5 聖女さん、二度ある事は三度あってビビる
「な、なんで追放なんかされちゃったの!?」
「お、お姉さんこそなんで……」
「……」
「……」
「とりあえずどこかでゆっくり話さない? 私達ならお互いの話にある程度共感できそうだし」
私も色々愚痴りたかったし、この子の話も聞いてあげたかった。
「そ、そうですね。丁度いい時間ですし晩御飯でも食べながらどうですか?」
「それいいね。じゃあそうしよう……あ、ところでキミの名前は?」
「シルヴィです。お姉さんは?」
「私はアンナ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
そんなやり取りを交わしてギルドを出た私達は、近くのお店に入ったのだった。
※
「で、やった覚えのないミスを一杯突き付けられてクビになっちゃった訳ね」
「はい……本当に身に覚えがなくて。あ、でも覚えてないだけで何かやっちゃってたかもしれないし……」
近くの店でパスタを食べながら聞いたシルヴィの話によると、どうやら私と同じように身に覚えの無いようなミスを突き付けられるという不当な解任と追放を喰らったらしい。
「うん、私結構ドジだから、本当に何かやってたかもしれない……うん、きっとそうですよ」
「いやいやいや、追放されるような事を身に覚えもなくやってるってのは流石に無いと思うよ」
「そ、そうですよね……そうだといいなぁ」
……多分、シルヴィは自分に自信が無い。
それが今回追放する為に色々と言われちゃって輪にかけて酷くなったみたいな、そんな感じがする。
多分私とギルドで会った時の反応は、本当に自分が何かをしてしまったんじゃないかとでも思っていたのだろう。
……なんか凄い気の毒。
……それにしてもシルヴィの居た国はどうしてシルヴィを追放しようと思ったのだろう。
シルヴィが居ると都合が悪い事があった。
……私の時みたいに。
流石にあんな馬鹿二人もいないだろうけど。
……いないよね?
でも少なくとも一人は居たからなぁ。
「ねえシルヴィ。ちなみに聞きたいんだけど、シルヴィの代わりってちゃんと用意されたんだよね。流石に代わりの聖女もいないのに追い出したりはしないだろうし」
「あ、はい居ましたね。なんだか最近王子様と仲良くしてる人みたいで。えーっと、すっごい美人で、大人っぽくて……えーっと、その……ちょっとエッチな感じでした」
「二人目の馬鹿いたぁ!」
何王族馬鹿しかいないの!?
「二人目の馬鹿って……え、それってつまりどういう……」
イマイチ自分の置かれていた立場や私の言った言葉の意味を理解できていないシルヴィに私は軽く説明してあげる事にした。
「聖女ってのは国の大事な役職な訳でしょ? そしてその大事な役職に、自分の気になる異性を置きたかった。まあ結構壮大なプレゼントって事だよ」
「なるほどじゃあアンナさんの所の王様は、自分の好きな人の気を引く為に……ってもしかして私の所も!? 私そんな理由で聖女辞めさせられて追放されてるんですか!?」
「99%そうだと思うよ」
「そんなぁ……」
結構衝撃的な話だったのだろう。
シルヴィはかなりのショックを受けている様子。
うん、そりゃショックだと思うよ。
「そ、そんな事であんなに大事な仕事の人員換えちゃうなんて……もしかしてウチの国の王子様は馬鹿なんですかね!?」
「ウチの国の馬鹿もシルヴィの所の馬鹿もみんな馬鹿だよ」
「うわぁ……」
「……」
「……」
「……」
「……というかそんな馬鹿同時期に二人も居たんですね」
「居たんだよねこれが……」
どうなってるんだろうこの世界この時代の王族の方々。
……どんな教育受けたんだろう。
前の王様は普通に尊敬できる人だと思ったけど、多分息子さんの教育は色々ミスってたんだろうなぁ。
私はため息を吐きながら言う。
「よくさ、二度ある事は三度あるって言うじゃん。もしかするともう一人位同じ境遇で追放された聖女がこの辺うろついてるかもしれないよ」
「ははは、まさかぁ……だとしたら完全に聖女追放ブームじゃないですか」
「いや、本当に聖女追放ブームって奴かもしれねえぜ?」
「「……え?」」
私とシルヴィの冗談に突然割って入って来た男口調の女性の声の方に視線を向ける。
そこに居たのは、近くのテーブルを拭いていたボーイッシュな感じのウェイトレスさん。
……ま、まさか……。
「まさかこんな所で同じ目にあってる仲間がいるとは。実は俺もこの前まで聖女やってたんだ」
せ、聖女追放ブーム来ちゃってるじゃん……。