


 想像以上にヤバい生命体だったらしい。いつかはこの地球を席巻していてもおかしくないだろう。向こうに居た吸血鬼はこんなのじゃなかった筈だが。


「だが、助けられるのか? 根源に還れば人格やらはリセットされるんだろう?」


「いや、リセットされるのは再構築時だ。それまでなら、復活は可能な筈だ。アカシア本人が言っていたし、バラカに見せられた文献にも似たようなことが書いてあった」


 そうか。まぁ、始祖本人が言うなら流石に間違いではないだろう。


「だが、どうやるんだ?」


「分からん」


 東方の即答に、俺は溜息を吐いた。


「一つ先に聞いておきたいのですが、館はどこにあるんですか?」


「南極だ」


 予想もしていなかった場所だな。


「奴らの住む館。そこは特殊な異界の中だ。一切、太陽の影響を受けることが無い……言わば、年中極夜のような空間だ」


「なぁ、そこには魔物も居るのか?」


 カラスの問いに、東方は頷く。


「居る。それも、奴らに眷属化された魔物も多い。警戒した方が良いな」


「じゃあ、館の戦力はどのくらい居るんだ?」


「……あそこには中位以下の吸血鬼は殆ど居ない。居たとしても、ほぼ奴隷みたいな奴だけだ」


「つまり、殆どが高位以上の吸血鬼ってことだな?」


 東方は頷く。が、そのくらいなら問題にはならないだろう。


「高位の吸血鬼が七割、最高位が二割、その他が一割ってくらいだな。全部合わせれば、その数は百を超えるってくらいだ」


「百かぁ、多いのか少ねえのか分からねぇな」


「多いに決まってる。中位以下ならば兎も角、高位以上の吸血鬼が百体なんて……悪夢でしかねぇよ」


 まぁ、体がぐちゃぐちゃに潰されるようなメイアの共有を受けても再生できるレベルの吸血鬼だ。それが百体ともなれば、その戦力は圧倒的だろう。


「それに、高位の吸血鬼の中でも一部の奴はニオスによる強化を受けてる。お前からすれば高位の吸血鬼なんざ全員雑魚に思えるかも知れねえが、全部がそうだとは思わねぇ方が良い」


「強化の度合いはどの程度だ?」


「個体差はあるが、倍じゃ利かねぇだろうな」


「……まぁ、分かった」


 二倍や三倍程度なら、はっきり言って大した差は無い。


「そして、その高位の吸血鬼よりも強いのが最高位の吸血鬼。奴らはニ十体程度しか居ないが……はっきり言って化け物だ。しかも、全員がニオスによる強化を受けている。ダンピールの俺でも、確実に相手取れるのは五体程度だろうな」


「それなら、私達でも安心して狩れるのは一体までってところかしら?」


「……分からん。お前らの強さに関しては、正直良く分かってねぇ。さっきも殺さないように戦ってたみたいだからな」


 最高位の吸血鬼でも五体までは相手取れるのか。それ以上に強いアカシアとバラカはどんな奴なんだろうな。


「そして、最後だ。吸血鬼には真祖ってのが居る。こいつは、吸血による成長と進化を繰り返して始祖レベルまで到達した個体のことを言う。あの館には、少なくとも七体の真祖が居る筈だ。ニオスを除いてな」


「強いのか?」


「強いに決まってる。俺の何倍も強かった、あのバラカも真祖だからな……と言っても、アイツは人の血を吸って真祖になった訳じゃない。バラカは眷属からの進化だからな。アイツが吸ったのは人の血じゃなくて吸血鬼の血だ」


「眷属以外は吸血鬼の血によって進化出来ないってことか?」


 だとすれば、眷属じゃない吸血鬼の方が劣っているようにも感じる。


「そうだ。純血種は人の血でしか基本的には強くなれない。代わりに、生まれた時から親の血に応じた強さが担保されている。更に、眷属は人の血によって純血種程の成長を得られない」


「基本的には純血の方が強いって話か」


「そうなんだが、真祖になった時の強さは眷属由来の方が強い……らしいな。俺も実例はバラカしか見てねぇから分からねぇが」


 眷属は最初が弱く成長しづらい代わりに進化した際の能力は高いってことだな。吸血鬼が血を提供すれば簡単に真祖まで至れる気もするが……まぁ、眷属というシステム的に難しいか。


「……取り敢えず、大体分かった」


「どうする? 今から、やっぱナシってのもアリだぜ?」


 東方の提案に、俺は首を横に振った。


「そいつは吸血鬼を狩ってたアカシアとバラカを殺しに来たんだろう? それなら、同じように目障りなメイアもいずれ殺しに来るはずだ。遅かれ早かれ戦うことになるなら、こっちのタイミングで……尚且つ、アカシアとバラカの救助も狙った方が得だろう」


 何より、その方が話が早い。


「……分かった。信じるぜ」


「あぁ、信じてくれ」


 そうと決まれば、ここからは作戦会議だ。

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