漫画のガキ大将の家業についての考察
はじめに
なろうラジオ大賞2の参加作品として投稿した「ブラウン管テレビの悪夢」というホラー短編にガキ大将を登場させていた事もあり、漫画に登場するガキ大将について考えたくなりました。
藤子・F・不二雄先生の作品を始めとする、昭和に描かれた児童向けの日常ギャグ漫画には、ガキ大将が必ずと言ってよい程に登場していましたね。
肥満気味の大柄な体格で、ケンカやスポーツになると生き生きとする力持ちな腕白少年。
いじめっ子や暴君として恐れられる一方、空き地や公園で野球などの球技に興じる時には子供達のリーダーとなり、男気や情の厚さを見せる事もある存在。
ガキ大将の最大公約数的な人物像は、大体こんな感じでしょうか。
私のイメージするガキ大将には、ここに「個人商店の息子」という肩書きを付け加えたくなるんですね。
だって、有名なガキ大将は結構な確率で実家が商売を営んでいるんですよ。
思い付く限りでは、八百屋に魚屋に酒屋、荒物系の雑貨店や乾物屋などが、ガキ大将の実家の商売として挙げられます。
要するに、日々の生活必需品を取り扱っている、町の商店という感じですね。
主人公のママを始めとする御近所の奥様方が、その主要な客層でしょうか。
主人公を始めとする子供達が行くとしたら、パパやママに命じられた御使いが妥当な線で、子供自らが能動的に来店する機会は少なそうです。
そこで、もしもガキ大将達の家業が子供達が自発的に来店するような業種の店だった場合はどうなるのか、幾つか考えてみました。
ケース1 玩具店の場合
もしもガキ大将が、最新のオモチャを直ぐに遊べるオモチャ屋の子だった場合、子供達のコミュニティーの中心人物になる事は間違いないですね。
店主である両親に頼んで、ミニ四駆などのホビー系玩具の大会を友達グループ貸し切りで開催する事も出来るでしょう。
人気のあるプラモデルや新発売のゲームを買いに来た主人公を、「お前の分は売り切れだよ!」って追い返して意地悪する展開もいけそうです。
ただ、自分の家のオモチャで遊んで満足するので、近所の気弱な子供からオモチャを分捕るストーリーは展開出来なさそうですね。
そして金持ちの坊ちゃんキャラが最新のオモチャを自慢する時にも、「そのオモチャ、うちの店にも入荷したぜ。」って具合に水を差してきそうです。
ガキ大将のいじめっ子的側面と、金持ちの坊ちゃんキャラの特性がぼやけるので、ガキ大将の家業にオモチャ屋は向かないのかも知れませんね。
ケース2 書店の場合
続いて、子供達が漫画を買いに行く町の本屋さんがガキ大将の家業だった場合を考えてみます。
主人公の男の子が漫画雑誌を立ち読みしていたら、「いつも立ち読みで済ませやがって!たまには買えよ!」って怒鳴って来るのでしょうか。
このケースも、最新の漫画を取次から容易にキープ出来るので、近所の気弱な子供から買ったばかりの漫画本を分捕るストーリーは展開しにくそうです。
ケース3 スポーツ用品店の場合
運動神経抜群の腕白少年であるガキ大将なら、スポーツ用品店はうってつけの家業ですね。
自分がリーダーを務めるスポーツチームのメンバーを鍛えるために、最新のトレーニング用品を持ち出してきそうです。
ただ、高品質な最新のスポーツ用品が容易に手に入る状況なので、スポーツに興じるガキ大将が妙にゴージャスになってしまい、金持ちの坊ちゃんとキャラが被る危険性が出てきます。
また、「新品のバットの殴り心地を試す」とか言い出した場合、自分の店の商品で友達を痛めつける事になるので、普通のガキ大将以上に洒落にならない描写になりそうです。
実家の店の致命的なイメージダウンにもなりかねませんね。
まあ、それは他の商売でも同じなんですけど。
ケース4 菓子屋・飲食店の場合
日常ギャグ漫画には、不思議な力と出自を持つキャラクターが、主人公の少年の友達として登場しますよね。
未来のロボットだったりオバケだったり、あるいは宇宙人だったり。
そういう少し不思議なキャラクター達は、大抵が特定の食べ物を熱烈な好物にしています。
どら焼きにラーメン、コロッケにハンバーグ等々…
ガキ大将の実家が、そうした食べ物を取り扱う店だった場合、それらが好きな少し不思議なキャラクター達を餌付けする危険性が出てきそうです。
もっとも、「それでも主人公の少年との友情を取る」みたいな感動エピソードにする事は出来そうですが、何度もやるとマンネリ化しますね。
少し不思議キャラを餌付けしようとする飲食店の少年は、レギュラーのガキ大将ではなくて、ゲストキャラに留めといた方が無難そうです。
まあ、ラーメン屋みたいな飲食店なら、レギュラー登場人物の溜まり場として使う事も出来そうですが。
終わりに
このように、色々な業種でガキ大将の家業をシミュレーションしてみたのですが、子供が喜びそうな商品を取り扱う店の子がガキ大将だと、ガキ大将が実家の商品で満足してしまう事で、生活コメディ漫画としてのストーリー構成の幅が狭められてしまう事が明らかになりました。
具体的には、ガキ大将が他の子のオモチャや漫画を取り上げる「いじめっ子」として振る舞う描写と、金持ちの坊ちゃんな友達が最新商品をいち早く入手して自慢する展開に、差し障りが出てしまいます。
それ以外にも各業種ごとに色々な差し障りが生じてくるので、子供の関心外の無難な業種に、ガキ大将の家業を設定しているのかなと考えた次第です。