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7 聖女さん、帰宅

 ステラの店を出た私達は晩御飯も食べて結構良い時間なので、今日は解散する事に。

 ……する事になったのだけど。


「そういえばシルヴィは住む部屋とか見付けた?」


「あ、いえ、実はまだで……とりあえず今日の所はどこかの宿に泊まろうかなって思ってます」


「おんなじ。私もまだなんだ」


「じゃあ一緒に今日の宿探ししませんか? なんというか……正直見知らぬ土地なんで一人じゃ色々不安で」


 ……うん、何となく不安だろうなってのは分かる。

 私は元々一人だったから全然平気なんだけど、シルヴィはなんというか……メンタル弱いだろうから。

 結構この状況で一人というのはしんどいと思う。

 ……うん、だったらいいか。

 色々と打ち合わせもしたいし。


 私は浮かんできた考えを採用してシルヴィに告げる。


「じゃあ宿っていうか、ウチに泊まる?」


「え?」


 困惑した様子でシルヴィは言う。


「えーっと、アンナさんも宿探しまだって言ってませんでしたっけ?」


「うん、まだだしこれから探すんだけど……まあその内分かるよ」


「え? ん?? なんですかこれ、今クイズでもやってます!? ヒント! ヒントください!」


「ヒント、ウチとは私の自宅です」


「自宅ってアンナさん追放されてるじゃないですか! 駄目だ全然分からない!」


 頭を抱えるシルヴィ。

 なんか面白いからこのままネタバレ無しで連れ行こう。


「よし! じゃあ改めまして宿探し開始!」


「んんん???????」


 そんな訳で頭にクエスチョンマークを浮かばせまくっているであろうシルヴィと宿探しを始める事にした。


     ※


「それにしても本当に無茶苦茶ですよね。こんな珍しい境遇の人が三人も揃うなんて」


 宿探しの最中、最早考える事を諦めたシルヴィがそんな事を言う。


「ほんとにね。でもまあ私を含め三人共、追放されて悲惨な事になってなくて良かった」


「そうですね」


 普通は結構酷い状況に陥ってしまうようなイメージはあるが、私もシルヴィも無事冒険者として生計を立てていけそうだし、ステラも良い人達と巡り合えたみたいだし。

 ……うん、あのお店の店長さん良い人だよ。

 頼んでもないのに、凄い美味しいデザート出してくれたし。


「だけど……まあ無理な勧誘はしない方がいいのは間違いないんですけど、ちょっと残念ですね。元聖女三人で組んだパーティーとか出来てたら絶対凄いじゃないですか。わ、私はともかくお二人は無茶苦茶凄いと思うんで」


「だからシルヴィも凄いんだから胸張りなって」


 張る胸あんまりないけど。

 まあそれはさておき。


「確かに凄いし心強いけど、私とシルヴィだけで十分戦力過多な感じはするし……それに、あれは引き抜けない」


「ですね。なんか今が幸せみたいな感じでしたし」


「うん」


 ステラはアレで良い。

 寧ろあの状況から冒険者になるような事は、逆に駄目だと思うから。


 と、そうこうしている内にひとまず一件目。

 空いているか分からないけれど、宿を見付けた私達は足を踏み入れる事にした。


     ※


「生憎ですが、ただいまシングルが一部屋空いているだけでして」


 フロントで部屋の空き状況を尋ねた所、シングルの部屋が一部屋空いているだけらしい。

 ……なるほど。

 十分。


「いや、大丈夫。駄目なら無理にとは言わないけど、私達二人でその部屋に泊まる事ってできる?」


「あ、アンナさん!?」


「か、可能ですが……ああ成程。そういう……」


「え、今何を察したんですか!?」


 シルヴィが何やら面白い感じに騒いでいたけど軽く流して部屋の鍵を貰う。

 色々と事態が呑み込めていない様子ではあったけど、ちゃんとシルヴィも後を付いてきた。

 付いてきて……何やら気付いたらしい。


「ず、ずっと良く分からない事言ってましたけど、ま、まさか……す、すみません! い、嫌とかそういうんじゃないですけど、心の……心の準備が!」


「あーいや、シルヴィが考えたような事じゃないから大丈夫。というか私そっちの趣味無いし」


「え、あーそ、そうですか……」


 そう言ってシルヴィは胸を撫で下ろす。

 ……というか嫌じゃないんだ。


 それはさておき。


「そ、それでどうするんですか? 結構小さいですけど、一緒のベットで眠る感じですか?」


「いや、それは無いかな」


 ……というか嫌じゃないとか言い出した時点で、なんかその行為に結構な危険を感じるし。


「じゃ、じゃあどっちか片方が床ですか? そ、それなら別々の宿を取った方が良かったんじゃ……お話なら明日もできる訳ですし」


「それもハズレ」


 言いながら私は部屋の中心にしゃがみこんで魔法陣を展開する。


「え? 何やってるんですか?」


「転移魔術の準備をしてるの……と、できた」


 そう言って私は立ち上がる。


「準備完了」


「転移魔術って……これどこに繋がってるんですか?」


「私の自宅」


「自宅……そういえばそんな意味深な事ずっと言ってましたね……って、まさか」


「そのまさか。私の自宅、カモフラしてまだ元居た国にあるんだ」


「え、ええ!? い、いいんですかそんな事して! 怒られますよ!?」


「そりゃ駄目だけど無茶苦茶な理由で追放されてるんだからこっちもやりたいようにやるし。というか怒られるような事が有っても返り討ちにできるしね。まあとにかく乗って乗って」


「は、はい」


 そう言ってシルヴィと魔法陣の中心に立って柏手を打つ。

 すると一瞬で視界が見慣れた景色へと変わった。


「いらっしゃいシルヴィ」


「お、お邪魔します?」


 約半日ぶり。

 友達を連れて自宅に帰宅だ。

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