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弾丸

 青い波動と無数の魔術がぶつかり合って消滅し、二本の大剣がぶつかり合って大気を揺らす。


「……これが、一級」


 アザミは離れた場所からそれを観察し、呟いた。元々は一級の二人にここを任せ、別の場所に向かう予定だったアザミだが、二体目の王の出現により、この戦闘の行く末を見守る役目を任せられた。もし、一級の二人が敗北するようなことがあれば、この二体の王はまた野放しになる。それを関知出来なければ更なる惨事が日本を襲うことになるだろう。


「状況は……均衡状態。お互いに致命傷はありません」


 アザミは本部へと報告しながら、気配を出来る限り消して観察を続けた。



 幾度も武器をぶつけ合う竜殺しとザガン。その度に巻き起こる衝撃は凄まじく、人間の域を超えた怪物同士の争いにしか見えない。


「クハハッ、よもや人間の身で我と正面から対等に戦える者が居るとはなッ!」


「『竜血禍促モドゥス・スプリメンティ』」


 竜殺しの赤黒い脈打つ鎧から、更に赤黒く禍々しいオーラが溢れる。既にこの戦いの中でも幾度となく行使されたその力は、魔力と生命力、そして寿命を生贄に捧げる禁断の力だ。


「その力も何度目か分からぬが、貴様……このままではこの戦いの中で死ぬぞ?」


「知ってるさ」


 既に四度目の強化。竜血の騎士ファクティ・サント・ドラコニス自体も命を削る力なので、もうあと数分しか竜殺しは生きることが出来ないだろう。


「『屠竜之技、天砕き』」


「ぬぅッ!?」


 竜殺しが赤黒いオーラを放つ大剣を思い切り振り上げる。それは大剣で受け止めようとしたザガンだが、想像以上の衝撃にザガンの大剣は上に弾かれた。


「『屠竜之技、地砕き』」


 竜殺しは上に振り上げた大剣を全力でザガンに振り下ろした。大剣を弾かれた状態にあるザガンはそれを避けることは叶わない。


「ぬぉぉッ!?」


 何とか身を逸らしたザガンは脳天に大剣が当たりこそしなかったが、肩から腰にかけて一直線の斬撃がザガンを襲い、その肉体をズタズタに切り裂いた。


「ぐぬッ、しかしッ!!」


「『屠竜之技、滅竜激剣』」


 大きな傷を負ったザガンはそれでも大剣を竜殺しへと振り下ろす。しかし、竜殺しはそれを避ける素振りも見せず、大剣を全力で横に薙いだ。


「ぬ、ぉ……ッ!?」


 竜殺しの大剣はザガンの胴体を完全に切断し、上半身と下半身で分けた。


「……」


 そして、ザガンの大剣は竜殺しを頭から叩き潰し、原型も無いほどの無残な死体に変えた。


「ぐ、ぬぅ……ぉぉ……」


 肉体を両断されたザガンは呻き声を上げながら、竜殺しの死体を見た。どう見ても、完全に死んでいる。だが、妙だ。魂が、魂の動きが。



「『――――終わりなき英雄譚(シグルフリーツ)』」



 死体が、巻き戻るように再生していく。原型を無くした鎧も元の形へと戻っていく。


「はぁ、また掛け直しか」


 竜殺しは起き上がると溜息を吐き、大剣を持ち上げた。


「『竜血禍促モドゥス・スプリメンティ』」


 死によって失われた強化を、竜殺しは何の躊躇もなく掛け直した。


「……怪物か、貴様」


「悪魔のお前に言われるのは心外だな」


 立ち上がった竜殺しは大剣を振り上げ、地面に這いつくばるザガンの頭にそれを振り下ろした。



 空を埋め尽くすような青い波動が、大量の魔術を呑み込み、かき消していく。


「『蒼天拳波』」


 拳の一振りで巻き起こる青い波動。ヴィネはそれを多重に障壁を展開しながら防ぎ、佐渡に向かってゆっくり進んでいく。


「届いたぞ……死ね、人間ッ!」


 緑の刃を持つ蛇の剣を突き出すと、その刀身がぐねりと伸びて佐渡に迫った。


「ハハッ、そんな小細工が俺に……ッ!」


 佐渡は伸びる刃を弾こうとして、気付いた。


「言っただろうッ、届いたとッ!」


 その蛇のような刃から、金属の波が溢れ、膨れ上がるようにして佐渡に迫る。既に至近距離に居た佐渡は逃げることも出来ず腕から金属の波に呑まれた。


「さぁ、潰れ死ぬが良い!」


 金属に呑まれた佐渡は指一つ動かすことも出来ず、青い魔力によって体内への侵入こそ防げているものの死ぬのは時間の問題であるように思えた。


「苦しいかな? 苦しいかな? どんな気分か教えてく――――ッ!?」


 ヴィネの背後から迫る何か、それは大剣だ。竜殺しが投擲した大剣。ヴィネは障壁を展開してそれを防ぐが、僅かに金属の制御が緩んだことで青い魔力が爆発し、佐渡を囲んでいた金属は四方八方に吹き飛んだ。


「ッ、貴様……ザガンはどうした」


「殺した。相打ちみたいなもんだったが、俺の方がしぶとかったな」


 竜殺しは両手に別々の剣を呼び出し、構えた。


「いやぁ、ホント助かったよ竜殺し。さぁ、つまりここからは……また二対一ってことになっちゃうね?」


「……二対一、か」


 佐渡の言葉にヴィネは薄く笑みを浮かべる。


「ッ、不味いッ! 呼ばれるぞ仲間をッ!」


 竜殺しの見た未来、現れる何体もの悪魔。そうなれば流石に二人でも危うい。


「『蒼天拳波』」


「『滅竜双剣』」


 振るわれる拳と双剣。しかし、ヴィネはそれを読んでいたかのように双剣を避け、放たれる青い波動を障壁で相殺する。


「さぁ、来――――ッ」


 両手を広げて笑うヴィネの頭を凄まじい速度で迫る金属の弾が貫いた。


「ッ、今だッ!」


「『滅竜双剣』」


 頭を丸ごと吹き飛ばされたヴィネ。その隙を見逃すほど一級のハンターは甘くなかった。思考能力を一時的に失ったヴィネは、それを取り戻すことも無く塵となり、風に流されて消えていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 俺TUEEEだけど主人公以外も強くて良い
[一言] 100話おめでとうございます(o´Д`o)ノ゛
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