表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

 俺は何かの流れで異世界に転生するということになった。


「それじゃあ早速異世界に転生させるからね。せいぜい頑張って生きておくれ」


「はい。でも一つ気になるのですが、もう地球に帰るということはできないのでしょうか」


「できないよ。君が今知りえる情報の中ではね。でも異世界をくまなく探索したとき、もしかすると脱出する手立ては見つかるかもしれないね」


「なんですかその言い含め方。ちょっと教えて下さいよ」


「それはできないよ。面白くないじゃないか」


「まぁそれはそうか。でもいいですよ。異世界に転生していただけるというのでしたら、やってやります」


「それは頼もしいね。まぁこれは僕の気まぐれみたいなものだから、気軽に構えてくれていいよ」


「で、何をするんでしたっけ」


「魔族を全滅させると言ったばかりなんだけど、頭悪いのかな」


「大丈夫です。分かってますよ、ちょっとした冗談ですよ」


「それでは転生させよう。ご武運を祈ってるよ」


 途端、俺の体が輝きに満ち始めた。

 光の粒子がポツポツと体から抜けていき、徐々に体全体が透明になっていくのが分かる。

 不思議な感覚、ああ、俺本当に異世界にいくのかな。楽しみなような、それでいて不安なような。


 まぁなんとななるでしょ。なんとかしてみせる。地球とは違う、ハッピーなボッチじゃない異世界ライフを送ってやるんだ。


 その思いとともに、俺の意識は闇へと沈んだ。






 ○







「……う、うぅ……」


 俺はうなされながら体を起こす。

 するとどういうことだろうか。俺は平原のど真ん中で寝ていた。


「なんだ、何が起きたのかさっぱりだ」


 服装も旅人風の訳の分からないものに変わっている。

 こんな服持っていない。

 となると誰かが俺を一度裸にした上で、衣服をわざわざ着せたということになる。

 実にキモチワルいはなしだ。


「いや、待てよ、太陽がふたつあるぞ」


 空を見上げれば、大きなまばゆい光源が二つも浮かんでいた。

 これはおかしい、地球では一つのはずだ。

 となるとこれは夢?

 いや、


「そうか、俺異世界に転生したんだったな」


 思い出す。

 そうだ、確か神様を名乗る存在が、異世界に転生させるとかどうとか言ってきて、俺はそれを受け入れたんだった。


「あれは夢じゃなかったのか。なんかいまいち実感が湧いてこないな」


 俺の体は別に地球にいた頃となんら一つ変わっていない。

 どうにもリアルの延長線上に見えてならない。新たな人生と言われても、ピンと来ないのだ。


「でもなんとかやるしかないよな、ここは異世界なんだ」


「あのー……」


 そうこうしていると、何者かに話しかけられた。

 そこを見てみると、十代前半くらいの若い娘が、俺を見上げてきていた。

 なんだ、誰だ、もしや俺の敵? いやそんな感じではない、ここは凄く友好的に接するとしよう。


「君は何者なんだい?」


「わ、私はカンベッペ村の者です。あの、ぼうっと突っ立ってらっしゃったので、どうしてかなとつい気になってしまいまして……」


 そういう娘の服装を見てみると、たしかに茶色を基調としたボロボロの服装だった。ひどく醜い。乙女はもう少し綺麗な服装を着せないと駄目じゃないか。何をしているんだ。


「そうだったんだな。でも俺に話しかけたところで、君にどうこうメリットがあるわけではなくないか?」


「私にメリット……ですか?」


 娘はよくわからないという顔をした。

 なんだこいつ。こんなよくわからないやつに構ってるのも時間の無駄かもな。

 俺は魔族とやらを全滅させるというミッションがあるのだ。

 そういえば神様が何か凄い力をくれるみたいなことを言ってたよな? それってなんなんだろ、よく考えてなかったが、せっかくだから試してみようかな。どのみち生きていく上ではその力を使いこなせるようになっておいた方がいいだろうし。


「まぁ異世界っていうくらいだから魔法かな?」


 俺は風の剣を想像してみた。

 どうやって出すのかわからないのだから、想像から入るくらいしかほかにない。

 すると驚くことに、俺の右手に瞬時に何かを握る感覚が訪れた。

 見てみれば、手のひらから棒状に風がそよいでいるのがわかった。

 もしかしてこれが風の剣ってことか? 刀身は風でできているためか認識しづらいが、確かにそこに何かあることが分かる。


「威力はどんなもんだろう」


 俺はものの試しに、目の前の少女を斬りつけてみた。


「え」


 その声だけ発し、少女の胴体は肩から脇腹に掛けて、斜めに分断された。

 ぶしゃっといい色をした赤い液体が飛び散り、どさりと上半身が地面に転がる。

 分断された面からワンテンポ遅れて、ごぽりと何か生めかしいものが吹き出た。

 気持ち悪い。

 そう思った。


「おお、やっぱり凄い威力なんだな」


 少女の顔を見てみると、何が起こったかわからないといった顔でぽかんとしたままだった。瞬き一つしていない。まぶたも、小さな唇も何もかもが機能を停止していた。つまりほぼ即死したということだ。


「これはかなり使えるな。やばい魔法使えちゃったよ、最高だな」


 俺は満足した。

 これを駆使して世界最強になってやろう。

 俺は新たな目標を手にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ