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20 聖女さん達、参戦

 レッドドラゴンの戦闘能力は、道中蹴散らしてきた魔物とは一線を画す。

 知識として把握はしていたけれど、目の前で正統派ハーレムパーティーの皆さんを相手にしている姿を見て改めてそれを確信できた。

 そんな強いドラゴンが20頭。


 ……少なくとも、目の前の四人でどうにかできる状況じゃないと思う。

 だったら……取るべき行動は一つ。


「シルヴィ。ステラ」


「……分かってます」


「……やるしかねえだろ」


 私達は静かに息を整えて、いつでも動けるようにスタンバる。

 そしてその直後だった……レッドドラゴンの群が目視で確認できたのは。


「え……なんですか……あれ……え?」


 自分の視界に何が映っているのか分からない。

 理解できない。

 そんな風に、エレーナと呼ばれていた僧侶の女性はそう呟いた。

 そして困惑しているのは他の三人も同じで。


 丁度今まで相手にしていたレッドドラゴンの息の根を止めたようなタイミングで視界に入ったであろうドラゴンの群の姿に対して、唖然とするように硬直してしまっている。

 そして数秒の硬直の後、その群に背を向けてこちらに向かって走り出す。

 ……酷く絶望的な表情で。


 Sランクの依頼に出た私達を保護しに来たような人達だから、これまでに色々な経験を積んでいるんだろうけどそれでも……いや、だからこそ絶望的な光景に見えたんだと思う。

 私だってパーティーで協力してようやく安定して倒せるような強敵が、あれだけの数で飛んで来たらビビると思うから。


「あ、アレは流石にマズい! キミ達も早く逃げろ!」


 そう言って走ってくるけど、今更逃げ切れる状況じゃない。

 多分本人達も理解しているだろうけど、それは無理な話だ。


 私達のすぐ近くで待機している四人が乗ってきた巨大な鳥は、恐らくレッドドラゴン程の速度を出せない。

 そもそもきっと、飛び立つ事すら間に合わない。

 もうそういう距離まで接近されている。

 ……だからこの人達はもう詰んでいるんだ。

 迎撃も逃亡も不可能なんだから。


 第三者が介入でもしなければ、の話だけどね。


 そして私達は、彼らと入れ替わるように正面に飛び出す。


「ちょ、キミ達!?」


「一応伏せて! 初撃来るよ!」


 そしてもうすぐ近くまで接近していたレッドドラゴン達が一斉に口から炎の塊を打ち放つ。

 一発一発が、先程のエレーナという僧侶の女性のそれなりに強い筈の結界でなんとか相殺できる破壊力も持つ危険な攻撃。

 それが二十発、雨のように降り注いでくる。


 でも……だからどうしたって感じな訳で。


「とりあえず一旦この攻撃防ぐよ!」


「はい!」


「了解!」


 そして三人同時に正面に結界を張り巡らせる。

 後方に居る四人に流れ弾が飛ばないように、三人で即興で結界を張る位置を分担して強固かつ広範囲の半円状の結界を横並びで。


 そして次の瞬間結界に炎の塊が着弾し、周囲に轟音が鳴り響く。


 鳴り響いただけだけど。


「よし、全然余裕」


「よ、良かった……」


「分担して一枚一枚そこそこ分厚くしてんだ。この程度で割られるかよ」


 確実に流れ弾を発生させない為に必要な面積の三分の一程度の大きさにした代わりに、結界の強度に力を割り振った私達の結界は、ヒビ一つ入っていない。

 まあ一人で薄く伸ばして張った結界でも割られなかったと思うけどね。


 まあとにかく……第一波は防いだ。


 ここまで怪我人ゼロだ……当然、此処から先もね。

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