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「一緒に行動しろと言ってもな。俺にとっては君は邪魔でしかないんだよ」


「あなたがどう思おうがかまわないわ。私はあなたに付いていきたいと思ってる。それだけでもう私があなたに付いていくという理由には十分なのよ。それに邪魔はしないわ」


 はぁ、その自信はどこから来るんですかね。まぁいうて俺もこの世界のことはよく知らないから説明役とでも思えばなんとかなるか。


「因みに私はエリズリンって名前。まぁ勇者としての正式名を言えばもっと長くなるんだけど、いいわ、あなたは?」


「……はぁ。俺は伊井田愛十いいだまなと。別に君を認めたわけではないから、勘違いしないでね」


「そう、変な名前ね。まぁそれでこそあなたという感じがするから別にいいけど」


「変な名前が俺っぽいってどういうことだよ」


「じゃあ名前はイイダ? って呼べばいいのかしら」


「いや、そっちは名字だから愛十のほうで頼む」


「マナトね。ほんとに変わった名前ね。因みに私はエリザって呼んで貰ってかまわないわ」


 マナトってそんなに不自然な名前かな。もしかするとこの会話って異世界語を翻訳してたりするのだろうか。普通に考えれば日本ではないのだから日本語が標準語となっているとは考えづらい。俺には完璧に日本語に聞こえるが、もしかすると俺だけそんな仕組みになっているのかもしれない。まぁ普通に会話できるんだったらどうだっていいけど。


「わかったよ」


「じゃあ早速だけどこれからどうするの?」


「とにかく街に行こうと思っていたところだったんだよ。それはそれは素晴らしい街にね」


「そんなに素晴らしい街があるの? 街なんてどこも一緒でしょ?」


「そんなことないよ。街の中にはとても素晴らしい街だってある。ほら、例えば向こうにある街はあんまり良くない街だ。空気とか、人とかが腐ってる。でもこっちの方向にある街はとても素晴らしい街なんだよ」


「ふーん、その指さしてる方向にある街がどの街なのか、正直この辺の地理に全く詳しくない私にとっては皆目検討もつかないんだけど、あなたがそうと言うのであれば、そらくそうなんでしょうね」


「そうだよ。あとひとつ忠告しとくと、その素晴らしい街がどういった風に素晴らしいのか、どんな成り立ちでできたものなのか等の事細かな情報は聞き出さないようにすることだ。聞き出す素振りを見せれば、君の命が危ない」


「よくわからないけど、忠告というのなら受け入れておくわ。それで素晴らしい街とやらに行くというのなら、私もついていくけど」


「まぁそれに対して全然首肯する気にはなれないけど、先程からの君の態度を見ている限り、どうやら俺に付いてきたいという思いは本物のようだ。だから本当に特別な対応ということにはなるんだけど、君をちょっとだけなら連れて行ってもいいという風に考えている。ちょっとだけだよ」


「ケチなこと言わずにずっと連れていきなさい。少なくとも先程も言ったように一ヶ月くらいは様子を見る方向性で固めて貰わないと、私だっていろいろと準備というものがあるから」


「はいはい。もう君には何を言っても無駄なようだね。おーけー、降参だ。ただし俺の方から君のことをあまり気にかけるようなことはしないから、ついてくるなら本当に勝手にどうぞと残しておく」


「それは承知の上よ。ただし無理やり私を撒くような意味のない行動は取らないことね」


 というわけで謎の少女、いや、勇者といったか、その少女と行動をともにすることになった。



「じゃあその街に行ってみるから、ちょっと待ってて」


 俺は探知魔法で先程調べた、人がいっぱい密集している地点にワープできないかと模索してみる。

 俺の考えが正しければ、位相を指定してと……


 シュン。


 景色がかき消えた。

 俺は人通りの盛んな道路の真ん中にいた。

 色々な建物が周囲に立ち並び、出店なども並んでいる。

 やはりビンゴ。来たことがなかったとしても、地点さえ指定してしまえば俺はその場所にワープすることができる。

 この情報はデカいぞ。


「あの人きゅーにでてきたよー」


「え? ひ、人が……」


 だがそんな喜んでいる矢先で、周囲にいた人の何人かが俺の方を見て驚いているのがわかる。

 流石にど真ん中に転移しすぎて怪しまれたかな。

 今度は転移する場所を気をつけよう。

 でもどうしよう。このまま一人で行動してもいいけど、流石にあの少女を置いてくるというのもな。別に拾ってくる義理はないけど、約束を破った気分になるような気がしてムズムズする。

 仕方ない、ついさっきのことだしな。ここで即効捨てるのは目覚めも悪い……


 シュン。


 俺は再び転移魔法を唱え、先程いた場所まで帰ってきた。

 少女は驚いた顔をした後、ほっとしたような表情を浮かべた。

 あれ、よく見たら顔立ち結構整ってるのかな。白い肌になめらかな金髪がよく似合ってる。


「もう、完全に置いてかれたかと思ったじゃない。ていうかその魔法って……もしかして転移魔法?」


「まぁそうだよ。いきなり置いていくのもどうかと思ったから、一応戻ってはきたんだけど」


「戻ってくるならそうだといいなさいよね。でも転移魔法って……エルフ族の一部に使える者がいるくらいにしか聞いてなくてそれも伝承程度のものだと思ってたんだけど……あなた本当に何者?」


 そんなにレアな魔法だったのか。

 それを使えるって俺って本当になんなんだろう。


 俺のことは適当にごまかした後、仕方なく彼女を連れて、先程の街までワープした。



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