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8 聖女さん、明日の打ち合わせをする。

「こ、此処ってアンナさんが追放された国の領土内なんですか?」


 周囲を見渡しながらシルヴィはそんな事を聞いて来る。


「うん。そして私がずっと住んでた家。向こうの都合で取り壊したくも無かったから、魔術でカモフラして見えないようにしてるんだ」


「へぇ……まあ確かに此処ならちゃんと隠せば見付からないかも」


「でしょ?」


「……しかし凄い交通の便悪そうですね。なんというか……うん」


「だから良いんでしょ。交通の便が悪い=人気が少ないって事だから。私、聖女やりながら昔から魔術の研究とかしてたし、あんまり人に周囲うろつかれると困るんだよね」


「み、見られたらマズイ研究でもしてたんですか……そ、それなら追放されても此処を維持する理由がちゃんとありますね……」


「あの、地味に離れて行かないでくれないかな。倫理的にヤバいような研究とかしてないから。単純に危ないからってだけで……と、とにかく大丈夫だから!」


 なんだか物凄い失礼な誤解されてる気がするんだけど。

 解けた? 誤解解けてる?


「ま、まあとにかく」


 うん、解けてるでしょ……多分。

 だからさっさと本題に行こうか。


「ここなら宿代も掛からないし、改めてだけどウチに泊まっていきなよ。色々と打ち合わせも必要だと思うしね」


 此処に辿り着くまで誤魔化しながら来ちゃったせいで、ステラのお店を出た後に言ったウチに泊まってく発言は結構意味深なまま宙に浮いちゃってた訳で。

 だから改めて聞いてみる。


「ま、まさか本当に言葉通りだとは思いませんでしたよ」


 そう言って少し苦笑いを浮かべるシルヴィだったけど、改めて笑みを浮かべて言う。


「じゃあ今日の所はお邪魔しても良いですかね。私も色々話しておきたかったですし」


「うん。じゃあ決まり。入って入って」


 そう言って私はシルヴィの前を歩き鍵を開ける。

 ……だけどシルヴィの足取りは重い。


「……どしたの?」


「あ、危なくないですよね?」


「いやだからヤバい研究はしてないって」


 ……うん、全然誤解解けてないや。


     ※


 その後、無事誤解は解けて……くれてたらいいんだけど、とにかく誤解が解けている筈のシルヴィを家の中に招き入れ、ひとまずリビングで明日の打ち合わせをする事にした。


「待ってて。ちょっとコーヒーでも入れてくるから。砂糖入れる?」


「あはは、ブラックで良いです。私ももう子供じゃないんで」


「お?」


 なんだ加糖派の私に喧嘩売ってんのか?

 ……。

 …………駄目だ駄目だ取り乱すなこんな下らない事で。


「分かった。じゃあシルヴィはブラックね」


「い、いまものすごい殺気を感じたんですけど……」


「あははまさかぁ」


「も、もしかしてアンナさん砂糖入れる派でしたか?」


「そうだけど別にそんな事で怒らないよ。子供じゃないんだから」


「……」


「……」


「……研究材料にするのは、か、勘弁してください……」


「誤解解けてない!」


 とまあお互いに良く分からないダメージを負いながら、それぞれコーヒーを飲みつつ打ち合わせ開始。


「そういえばシルヴィは得意な事って何かある?」


「得意な事……ですか?」


「うん。例えば魔物と戦う時近距離で戦う方が得意とか、遠距離で魔術をぶっぱなすのが得意とか。ほら、一応ポジションとか決めておいた方が良い気がするしさ」


「なるほど。確かにそういうのははっきりさせておいた方が良さそうですね。でも得意な事ですか……うーん」


 ……まあ基本聖女やってても直接戦いに参加する事ってほぼ無いだろうし、ポテンシャルはあってもすぐには思い付かないか。

 いや、でもちょっと待って。


「じゃあさ、シルヴィは自分の国からどうやって移動してきたの? 多分魔物と戦ったりしてきたよね。その時の事教えてよ」


「えーっとそうですね。基本近くに来た奴はぶん殴って、遠距離の奴は魔術ぶっぱなして来ましたね」


 うーんこれはオールラウンダー。

 雰囲気とかは完全に後衛サポート型みたいな感じなのに、普通に殴れる子だったわ。

 ……まあ多分遠距離サポートも無茶苦茶できるんだろうけど。


「ちなみにアンナさんは? どうやって移動しました?」


「私は飛竜で飛んできたんだけどね……あ、リュウ君っていう私の召喚獣でさ、後で顔合わせしておく?」


「あ、しますします……噛んだりしないですよね?」


「噛んだりはしないけど、結構激しめにじゃれてくるから気を付けて」


「い、命の危険を感じますね」


 いや、シルヴィなら大丈夫でしょ。

 一般人なら死ぬかもだけど。


「それで、えーっと……多分アンナさんは安全に移動できたんだと思うんですけど、もし戦わなきゃいけなかったらどういう風に戦ってました?」


「そうだね。近づいてきたらぶん殴って遠距離は魔術ぶっぱなす感じかな」


「わぁ、おんなじですね」


「そうだね」


 ……うん、おんなじだ。

 だってほら、正直攻守全部一人でできるし、そりゃそうなるよっていうか……。

 で、ここから導き出される結論はこれだ。


「シルヴィ」


「はい」


「当面はお互い好き勝手やろうか」


「そうですね。最悪フォローが必要そうなら臨機応変って感じで」


 多分私達にはこれが一番しっくりくると思うよ。

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