春花3
「はるちゃんってつまんないよね」
「わかる。話すことがないっていうか」
「好きなこととかないのかね」
高校生の時の友達だと思っていた人たちが、そんなことを言っているのを聞いた。トイレの個室で私はしばらく動けなかった。無理もないと思った。毎日部活をして、塾に行って、勉強して、休日もそれだけで時間は過ぎた。彼女たちのように、それらをこなしながらも趣味に没頭する余裕は私にはなかった。しかもみんな私よりも成績が良かったから、次第に私は彼女たちといるのが辛くなっていった。
かわりに私は地味で静かな高橋という女子とつるむようになった。毛量の多い長い黒髪はいつもぼさぼさで、顔もニキビだらけ、おしゃれなんて考えたこともなさそうだった。彼女が誰かと一緒にいるのを見たことがないくらい、クラスでは孤立していた。部活にも入っていないようだ。今までの友人のタイプと全く違う彼女を選んだのは、体育の授業でペアを組むときにたまたま彼女と一緒になり、興味本意で話しかけたのがきっかけだった。
「高橋さんって好きなことあるの?」
「……好きなこと?」
「なんかあるんでしょ、アイドルとか音楽とか、漫画とかアニメとか」
「テレビもそれなりに見るし、音楽もそれなりに知ってるし、漫画もアニメも読むけど……好きってほどじゃない」
「ふーん」
私と同じだと思った。それから私は高橋と一緒に行動するようになった。もちろん休日に一緒に遊ぶようなことはしないが、移動教室や昼休みは二人でいるようにした。高橋は最初こそ驚いていたが、私の様子から何かを察したのか何も言わなかった。気を遣って話題を振ってくることもなく、「好きにしろ」とでも言いたげだった。