勘違い救世主は才能を授かる
先に言います。宣伝詐欺しました。
あと今回長めです。話の流れ的に途中で切れなかったので。
それから、前話と同じくほぼ説明回となっていますが、セインの能力に関わる部分なので読んでおくことをお勧めします。
「そうだ!良いことを思いついたわ!」
「急に大声だしてどうしたんですか」
「力を与えるにしても具体的にどのくらい与えられるか分からないでしょう?だから分かりやすいようにポイント制にしようと思うの!」
「……ポイント制?」
「例えばそうね……一般人一人分の才能を1ポイントだとして、100ポイントを色々な才能に振るのよ。そうすればあなたもどれだけの力を得られるか分かるし、私も与えやすくて楽だわ」
「確かに、分かりやすくていいですね」
(分かりやすいけど、ポイントって……なんか、神々しさのカケラもないなぁ……)
「じゃあ早速ポイントを振っていきましょう!日本人を基準に考えると、大体1ポイントで人並み、2ポイントで得意分野、3ポイントで天才、4ポイント以上で歴史的才能って感じね。まあそれもあくまで基準だから、努力次第で色々変わるわよ。ちなみに全項目0ポイントの人は原始人ね」
「分かりました。色々考えて振ってみます」
(最後の一言絶対無駄でしょ……なんで言ったんだ)
ツッコミどころだらけの説明だったが、ようやく力を与えて貰えるようだ。星矢はどんな人生を送りたいか、それを想像しながらポイントの割り振りを考えていった。
――――――――――
「それじゃあ、これでお願いします」
あれから、フェインラミナスと相談しながらポイントの割り振りを決め、遂に決定した。
説明の時間も含めると、3,4時間ほど話していた。
ただ、一言質問すれば数分かけて説明してくれるので、この数時間のうち2時間はフェインラミナスが喋っていた時間だった。
「……それで良いのね?」
「えぇ、もう迷いはありません」
ポイントの内訳はこうだ。
魔法知識 15
魔法成長 20
魔力操作 3
基礎魔力 3
魔力成長 10
魔力回復 10
基礎筋力 3
筋力成長 5
体力回復 3
基礎免疫 3
不死性能 4
反射神経 5
気配感知 3
作業適正 3
言語理解 3
記憶領域 5
世界知識 1
容姿改造 1
アイテムボックスや転移魔法はどこに行ったのだと疑問に思うかもしれない。
だがこれには理由があるのだ。
星矢はポイントの振り分けを開始した時のことを思い返す。
――――――――――――
「とりあえずそうですね。アイテムボックスと転移魔法をお願いします」
「アイテムボックスと転移魔法だけを使えるようにするなら、大体10ポイントくらいかしら」
「結構使いますね……」
「どうせなら他にも色々と魔法使いたくはないかしら?」
「そりゃあ、使えるならいろんな魔法使って華々しく戦いたいですよ」
「ならいっそ、魔法術式を覚えるんじゃなくて、魔法術式を組めるようにするのはどうかしら?」
「どういうことですか?」
「最初は転移魔法の術式を覚えさせて1ポイント使う予定だったんだけど、これだと一つの魔法を使えるようになるのに毎回1ポイント必要になっちゃうの。ならいっそ魔法術式の組み方を覚えさせて、自分で魔法を作れるようになればもっと多くの魔法を使えるようになると思ったのよ」
「魔法を自分で作る……そんなことが出来るんですか」
「一部の天才と言われる魔法学者はいくつか魔法を作ってたりするわよ。だから不可能ってわけじゃないのよ」
「なるほど……良いですね。ポイントはどのくらい使いますか?」
「そうね……13ポイント分あれば、魔術研究出来るほどの知識を覚えられるわね。あとは最初からある程度魔法は使えた方が良いと思うから基礎魔法の知識も2ポイント分覚えた方が良いと思うわよ」
「ならそれでお願いします」
「分かったわ。魔法知識に15ポイントね。あとはそうね、知識だけあっても使えないんじゃ意味がないから、ある程度の魔力量と魔力操作技術は欲しいわね」
「転移魔法やアイテムボックスを使えるくらいだと何ポイント必要ですか?」
「どっちもかなりの技術と魔力量が必要よ。すぐに使えるようにとなるとそれぞれ4ポイント分は必要ね。連発したいならもっと必要になるわよ」
「なら10ポイントずつお願いします」
「10ポイントね。……いや、どうせなら魔力や技術の成長性にポイントを振った方が、後々お得だと思うわ。どうかしら?」
「成長性にポイントなんて振れるんですか?」
「それはもちろん。むしろ才能ってそういうものなのよ。知識に関しては、勉強出来るような環境が無いからポイントを使った方が良いと思っただけだもの」
「そうだったんですか……じゃあ魔力量や魔力操作技術にポイントを振る必要はないんじゃないですか?」
「あなた魔法の使い方知らないじゃない。それに見た限り地球の人は魔力を持ってないわよ。いくら成長性があったところで元がゼロだと何も成長しないわよ」
「それは……確かにそうですね。じゃあ魔力量と操作技術に3ポイントずつ、魔力量の成長性に10ポイント、あとは……その他諸々の魔法に関する成長性に20ポイントお願いします」
「えぇ!?あなた正気!?魔法だけでどれだけポイント使うつもりなのよ!」
「どうせなら他の誰よりも優れた分野を持っておきたいじゃないですか。それに、魔法なら汚れたりしませんし、スマートに使えそうじゃないですか」
「それは……そうね。剣聖や賢者なんて呼ばれる人物はその才能をほぼ全て、剣や魔法のために注ぎ込んだ、なんで話があるくらいだもの」
「じゃあこれでお願いします」
「ちょっと待って、その魔力成長率じゃいずれ回復量が追いつかなくなって、最大魔力は多いのに常にすっからかん。なんてことになりかねないわ。魔力回復量にもポイントを振るべきよ。ある程度の元があれば魔法関連の成長性で追いつけるようになるはずよ」
「じゃあ、魔力量の成長性が10ポイントだから、魔力回復量も10ポイント分お願いします」
「そのくらいが妥当だと思うわ。他に魔法関連で必要なものはないかしら?」
「かっこいい攻撃魔法とか、回復魔法なんかも使いたいですね」
「それは魔法知識を元に術式を組めば使えるようになるはずよ。心配しなくても大丈夫よ」
「あとは、蘇生魔法なんかも使えたりしますかね?」
「無理よ。死んだ人は生き返らないの」
「そう……ですよね。あれ、でも俺は一度死んだんですよね?」
「あなたは一度死んだ魂を、記憶をそのままに異世界で新しい肉体に転生させる。っていう手順を踏んでるの。これでもかなりグレーな方法なのよ。これは蘇生ではなくあくまで転生なの。それに記憶を持った魂を転生させるには、死んだ世界とは別の世界に移す必要があるのよ。あなたからしたら一緒に感じるかもしれないけれど……異世界転生という形を取ったからこそなし得たことなのよ」
「そういうことだったんですね」
「とにかく蘇生魔法は無理よ。他には何かない?」
「魔法に関してはこれで充分だと思います」
魔法関連にポイントを振るだけで2時間ほど話続けてしまった。
だが、今後の人生を左右することだ。慎重に考えて損はないだろう。
果たして、このポイントの振り方が本当に慎重と言えるのかどうかは誰にも分からないが。
続いて魔法以外の才能について相談した。
「体力や筋力は必要ですよね。日本は平和でしたが、異世界は危ないんですよね?」
「そうね。一般的に魔獣と呼ばれる生き物が生息しているわ」
「魔獣?」
「動物が魔力の影響で変異することがあるの。それが魔獣よ。普通の動物とは筋力や魔力がかけ離れていて、最低でも元の動物より10倍は筋力も魔力も保持しているの。魔獣固有種なんてのもいるけど珍しいから会うこともないと思うわ」
「そんなものがいるんですね……なら尚更、戦う為の力が必要ですね」
「……そういえばあなた、異世界に行って旅をするつもりはあるのかしら?」
「ええまぁ、せっかくの異世界ですから。いろんな国を渡っていろんな景色を見ていきたいと思っています」
「旅をするというのなら人並み程度の力じゃすぐに死にかねないわね。そうね……筋力とスタミナには少しポイントを振った方が良いと思うわ。あとは危機回避のために気配察知能力も高めた方が良いわね。他にも、戦闘の際に上手く攻撃をかわせるように反射神経なんかも強化するべきかしら」
「瞬発力とか防御力みたいなものは必要無いんですか?」
「ゲームじゃあるまいし、そんなの無いわよ。瞬発力は筋肉の使い方次第ではかなり上がると思うわよ。練習次第ね。防御力は魔法でなんとかしなさい」
やはりところどころ現実的であった。
「そうですか……分かりました。じゃあ筋力とスタミナに3ポイントずつ、それから筋力の成長性に5ポイント、気配察知能力に3ポイント、あとはそうですね、戦闘なんてしたことないので、咄嗟の反応が出来るように反射神経に5ポイントお願いします」
「基礎筋力に3、基礎体力に3、筋力成長に5、気配察知に3、それから反射神経に5ね。これで戦闘面は大丈夫かしら?」
「そうですね、魔法関連に比べると些か心許ない気もしますが、ポイントも残り少ないですからね。あと何ポイントあります?」
「えぇっと……20ポイントね」
「少ないですね……」
「これでも普通の人に比べたら多いのよ?贅沢言わないの」
「そういえばそうでしたね。他に必要なもの……あ、そういえば言葉ってどうなるんですか?日本語ではないですよね?」
「忘れてたわ。確かにそうね。言葉は何種類かあるのだけれど……全部喋れた方が良いわよね?」
「それはまあ、出来ることならそうしたいですね」
「全部分かるようにするとなると……3ポイントね」
「結構少ないですね」
「そりゃあ一つ言語を覚えたらあとは単語を変えるだけだもの。それほど難しいものでもないわよ」
「英語が苦手な身からすると簡単には感じないんですけどね……」
「まあ、良いじゃない。これからは言語の壁にぶつかることも無いのよ?」
「そうですね!ありがとうございます」
「これで言葉の問題は大丈夫として、常識の壁もあるわね」
「あぁ……確かに俺異世界のことは何も知りませんからね。通貨も国名もどんな文化なのかも」
「じゃあ一般教養レベルの知識は与えておくべきね。教育機関もない世界だからそれほど多くはないし、1ポイントあれば充分よ」
「少し疑問に思ったんですけど」
「何かしら?」
「魔法の知識に異世界の言語、それに一般常識まであるじゃないですか。これほどの量の知識を一度に教えられても覚えておける気がしないんですよね」
「それもそうね?知識を与えても忘れては意味がないものね。それじゃあ記憶力にもポイントを振っておきましょうか。さっき言った分を覚えておくだけなら1ポイント、2ポイントあればほぼ忘れないと思うわ」
「んー……そうですね。異世界に行ってからも色々と覚えることはありそうですし、せっかくなので5ポイント程、振っておきたいですね」
「分かったわ。記憶領域に5ポイントね」
「そういえば、病気とかって大丈夫なんでしょうか?多分日本にない病気も色々あると思うんですよね」
「ええそうね。多少は基礎体力でなんとかなると思うのだけれど、心配かしら?」
「はい。どれだけ強くなれても病気で倒れては意味がないですから」
「分かったわ。じゃあ基礎の免疫力を高めましょうか。何ポイントにする?」
「……2ポイント、いや3ポイントでお願いします」
星矢は少し悩んでそう答えた。せっかくなら病気知らずで異世界を過ごしたいと考えたからだ。
「それほどあれば殆どの病気は防げると思うわ」
「全部ではないんですね」
「そりゃあいくら免疫があっても防げないものはあるわよ。でも今のあなたがかかるような病気、数百年に1人出るかどうかよ。心配する必要は無いわ」
「そういうことでしたら、病気は大丈夫そうですね。他には…うーん……どんな技能が必要かどうかも分からないので難しいですね」
「それならありとあらゆる作業に対する才能をつければ良いんじゃない?」
「そんなこと出来るんですか!?それならそれにほとんどのポイントを振った方が良いんじゃ――「そんなことないわ」」
星矢の言葉を遮るようにフェインラミナスが声を出す。
「ありとあらゆる作業に通ずる才能。言わば飲み込みが早くなるっていうことなんだけど、こういったいろんな分野に関わる才能っていうのは専門分野に対する才能に比べると効力が弱いの。数万人数億人分の才能があれば万能者と呼ばれることも夢じゃないけれど、100回程度じゃ良くて器用貧乏止まりよ」
「それじゃあ、それにポイントを振っても意味無いんじゃ……?」
「それがそういうわけでもないのよね。なんて言ったら良いのかしら。そうね……コツを掴みやすくなるって言ったら分かるかしら?」
「……よく分かりません」
「例えばあなたが新しく楽器を始めたとして、どうすれば良い音色が鳴るのか、正確にリズムを取れるようになるのか、そういったことは誰かに教えて貰わないと簡単には分からないでしょう?」
「そりゃあまあ、初めて触るものならそうですね」
「そういう時にどうすれば上手くできるのか、というのが自然と分かるようになるのよ」
「それが、ありとあらゆる作業に通ずると?」
「そういうこと。専門家には敵わないけれど、ある程度のことなら何でも、卒なくこなせるようになると思うわよ」
「すごいですね……」
「今さら何を言ってるの?あなたが選んだ魔法の才能、あれはちゃんと修行すれば戦争を1人で終わらせることが出来るほどの力を持っているのよ?このくらい出来て普通よ」
「俺の魔法ってそんなに強くなるんですか!?」
「努力次第だけどね。充分あり得るわよ」
「才能って恐ろしいですね……」
「それで、その恐ろしい才能を作業全般の適性に振ってはどうかしら?という話なのだけれど」
「すみませんあまりの衝撃に忘れてました。そうですね、1ポイントで充分じゃないですか?」
「悪くはないけど、1ポイントだけじゃ目に見えるほどの変化は見られないわよ?」
「じゃあ3ポイントではどうですか?」
「それなら物覚えが良い人くらいにはなれるわね」
「ならそれでお願いします」
「分かったわ。戦闘関連も生活関連もこれで充分かしら?残り5ポイントだけどどうするの?」
「オススメとかあります?」
「レストランのオーダーみたいな聞き方するわね……まあいいわ、私としてはそうね……動物と仲良くなれる才能とかどうかしら?心が癒されるわよ」
「なんですかそれ……わざわざ貴重なポイントを使うほど必要なことでもないでしょう」
「あら、あなた動物嫌いなの?」
「別に好きですが……わざわざ動物のためにポイントを使おうとは思いません」
「……そう、残念ね。ならそうね、外見を変えるのなんてどうかしら?あなたの今の顔ってこれから行く世界ではあまり見かけない特徴を持ってるから、せめて変に思われない程度に顔を変えるのもアリだと思うわよ?」
「変……ですかね?」
「まあ、珍しいわね」
「なら、異世界で悪目立ちしないような顔でお願いします。ただ、あまり元の顔とかけ離れた容姿は嫌ですね」
「そのくらいなら簡単ね。分かったわ。1ポイント使うけれど大丈夫?」
「これにも使うんですね。まあ、大丈夫です」
「4ポイント余ったわね」
「そうですね」
「……」
「……」
「寿命とかどうかしら?」
「寿命ですか」
「えぇ、せっかく生き返るんだもの。今度は長生きしたくない?」
「寿命だけ伸びても、老後、自由に動けない期間が伸びるだけじゃないですか?」
「そこは安心して、寿命に比例して肉体や精神の最盛期も伸びるようになってるから」
「なら残りは全部寿命に入れておいてください」
「これなら通常の倍は生きるんじゃないかしら。60代になっても多分あなたピンピンしてるわよ。良いの?」
「長く健康でいられるのは良いことですよ。これで大丈夫です」
「分かったわ。一応寿命が伸びるのに付随して、傷や病気で死ににくくなるわ」
「おぉ、より長生き出来そうですね」
感度の声を上げるセインに対し、
「長生きするための能力なんだから当たり前じゃない」
少し、呆れたようにフェインラミナスはそう返した。
とにもかくにも、これで全てのポイントは振り終わったのだ。
―――――――――――――
ポイントを振り分けた時の事を思い出していた星矢にフェインラミナスが声をかける。
「じゃあ今ポイントを割り振って決めたように力を与えるのだけれど、変更点は無いわね?力を与えた後じゃもう変更は効かないわよ」
「大丈夫です」
「もう一度聞くけど、本当にそれで良いの?」
「大丈夫です。もう心は決めました」
「私としては魔法に偏り過ぎててバランスが悪く感じるのだけれど……」
「せっかく多くのポイントがあるんです。人よりも優れた分野が欲しいじゃないですか」
「動物親和とかにポイント振ってモフモフパーティを作るのも悪くないと思わない?」
「それはあなたの趣味でしょう……俺は色々な魔法が使いたいんです」
ため息を吐くように星矢は拒否した。
「ま、本人が決めたことにこれ以上口は出さないわ。それじゃあ、今から力を与えるわ」
そう言ってフェインラミナスは目を瞑り、呪文を唱え始めた。
ということで皆さん申し訳ありませんでした。
異世界は次回になりました。
次回は流石に異世界に行きます。
今回は本当です信じてください。
そして今話について、会話文だらけで地の文がほとんど存在しません。
というのも星矢本人は気付いていないのですが、いまの星矢って人魂状態なのです。
つまりキャラの動きを地の文で表すことが出来ないのです。
結果として会話文しかない今話のような構成になりました。
読みづらいと思われた方には謝罪を。
それでは次回から星矢の異世界生活をお楽しみあれ!