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22 偉人の魔術師、ある程度自由の身

「……ッ」


 そんな事を言われて、思わず声にならない声が出た。

 言われている事に対して理解が追い付かない。

 あの難解な理論を理解するどころか……自分の形に変えている。

 そんな事をできる魔術師がいるのならば、今頃学会は大騒ぎだ。


 そしてそんな理解が及ばないような同業者が世界のどこかに居て、その同業者が私達の敵。


「良く生きていた……ね」


 ステラは思い返すように一拍空けてからレリアさんに言う。


「俺達が最後に戦った親玉みてえな奴は、何故か俺達の攻撃を防いでばかりで一切反撃をしてこなかった。もしかしたらあの時ガチで攻めて来られてたら、結構ヤバかったのか?」


「そうなるかもしれんの」


 レリアさんはそう言った後、指輪に視線を落としながら静かに呟く。


「しかし何故か反撃してこなかった……か」


 そう呟いた後、何故かレリアさんは私の方に意味ありげな視線を向ける。


「ど、どうしました?」


「……いや」


 レリアさんはそう言って瞳を閉じる。

 ……いや絶対に何かある奴じゃん。

 何? 私なんか粗相でもしたかな?


 首を傾げる私に対し、それ以上その視線の理由なんかを語る事無く、レリアさんは胸を張ってドヤ顔で笑みを浮かべる。


「まあそれはそれとして、一つ朗報がある!」


「朗報?」


 ステラの問いに頷いたレリアさんは言う。


「ワシ、あの小娘に乗り移らなくても此処から出られるかもしれん」


「は? マジかよ!」


「本当ですか!?」


 色々と前提が覆る発言に驚愕する私達にレリアさんは言う。


「ああ、ただし……この指輪を使い物にならなくするというのが条件じゃがの」


「使い物に……ならなくする?」


「ああ。この指輪にはとても精密で超高度な術式が内包されておる。そして逆に言えばこの指輪はそういう術式を内包できるだけの上質な器として設計されておる訳じゃ……そしてこの高度な術式よりも人一人の魂の質量の方がおそらく軽い」


「つまり……中の術式ぶっ壊して、代わりにアンタが入るって事か?」


「そういう事じゃ。人に取り憑く事に比べればあまり融通は利かんかもしれんが、これならワシは外に出られる……そして調べられるの。お主らに着いて行って今起きている色々な事について……どうじゃ? その指輪は今お主の所有物なのじゃろう? お主が決めればよい」


「……うん、良いと思う。少なくとも私はこれ使わないし」


 私がこれを預かっていたのはあくまで手掛かりになるかもしれないからだ。

 実際私が影の魔術を運用する事なんて無いし、この指輪を正しい用途で使う事は多分この先も無い。

 それに……預かったこの指輪の術式を壊す事が諸々の手掛かりに繋がるなら、きっとそれが正解なんじゃないかって思うよ。


「よし、なら早速ぶっ壊すとするかの……えい」


 そんなちょっとかわいい掛け声と共に、小さな破砕音が聞こえた。


「とりあえずこれでこの指輪の中に内包されておった術式は破壊したぞ」


 ……すっごいあっさりだ。

 私がどれだけ頭捻っても何も分からなかった術式をこうもあっさり……すっごいや。


「あ、これ持っといてくれんか?」


「う、うん」


 レリアさんから指輪を受け取った次の瞬間……レリアさんの姿が消えた!?


「あ、もしかして除霊した感じですか!」


 なんか後ろの方から嬉しそうなシルヴィの声が聞こえたけど違うよ?

 多分……レリアさんは私の手元だ。


「よし、大成功じゃ」


 次の瞬間には再びレリアさんが私達の前に現れる。


「指輪からあまり離れられんが、これで此処から出られるの。やったー!」


 元気よくバンザイするレリアさん。


「……あの悪霊しぶといですね」


 シルヴィのそんな声が背後から聞こえて来る。

 うわぁ……滅茶苦茶嫌われてるなぁレリアさん。


 そしてシルヴィに滅茶苦茶嫌われているレリアさんを見てステラが言う。


「シルヴィの体乗っ取らせる訳にはいかなかったがこれなら良いな。色々と進展しそうだ」


「……だね。こうなったらさっさと目的済ませて帰らないと」


「ん? そういえばお主らはこんな辛気臭い所に何をしに来たんじゃ?」


「……仕事です。仕事」


 なんか滅茶苦茶脱線した気がするけど、一旦仕事に戻ろう。

 いや、私達の置かれている状況的に脱線しているのはどちらかといえば冒険者としての仕事の方な気がするけど。

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