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2.段取り

「これからの流れを伝えておく」


 互いにソファに向かい合って座った。

 ようやっとリヒャルトと二人きりになり、ほっとした。

 女官たちに囲まれていると、なんだかあらさがしをされているようで気が抜けなかったから。


「今日の予定だが、まず国王に謁見する。そこで挨拶と結婚について願い入れる」


「でもさっき、リイナ様って人の話が出てたけど。婚約者とかなんじゃないの?」


 王太子なのだから、幼い頃から婚約者もいたはずだ。それがそのリイナ様なのかなと思ってたんだけど。


「ああ、それは気にしなくていい。すぐに話は済む」


 たいした問題ではないというようにけろりと言う。

 そんな簡単に済むものなのだろうか?


「そんな。ないがしろにしていいの? 相手の人もいいとこの人なんじゃないの?」


 大抵は政略結婚だと思うけど、その場合相手も相当な立場のはずだ。他に結婚したい人がいるから婚約解消させてくれといきなり言って、そうですかと済むようなものだろうか。


「それはそうだが、まあその話はおいおいだな。今は時間がない、話をつづけるぞ」


 意に介さないリヒャルトに逆に不安を覚えながらも、これ以上言い募っても仕方がないので頷く。


 だけど相手の令嬢のことを思うと、いきなり聖女だという村の娘が連れて来られて王太子妃の座が奪われるなんて、我慢ならないのではないかと思う。悲しむか怒るかわからないけど、不快には違いないだろう。


「国王への挨拶が済んだら、城内を案内する。そこでおまえが聖女だと顔を売っておけば、令嬢たちもおいそれとは手を出すまい」


「う、うん」


 キタ。令嬢たちのイジメ怖い。


「そして日を改めて、教会にも赴くことになるだろう。そこで聖女の力を試されることになるはずだ」


「試すって、どういうことをするの?」


「私も実際に見たわけではないから詳細は知らんが。国と教会の立ち会いのもと、祈りが神に聞き届けられるかどうかを見る」


「その行程って必要なの? 聖女だから言うこと聞きなさいって言えば済むんじゃないの?」


「まず聖女だと認められなければ発言権などない。周囲を謀るために私が連れて来た偽聖女だと思われてはならんからな。今の聖女は教会側がたてた偽聖女であるとの疑いがある。教会側は立ち合いも見事こなしてみせたからこそ、偽物がやろうとすることは大体想定ができているはずだ。そこで此度の聖女は本物だと見せつける」


 話を聞きながらどきりとした。

 既にここにいるのも偽聖女なんだけど。


「その日にちとか時間って、あらかじめわかるんだよね? 心の準備とかいろいろあるから、教えておいてほしいんだけど」


 アレクシアを捕まえておかなくてはならない。

 ごめーん、今忙しいから無理ーとか平気で言いかねないから。


「わかり次第伝えよう」


「よろしく」


「私とユリシアの婚約を教会に願い出るのはその後だ。どうせ国にとられてしまうなら、聖女であることを認めない可能性があるからな」


 なるほど、と頷くとリヒャルトは続けた。


「それからしばらくは聖女としての力を人々にみせしめる必要がある。これまでの聖女制度をなくそうというのだからな。『聖女様の話であれば素直に聞き入れます』と民が大合唱するほどのカリスマが必要だ」


「それは荷が重くない?」


「笑顔は作れる。」


 簡単に言わないでほしい。

 生粋の王子とは違うのだから。

 でもやるしかないこともわかっている。

 アレクシアにも腹をくくって頑張ってもらうしかない。それが一番大変そうだけれど。


「おおまかにはこんなところだな。細かいことはおいおい話していこう」


 その時、コンコン、とドアが控えめにノックされた。

 次の来客予定があったのだと思い、私は慌てて席を立った。


「じゃあ私はこれで」


「いや、そのままでいい」


 リヒャルトが去ろうとする私を手で制して、ドアに向かって「入って問題ない」と声をかけた。

 ドアの向こうから現れたのは、ふわふわの髪に白い透き通る肌の、かわいらしい少女だった。


 一目見て、私はそれが『リイナ様』だと直感した。

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