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ex とある研究者、セカンドプラン

(確定している未来通りに事が運んでいるのなら……今事は第一波が起きている頃か。胃が痛い)


 某国にあるとある研究施設内にて、ユアン・ベルナールは胃薬を服用しながら思考に耽る。


 当初の予定では先日の地下で術式を発動させて、計画の全てを終わらせる筈だった。

 だがそれはまさかの実の娘に阻まれる事となり、結果今は『あの日計画を一定段階まで進めた上で実行に移さなかった場合』の世界を歩んでいる。

 つまり本来であれば起きる筈の無かった事が。

 止められる筈だった事が、現実となって表に出てくる。


 それが第一波。


「空間を抉り取り消滅させる……か。全く、厄介すぎるよ。僕の敵……いや、この世界の敵は」


 その現象は、おそらく自分か自分と同等の魔術師でようやく感知できる程度の前触れしか起こさず、その場にある者を何だろうが、空間ごと消し飛ばす。

 今回は少なくとも生きた人間など誰も居ない場所で起きる筈だから良かったが、この先は……そういう訳にはいかなくなる。

 そしてそれが積み重なればこの世界がどうなるかなんて事は、少し考えれば理解できる。


 理解できたから……大切な物を全部捨ててまで、彼は此処に立っている。


 そして此処に立った彼は、本来であれば既に自分でも吐きそうになる程の最悪な形で、この問題に対する対抗策を打っている筈だったのだ。


 未来が変わったりなどしなければ。


(……本当に今回は人的被害が出ていないんだろうか)


 ずっと予知通りに進んでいた世界は、先日から大きく狂い出した。

 最愛の娘である、アンナ・ベルナールを中心として全てが狂い始めた。


 つまり……その余波を受けて、もう既に誰も居る筈の無いその地点に誰かが居た可能性がある。

 それこそ、そうなる経緯は分からないがアンナがそこに居た可能性だって。


「……」


 そう考えると吐きそうになるので、それ以上そんな最悪なケースは考えないようにした。

 それよりももっと、考えるべき事がある。

 ……この先のプランを、自分の頭でだ。


 未来は、変わった。

 事前に導き出されていた未来など、参考程度にしかならない。


 新たに世界規模のきめ細やかな未来とその分岐についての演算を始めていては、デッドラインを超える。

 つまりもう分かりやすい答えを導き出す事は叶わない。


 置き続けているイレギュラーをこの手で調整し、進んで行かなければならない。

 どれだけに困難でも。

 どれだけ非人道的で倫理観の欠片も無い行動だったとしても。


「……気合を入れろ。もう後戻りはできないんだ」


 足取りは酷く重くても……それでも。

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