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ex その頃の聖女ちゃんと聖女君

 時刻はアンナが狙撃手の元へ飛び立った直後に遡る。


「うわーやっぱ早いな。もうあんな所まで飛んで行ってる。アンナの奴すげえわ」


「す、ステラさんも同じくらい凄かったですけどね」


「お、そうか……ありがと」


 飛び立ったアンナを見送りながらそんな会話を交わす。

 そしてアンナの姿が見えなくなった後。

 まだちゃんと怪我無くそこに居る事の確信が視覚情報から得られなくなった後、少しだけ不安になってシルヴィは言う。


「アンナさん、一人で大丈夫ですかね?」


「まあ大丈夫だと思うぜ? ……と言いたい所だけど、正直俺も不安なんだよ」


 ステラは難しそうな表情で言う。


「自惚れみたいに聞こえるからあんまり言いたくはねえんだけどさ、俺達って正直強いだろ。どっちかが倒れたら負けなんていうシンプルな戦いだったら、俺は今の所アンナかシルヴィ以外には絶対に負けないって自信がある」


「まあステラさんすっごく強いから、確かにそう簡単に負けませんよ」


「お、今自分なんてって否定はしなかったな。よしよし、自信付いてきたな」


「あ、いや……その……すみません。ちょっと調子に乗りました。私二人に並べる程強くないです……こ、この位……一センチ位はお二人の下ですよ!」


「別に良いけど全然謙遜できてねえぞ」


 指先で僅差を表現しながらそう言うシルヴィに、思わずステラがツッコミを入れた。


「まあいいや……話し戻すぞ」


 仕切り直してステラは言う。


「で、俺が負けない自信があるって事は、シルヴィやアンナも負けねえよ」


 だけど、とステラは言う。


「それは倒したら勝ち。倒れたら負けなんていう喧嘩みたいな場合ならの話だ。相手がそういう戦い方をしてこなければ話は変わってくるだろ」


「と、というと?」


「こっちが倒す戦い方をしてるのに、向こうがこっちを殺す戦い方をしてきたら、ある程度の戦力差なんて埋まるぞ」


「……ッ!」


「そんでさっきアンナを狙撃した奴は、そのある程度の範疇に収まる相手かもしれねえ。そうでなきゃあの攻撃で結界にヒビなんて入らねえよ」


「じゃ、じゃあ……」


「正直、普通に苦戦する可能性があるって訳だ。多分アイツも俺と同じで人とか殺さない主義者だろうし」


「で、ですよね……あ、私もですよ」


「名前上げてねえけど分かってるって。つーかもし違ったら衝撃的すぎてビビる」


「……それで、どうします? ステラさん。これって加勢に行った方が良いんじゃ……」


「まあ袋叩きにするのが一番確実だろうしな。でも流石に急を要する場面でこの場所じゃ付いていけねえよ。さっきも言ったけど山火事起きそう」


「そうですよね……そもそも私は飛べないし。でもステラさんだけでも行けたら行った方が……あ、こんなのどうですか?」


 シルヴィは良いことを思いついたと少し表情を明るくさせて言う。


「飛ぶときに噴射する火で山火事のリスクがあるんなら、そのリスクが無い高さまで結界をいくつも張って登って……影響が出ない高さから飛ぶってのは」


「あ、なるほど。まあ正直着地がダルそうな感じはするけど、四の五の言ってられねえしな。その案使わせてもらうわ」 


「どうぞどうぞ」


「よし。じゃあ俺はアンナの後を追うから、シルヴィは悪いけど一旦此処で待機……」


 突然、結界を張りながらそう言っていたステラは押し黙り、作りかけの結界の足場も掻き消してしまう。

 そしてシルヴィに言う。


「いや、悪い。作戦変更だ。こんな状況でシルヴィ一人を置いて行けるか」


「……助かります」


 言いながら二人して、先程まで罠が張られていた方角に視線を向ける。


「……来ますね」


「ああ、とんでもねえ奴がな……まさかこの山、こんな連中がうじゃうじゃ居るんじゃねえだろうな」


「ひ、否定できないのがもう最悪ですよね」


 シルヴィもステラも、気配を感じ取った。

 こちらに、今までの有象無象の魔物やドラゴンの群とは比べ物にならない程の強い気配がこちらに高速で向かっている。

 それに合わせて二人も臨戦態勢を取った。


 ステラは拳を構え、シルヴィは結界を鈍器へと変える。


 そしてそんな二人の元に飛び掛かるように現れる。


 表情は仮面を付けていて見えない。

 だが黒装束で包まれた体格を見る限り、低身長の女性だと推測できる人間が。


 自分達と同格であると確信できる程の強さを秘めた、冗談抜きでヤバイ奴だと直感で感じ取れるような相手が。

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