ハロー、ハンター。
木の巨人を消し飛ばす銀の奔流。ハンター達は思わずそちらに振り返る。
「ハロー。私はステラです」
現れたのは外見では人間にしか見えない機械の人形。輝くような銀色の長髪、ライトグレーの瞳、バランスの良い肢体、非の打ち所の無い完璧な美女だった。
「ッ、誰だ……?」
「あんな子、ハンターに居たか?」
「何にせよ、救援だッ! 戦線を立て直せるかッ!?」
ステラは微笑み、ハンター達の前に立つ。
「お任せ下さい、ハンター」
ステラがその手の平を黒い巨人に向けて突き出す。
「『銀粒砲』」
銀の奔流が巨人に迫り、巨人は腕をクロスさせて受け止める。
「グ、グォオオオオッ!?」
「ほう、硬いですね」
しかし、奔流を受け止めた腕はボロボロに傷付き、肉が抉れてしまっている。
「グォオオオオオオオッ!!」
怒りを露わにする巨人。その場にぐっと屈み込むと、ハンター達の方に跳躍した。
「ッ、やべえぞッ!」
「『形態変化・巨槌腕』」
焦るハンター達を尻目にステラは空中に飛び上がり、その腕を巨大な銀色のハンマーに変化させる。
「グォオオオオオオッ!!」
「行かせません」
空中で振るわれる巨人の腕を銀のハンマーが弾き、巨人を叩き落した。ステラのボディは空中戦にも対応しており、空中でも地上と同程度のパワーを発揮することが可能だ。
「巨人は私が引き受けます」
「グォォオオオ……ッ!」
ステラは空中に浮遊したまま巨人を見下ろす。
「ッ、飛んでるぞッ!?」
「何だ、アレ……魔術か?」
「じゃあ、腕のハンマーは異能かッ!?」
怒りに身を任せてステラに手を伸ばす巨人。しかし、ステラは空中をひらひらと動き回って回避する。
「今の内に周りの奴をやるぞッ!」
「『紅蓮火葬』」
「数を減らし続けろッ、アイツらも無限に居る訳じゃないッ!」
ステラは回避に専念しつつも、巨人がステラを諦めそうになったら即座にハンマーで殴りつけて気を引いている。まるでゲームのような戦術だが、知能の高くない巨人相手には有効だ。
「やばいッ、速い奴が来たッ!」
「風緑狼のボス個体だッ!」
「『銀粒砲』」
更に、ハンターだけでは対処できないような強敵が現れた際には即座に空中から銀の奔流を放ち、対処する。
「うおッ!? 狼が消し飛んだッ!?」
「あの子だッ、銀色のッ!」
「ステラちゃんなッ! 名乗ってたぞ!」
魔物がどんどんと数を減らし、その勢いが落ちてきたのを見て、ステラはハンマーとなっていた片腕をスラリと伸ばす。
「『形態変化・螺旋錐』」
その腕が大きなドリルへと変化した。ドリルは凄まじい音を立てながら高速で回転を始める。
「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「遅いですね」
空中のステラを叩き落とそうと巨人の手が振るわれるが、ステラはそれを容易く潜り抜け、巨人の眼前まで迫る。
「グォ――――ッ!」
高速で回転しながら迫るドリルに巨人は言い知れぬ恐怖を感じ、顔を背けようとするが、間に合わなかった。
「削り取ってあげましょう」
「グォオオオオオオオオオオオッ!?」
ドリルは巨人の目に正確に突き刺さり、その眼球を一撃で破壊しながら脳の一部を抉り取った。
「グォ、グォオ、グォオオッ!」
片目を抑え、逃げるように走り出す巨人。それを見てステラはニヤリと笑う。
「『移動補助装置』」
ステラの体から金属製の紐が超高速で射出され、先端のアンカーが巨人の体に刺さる。
「ふふ、立体起動です」
巨人に固定されたワイヤーがステラを引っ張り、ステラは高速で巨人まで引き寄せられる。
「もしかして、うなじが弱点だったりしませんか?」
「グォオオオオオオオオッ!?」
一瞬にして巨人の背に到達したステラはドリルを巨人のうなじに突き立てた。別にうなじが弱点でも何でも無いが、アンカーによって巨人に張り付いたステラは幾ら体を動かしても振り落とすことは出来ず、ガリガリと首を削られていく。
「グォオオオオッ!」
「おっと」
首元に張り付くステラを叩こうとする巨人。しかし、ステラはワイヤーを伸ばすことで下に降り、巨人の平手を躱した。
「とは言え、もう限界でしょう」
脊髄をドリルによって砕かれた巨人は、ふらふらと揺れて膝を突く。
「『形態変化・大刃』」
ステラの腕がドリルから数メートルもある刃へと変化する
「ぐ、ォオ――――」
ステラはワイヤーを駆使し、ぐるりと巨人の首を一周しながら切り裂いた。
「が、ぐ……ォオ」
巨人は首から血を吹きながら倒れ、ぴくぴくと動く。
「『銀粒砲、出力最大』」
倒れた巨人に向けて放たれる銀の奔流。それは巨人の心臓を貫き、巨人は遂に力尽きた。
「おおおおぉッ! 巨人が倒れたぞッ!」
「やべぇ……黒坊主を一人で倒しやがったッ!」
「やったぁあああああああッ!! ステラ様ぁあああああッ!!」
ステラはハンター達にニコリと微笑み、それから直ぐに魔物の群れに飛び込んだ。
「駆逐してあげましょう。この世から、一匹残らず!」
珍しくテンションの高いステラは、ワイヤーで飛び回りながらひゅんひゅんと巨大な刃を振り回した。




