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10.届け想いよ

 私が祈りの格好を取り続けてから、かなりの時間が経った。


『ねえ。アレクシア、寝てないよね。ちゃんと祈ってる?』


『祈ってるよ、ちゃんと、みんながっ、踊り出したくなるくらい、幸せに――なるように!』


 ん……?

 なんだか言葉が途切れ途切れな気がするのは何故だろう。


『アレクシア? 今何してるの?』


『だから祈ってるって』


 なんだか他の事をしているような気がしてならない。


『あれだよ? 祈る内容は、城下町の人たちの病気が治るように、だよ』


『わかってるけどさあ。それじゃつまんないじゃん。病気の人だけ治ればいいの? じゃあ怪我の人は? どっちも辛くない?』


 確かにその通りだが。

 どっちも治せるならそれに越したことはない。

 だがそもそも病気が治せるかどうかもわからないのに、最初からあれもこれもと言って何も結果が出せなかったら目も当てられない。


『あー疲れた。ねえ、そろそろいいかな?』


『ダメだって! まだ大司教が全然微動だにしてないから。これくらいの時間は祈りが必要ってことなんだよ、たぶん』


『ええー?』


『ダメよ。絶対横になったりしちゃ』


『うん』


『立つのもダメよ』


『ユリシア』


『なによ』


『どうせならユリシアも祈りなさいよ』


『ええ? 私関係ないじゃん。むしろアレクシアの代わりにこんなところまで来てるのに』


『だってさあ、聖女だけが祈るとか、なんか違くない? 神様の力を借りたい人が祈ればいいじゃん』


 ごもっともである。


『聖女のお願いを聞いてくれるんだったら、毎日毎日一生懸命祈ってる人のお願いだって聞いてくれるかもしれないじゃん』


『うん。それは私も思う。だけど今は、私の命がかかってるから。とにかく私が聖女を騙った不届き者としてしょっぴかれないように、真面目に祈ってくれる?』


『はいはーい』


 アレクシアが言うことももっともなので、私も一応心の中で祈ることにする。

 他にできることもないから。


 ――病気の人が治りますように。

 ――元気になりますように。


 そうして私の膝がじんじんと痛み出すころ。

 部屋の外がにわかに騒がしくなりだしたのだった。


     ◇


 コンコン、と後方のドアが遠慮がちにノックされて、大司教が振り返った。

 扉の傍にいた神官に頷いて見せると、扉が開けられ一人の神官が慌てたように駆け込んで来た。


「大司教様! 町の人々が、騒ぎを起こしております!」


「なんだと……? 一体何事だ」


「踊り狂っているのです」


 その言葉に、神官たちも、王室の関係者たちも、大司教も、皆が一瞬、息を止めたのがわかった。


「はあ?」


 大司教の盛大な問いかけが室内に響き渡った。

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