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宣誓  作者: とても白いペンギン
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春花1

 京ちゃんと再会したのは、私が大学生の時だった。私は都内の私立大学に通っていて、ある日同じ授業で京ちゃんを見かけた。最初は別人かもしれないと考えたが、別の人が京ちゃんを「齋藤さん」と呼んでいるのを聞いて確信した。

 もちろん声は掛けなかった。小学校の同級生で、その後交流の続かなかった友人など、ほぼ他人のようなものだろう。京ちゃんも、恐らく私に気付いていたが、声を掛けてはこなかった。

 でも、小学生の時はそれなりに親しくしていた。私は一年生で転校して、引っ越した家の一番近くに住んでいたのが京ちゃんだった。小学生は家が近ければみんな仲良くできるから不思議だ。夏は一緒に学校のプールに行ったし、雪が降ったら一緒に雪だるまを作った。京ちゃんにも私にも兄がいて、四人で遊んだこともある。

 特に仲が良かったのは低学年までで、高学年からはお互いより気の合う友達と一緒にいる時間が増えた。私はクラスの中でも大人びた、おしゃれや好きな男の子の話をするような友達と一緒にいて、京ちゃんは大人しくて、内輪の中でだけ大はしゃぎするような友達と一緒にいた。一言で言えば、私たちはタイプが違っていた。私は中学から私立に行ったので、その後京ちゃんがどうしていたのか知らない。


 そんな京ちゃんと久しぶりに話したのは、卒業も近付いた四年生の冬だった。私は卒論のために大学の図書館にこもっていて、たまたま休憩スペースに行ったら京ちゃんがいた。椅子が三つと自動販売機が二つ置かれただけの休憩スペースは、あまり広い空間ではないのでなんとなく私たちは目が合ってしまった。先に声を掛けてきたのは京ちゃんだった。

「はるちゃん、だよね…」

「京ちゃん」

「何回か校内で見かけたことがあるんだけど、自信が持てなくて。久しぶりだね。」

「私もだよ、京ちゃんに似た人がいるなーって思ってたけど、だって京ちゃんめっちゃかわいくなった!」

 これは本音だった。小学校の時の京ちゃんはお世辞にも容姿の良い方ではなかった。天然パーマの短い髪はボサボサだったし、ちょっとぽっちゃりしていたし、服もキャラクターものか無地の地味なものばかりだった。ただ、その頃から目がくりくりしていて、笑うと愛嬌のある小動物のような可愛さはあったが、今の京ちゃんは愛嬌そのままで痩せて髪の毛もつやつやになっていた。俗に言う大学デビューというものなのか、それとも私がいなくなってから徐々に変わったのか。

「そうかな、はるちゃんは大人っぽくなったね」

 こういう時京ちゃんは「はるちゃんの方がかわいいって!」なんてお世辞を言わないタイプだ。そういうところが変わっていなくて、少し安心した。

 できるなら、昔の友達には会いたくなかった。遡るほど、惨めになる。思えば小学生の時が、私の人生の一番良い時だった。


 その後私たちは卒論や就職活動など当たり障りのない話をし、別れた。何故かお互い、小学生の時の話はしなかったけど、京ちゃんはあの頃よりもよく喋るようになっていた。そのことに私はなんとなく苛立ちを感じていた。見た目も中身も明るくなった京ちゃんは、まるで自分と真逆だったからだ。

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