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9 聖女さん、追放云々の一件を清算する

「ちょ、ちょちょ、いきなり何言い出すんですかグラン様!」


 これまで私達の口論に対し直接踏み込んでこなかったロイが割って入って来る。


「なんだ、ロイ。俺変な事言ってるか?」


「馬鹿みたいな事言ってるからこうやって……あ、いや今のは言葉のあやで、正確には変な事言って……いやいや、お体心配してですね……」


「ま、言いたい事は分かるが、俺は変な事言ってるとは思わねえよ」


 そう言って馬鹿は一歩前に出てくる。


「実際この位が妥当なとこだろ。まあこれで不満ってなら一応当事者には意見聞いたって良いと思うけどよ……で、どうだ?」


 そう聞いて来る馬鹿に反応する前に、後ろに控えたシルヴィ達が言う。


「あの、アンナさん。流石にやらないですよね?」


「本人が良いって言ってるから良いのかもしれないっすけど……流石に10秒サンドバッグって一国の王様相手に……」


「分かってるよ、二人共」


 というかそもそも、コイツが出した条件そのままに乗っかるってのがシンプルに嫌だし。


「一発で良い」


 まあコイツは滅茶苦茶嫌いだし腹立つけど、追放された事が結果的に私にとってプラスになった訳で、追放された事についての恨みも無い。

 だからそういう事をしてきた姿勢に対するイライラと、我慢しなくても良いかと思える位に積もらせてきたイライラ。


 それだけをぶつけるんだったら、一発が妥当ってもんじゃないかな。


 ……うん、妥当だ。


「ちょ、ボクらが言ってるのはそういう事じゃ……」


「シズクさん、これ私達止めた方が良いんじゃないですかね?」


「お二人共」


 二人の言葉を制止させたのはミーシャだ。


「こうなったグランが後でこの事を問題にするなんて事はしませんわ。良くも悪くもやると言った事はやる人ですし」


 それに、とミーシャは言う。


「立場のある人間が争う時はもっと陰湿なものになるか、より激しい暴力によるものになるパターンが多いでしょう。それが双方合意の上で飲み屋のチンピラの喧嘩みたいな感じに終わるなら、きっとそれは平和的な解決って奴ですわ」


「言われてみれば確かに……いや、どうなんすかねこれ……んん?」


「……片方が指の骨ポキポキならしてる光景が平和とは思えないんですけど……や、比較的平和……なんですかね。んん?」


「いやでもやっぱ実際血みどろな争いとかになるよりは、この飲み屋でチンピラが喧嘩してるみたいな感じの方が平和な気がしてきたっすよ」


「まあ確かに……戦争だとか政治的なドロドロした争いなんかよりは、チンピラ同士の争いの方が……」


 なんか知らない内に馬鹿と一緒にチンピラの括りに入れられてる気がするんだけど……まあいいや。

 ……いいのか?


 うん、いい、ひとまずは。


「で、レギュレーションは? 魔術使って良いの?」


「お前が此処で人殺しにクラスチェンジしたきゃ好きにしろよ」


「分かった。じゃあステゴロで。アンタも強化魔術使ったりしないでよ。私が壁なぐったみたいになるから」


「んなダセエ事するかよ」


「聖女を追放するみたいなダサい事はするのに?」


「それやったからこうして此処に居るんだろうがよ」


 まあいいや。

 強化魔術とか使って来るようなら、こっちも軽く強化して二発目入れてやる。


「で、本当に一発で良いのかよ」


「良い。全部一発でぶち込んでやるから。覚悟しろ」


「…………ほんと、此処でそれができるなら最初からぶつかって来いよほんと」


「まずそもそもこんな事させないでよ」


「いやなら止めるか?」


「やる」


 そう言いながら構えを取って、右手に力を入れる。

 対する馬鹿は構えも取らずに突っ立ってる。


「え、これマジでやる流れなんですか? え、えぇ……?」


 ロイの雑音を聞きながら神経集中。


 そして動いて放つ。


 コイツが私にこれまで溜めてきたヘイトを全部ぶつける為の。

 清算するための一撃を……この馬鹿の顔面に。

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