表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/488

情報共有

 東方は拘束から身を乗り出し、カラスとステラを睨みつけた。


「おい。マジで行くんじゃねえぞ?」


「えぇ、分かってますよ」


 東方は溜息を吐き、そしてメイアの方を見た。


「しかし、アカシアとバラカの娘か。それなら、人の血を吸わずにここまで強くなれたのも納得できるな」


「別に、人の血を吸っていない訳じゃないわよ」


 メイアの言葉に東方は首を傾げるも、直ぐに気が付いた。


「……パートナーか」


「そうよ」


 吸血鬼で言うパートナーとは、協力関係にある血を提供してくれる人間のことだ。それを聞いた東方は、しみじみと頷いた。


「じゃあ、今は幸せか?」


「そうね。後悔のない人生とは言えないけれど、今は幸せに暮らせてるわ」


 東方は、月の浮かぶ夜空をゆっくりと見上げた。


「そう、か……だったらもう、心残りも無いな」


 東方の口から漏れた不穏な言葉に、メイアは眉を顰める。


「心残りが無いって……何をする気なの?」


「……何でもねぇさ」


 そう言い残し、東方は話を打ち切った。


「おいおい、その話の切り方で察せない訳ないだろ?」


「死相が見えますよ」


 微笑んで言うステラに、東方は息を吐く。


「俺はダンピールだ。常に、周囲の吸血鬼の位置を把握できる。尚且つ、潜伏することも得意だ。俺ならば、敵に気付かれずに目標を達成できる可能性がある」


「目標と言うのは、具体的に?」


「アカシアの救出は難しい。アカシアの血はあるが……どうすれば根源から呼び覚ますことが出来るかは分からない。だが、バラカに関しては救出出来る可能性が高い。吸血鬼の封印となれば、恐らくあの石の中だ。そして、封印は絶対に館の中にある。それなら、俺でも何とか出来る」


 絞り出すような説明に、ステラは険しい目を向ける。


「調子に乗らないで下さい」


「ッ」


 想いもしていなかった言葉に、東方は言葉を詰まらせた。


「貴方の説明を聞いている限り、貴方一人で目標を達成することは不可能に近いです。何より、隠密行動で封印を突破するのであれば私達の方が向いています」


「……やってみなければ、分からない。それに、俺はもう未練も無い。最後にアイツらの為に死ねるなら……俺の人生にも、少しは意味がある」


 東方の言葉に、ステラは呆れたように息を吐く


「情報を抱え落ちするのは止めて下さい」


「だが……」


 渋るような東方に、メイアが微笑む。


「単純な話よ。協力すれば良いじゃない」


「……ダメだ。俺達で力を合わせても絶対に足りない」


「別に、私達だけなんて言ってないわ。私のパートナーは、私よりも強いわよ」


「それは、どのくらいだ?」


 その問いに、メイアはニヤリと笑う。


「私じゃ、足元にも及ばないくらいね」


「……本気で言ってるのか?」


 三人が全員頷き、東方は呆然と口を開けた。


「煙草を、吸わせてくれ……ちょっと、考える」


 影の拘束が外れ、東方は煙草を取り出して火を付けた。




 ♢




 という訳で、俺の前には三体の使い魔と一人の男が座っていた。


「あー、申し遅れました。東方です」


「敬語は止めてくれ。歳上だろう」


 使い魔達から連絡を受け、共有を受けた俺は、取り敢えずこの男を家に招いた。謝罪と挨拶を聞いたが、敬語に不慣れさのようなものを感じたのでやめさせた。


「そうかぁ? んじゃ、遠慮なく」


「それと、先に言っておくが……俺達の情報を他の奴に漏らすようなことがあれば、殺すことになる。そもそもそれが出来ないように、契約もしてもらう」


「あぁ、分かってるさ。俺は口は堅い方だぜ?」


「分かった。じゃあ、後で契約を頼む」


 口が堅かろうが軽かろうが、契約すれば同じだ。勿論、契約を突破されるという可能性も無くは無い訳だが。


「それで、聞いたぜ。お前は相当強いんだろ?」


「……まぁ、そうだな」


 今更、否定するのは不可能だし、その必要も無い。


「良し、じゃあ期待させてもらうぜ……先ず、俺が知ってるのは館の位置とある程度の間取り、それと何人かの敵の能力だな」


「取り敢えず、敵で一番強いのは誰だ?」


 俺のその問いに、東方は即答した。


「ニオス・コルガイ。敵の親玉だ。高い魔術や科学の技術を持っている、恐らく真祖の吸血鬼だ。アイツの真に恐ろしい所は知識だ。アイツは俺達の知らないようなことを沢山知っている。アイツがいつから生きているかは知らないが……アイツが吸血鬼の頂点の座に立ったのは、知識の力が大きいだろう」


「……知識、か」


 魔術等において、知識というのはそのまま力に直結する。俺達が相手にするのは、単純な力押しの怪物とは思わない方が良いだろう。


「それと、間取りに関しては変化している可能性もある。余り、信頼しないで欲しいが……根源の位置に関しては動いていない筈だ」


「……その、根源ってのは何なんだ?」


 話には出ていたが、その正体に関しては良く分からなかった。


「あぁ……根源ってのは、血の根源だ。全ての吸血鬼の祖とでも言うべき物体だな。始祖の吸血鬼は消滅した時、その根源に還る。上位の吸血鬼はストックを……つまり、自分の血を非常用に保存しておいて、そこから復活するんだが……始祖の吸血鬼にとっては、根源がそのストックになる」


「……それなら、アカシアは復活している筈じゃないのか?」


 俺の問いに、東方は首を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ