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19 聖女さん達、瞬殺する。

 最初の魔術による先制攻撃で分かった事が一つ。


 私達の油断を誘う為にあえて手を抜いたのでなければ、コイツらは大した事は無い。

 こちらへ向かってくる身のこなしを見ても、ルカと戦ったあの日に知り合ったハーレムパーティーの皆さんの方が数段上。

 ……その程度の相手。


 その程度の相手が四人程度なら……数の有利不利なんて有って無いような物だ。


 戦闘時間はものの数秒。

 手の込んだ事をやる必要も無い。


 一人を裏拳で薙ぎ払い、そしてそのまま流れるような体重移動でもう一人にも回し蹴りを叩き込む。


 ただ、それだけ。

 それだけで男二人は動かなくなる。


「よし……うん、この位じゃウォーミングアップにもならないよ」


 それだけであっさりと戦闘終了。

 四人いた敵はもういない。

 ……あと二人も、もう片付いているから。


「そっちも流石に楽勝みたいだね」


 ルカの方に視線を向けると、足元に男二人が倒れているのが見えた。

 向うも一瞬で方を付けた訳だ。


「当たり前だ。この程度で苦戦するようでは先が思いやられる」


「そうだね……末端っぽい連中はサクっと倒していかないと」


 ああ、そうだ。

 そうでなきゃ先が思いやられる。

 今戦った相手は弱かったけど、じゃあこの先も弱い相手ばかりかと言われればそれは絶対に無いという事を張り巡らされた魔術が証明している訳だから。

 苦戦するようだったら、私達じゃこの先に進めない。


「……さて、このまま先へと進みたい所ではあるが、コイツらはどうしたものか」


「結構当たり前に納得してたけど、やっぱり殺したりはしてないんだね」


 武器も持たず徒手空拳で片付けたみたいだし、当たり前のようにそこに殺意は感じられなかった。


「自分が言える立場では無いのは重々承知だが、こういう状況でも止むを得ない状況を除けば不殺を貫くべきだ。悪人を問答無用で殺すというのはただの私刑だよ。法治国家でそれは褒められた事じゃない」


 そして、とルカは言う。


「お前は止むを得ない状況と捉えても咎められないような状況下でも俺に殺意を向けなかったな。今俺はそういう精神の持ち主と共闘をしているんだ。殺人の共犯者にする訳にはいかないだろう」


「お気遣いどうも」


 なんだコイツ気遣いの鬼かな?

 ……多分だけど、コイツは少なくとも今日に限っていえば、そのスタンスを崩さないような気がする。

 だったら……一応これだけは言っておこうかな。


「でも無理して死なないようにね。こっちが倒そうと思って戦ってるのに、向こうは殺しにかかってきてるっていうのは相当しんどいから」


 私なりの気遣いだ。

 まあこの気遣いの出所はコイツとの戦いだから、なんか嫌味に聞こえなくもないけれど……まあどう受け取られようと、言いたいことが伝わってくれていればそれで良いよ。


「肝に銘じておく」


 ……変な曲解もされずに伝わったみたいだし。


「で、コイツらどうするって話だったよね? とりあえず拘束魔術でも……」


 と、そこで異変に気付いた。


「いや、いらない……かもしれない」


「ああ。これはもしかすると、あらゆる意味で殺さなくて正解だったパターンかもしれないな」


 考えは一致した。

 ……何かがおかしい。

 さっきまでこの四人が纏っていた、関わってはいけないような雰囲気が完全に消えている。

 ……完全にだ。


 正直同列に語って良いことなのかは分からないけれど、例えば起きていようと寝ていようと。

 そうなる過程が思いつかないけど気を失うような事が有っても、シルヴィ達をそういう眼で見て感じられる強さみたいなのは変わらないと思う。

 それこそ直感で感じられるほどのヤバい感じも、きっと同じなんじゃないかなって私は思う。


 それが気を失っただけで完全に消えた。

 そして、改めてそこに意識を割いた事で、一つ核心に近い発見に辿り着く。


 コイツらが纏っていた関わっちゃいけないような雰囲気とこの空間から感じる重圧。

 不快感なんかが、ほぼ同じなんだ。

 つまりどういう事か。

 私が辿り着いた仮説と同じ事をルカが言う。


「……コイツら操られていたのか?」


「……その可能性もあるよね」


 下手すれば誘拐を実行した犯人も。

 全部この空間に魔術を張り巡らしている誰かの操り人形になっていた可能性が、現実的にあり得る気がしてきた。


 そして……四人の内の一人が目を覚ます。

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