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ex 受付聖女達、戦闘終了

 男は倒れた、動かない。

 だとすればまず真っ先にやるべき事がある。


「シエルさん! 大丈夫っすか!」


 シエルに駆け寄りながらそう叫ぶ。


 シエルに応急処置を施す。

 何よりもまずそれだ。


 対するシエルは苦笑いを浮かべて言う。


「あー大丈夫大丈夫。ちょっと血ぃ足りなくてフラ付くけど。大丈夫じゃなかったら立ってないって」


「いやそれ大丈夫って思えるのアドレナリンじゃぶじゃぶ出てるからっすよ! マジで重傷なんすから!」


「うん、分かってる。重傷だよねハハハ……でもまず優先するべきなのはウチじゃない」


 そう言ってシエルは、影の男へと視線を落とす。


「コイツを拘束しないと」


「あ、確かに」


 また動き出されても厄介で、そうなった場合怪我人が増える可能性もあるので一理ある。

 ……だが。


「いやでもボクまともな拘束魔術は使えないっすよ?」


「あ、そうなんだ。じゃあウチがやれるだけやるから……その、悪いんだけど応急処置頼んで良いかな? その、先に拘束云々言ってたけどさ……正直に言うと全然大丈夫じゃないから……って駄目だ術式うまく組めない。ていうか視界が霞む……」


「ちょ、だから言ったじゃないっすか! とにかく回復魔術を使うっすよ!」


 回復魔術を発動。

 応急処置を開始する。


「た、助かるよ……」


 そう言ってシエルは苦笑いを浮かべる。

 先程までは戦闘中の緊張感やアドレナリンの分泌などで、良くも悪くもハイになっていたのだろう。

 それが徐々に落ち着いた。

 事が終わって緊張が途切れた。


 それでようやく重傷者らしい感じになってきた……とは思ったけど。


「と、とりあえずウチはやれるだけやってみるから」


(……重傷者……らしくはないっすね。すっげえ)


 尚も拘束を試みるシエルを凄いと言って良いのかは分からないが、関心してしまう。

 と、そんなやり取りを行いながら、シエルが拘束魔術を組み立てていく。

 そして一分程経過した所で。


「よ、よし……とりあえずこれで……」


 どうやら拘束魔術で拘束し終えたらしい。


「お疲れ様っす。ちなみになんですけど、どういう感じの拘束なんすか?」


「単純に体が重くなる。ほんとそれだけ。普通の人相手なら動き完全に封じられるけど、あれだけ動けるとなるとそうはいかないだろうなぁ」


「いや、でも何もしないよりは……と、そうだ」


 シズクは思い出したようにそう言って、回復魔術を使いながら片手間で男の手を取り指輪を抜き取った。


「これは回収しといた方がいいっすね」


「その指輪何それ? それがどうかした?」


 考えてみればシエルは先程まで地面に張られていた影が、あの指輪を使って形成されていた事を知らない筈だ。

 知る前に蹴り飛ばされたから。

 だから応急処置を行いながら、簡潔に説明した。


「成程ね……ならこれ取っちゃえばそこまで危なくない感じかな」


「いや、その指輪使う前のその男に蹴り入れられて大怪我負ってるんすよシエルさんは……っていうかよく無事だったっすよね」


「ああ。一応反射的に強化魔術は張れたし。後は受け身取ったからセーフだったよ」


「……いや、冷静に考えたらその大怪我はセーフって言って良いんっすかね」


 八割方アウトな気がする。


「まあ良いでしょ、命が有ったんだから。いやーなんか起きる度にちゃんと経験値溜まってるわ。去年のアレが無かったら死んでたかも」


(こりゃ流血沙汰も一回二回って感じじゃ無さそうっすね……)


 あまり考えたくない事を考えるシズクに対し、少し真剣な表情でシエルは言う。


「というかごめんね。ウチが突っかかった所為で二人にも危険な目に合わせることになって。その辺は本当にごめん」


「あ、良いっすよ別に」


 寧ろ。


「あれは誰かが動かないと駄目だったんじゃないっすかね。でもボク達はすぐには動けなかった。だから改めて考えてもシエルさんの行動は責めるような事じゃなかったっすよ。話聞く感じ、此処で止めなきゃ結局もっと被害者が増える感じだったっぽいっすから」


「……そっか。そう言ってくれると助かるよ」


 あ、でも、とシズクは言う。


「もうちょっと自分の命大事にしていこうって感じっすね」


「……良くあっちゃんにも言われたよ。まあ結果治ってないから迷惑ばっか掛けちゃって悪いんだけどさ……痛い目見ても治ってないから治らないかなこれは」


 そう言った後、苦笑いを浮かべながら言う。


「ああ、一応お願いなんだけど、ここまで酷い怪我負ったのはあっちゃんには内緒ね。これだけはほんとお願い」


「……なら傷とか残らないようにちゃんと治療やるっすよ」


「……ありがと」


 と、そんなやり取りをしていた時だった。


「……ッ」


 倒れていた男が小さな呻き声をあげた。


 ……あまりに醜悪で最悪な誘拐犯が、目を覚ました。

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