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勘違い転生者の無自覚冒険譚  作者: ルーニャ
第1章 異世界からの来訪者
13/18

勘違い受験生は試験を受ける

前話でネタバレされたと思った人。

申し訳ありませんでした。ネタバレではありません。

 魔法師ギルドの受付嬢に連れられて向かった先は、窓の無い狭い部屋だった。

 部屋の中には小さなデスクと椅子が一つずつ置かれており、部屋の端に置かれたランプが部屋中を明るく照らしていた。



「ここで学力試験を受けていただきます。不正防止のため試験官を一人立たせます。気が散るかも知れませんがご了承願います」


「大丈夫です」



 今は試験官の有無より試験内容の方が気になって仕方がないセインだった。



(っていうか、勉強時間も与えられずに早速試験ってどういうこと!?ぶっつけ本番とか聞いてないんだけど!?)



 そんなことを考えているセインだったが、普通は勉強を終えてから魔法師ギルドに向かう。全く勉強せずに来るセインの方がおかしいだけである。

 もちろん、魔法師ギルド側がそんなこと知っているはずがなかった。



「では、席についてください」



 急かすような受付嬢の声に、セインは慌てて椅子に座る。


 いつの間に持ってきていたのやら、受付嬢は紙とペンを取り出し、デスクの上に置く。おそらくこの紙が試験用紙なのだろう。



「では、試験官が到着するまで少々お待ち下さい」



 今すぐ始めるわけでは無いらしい。

 だが、その間に勉強が出来るわけでもなく、すぐに試験官の男性が入ってきた。



「それでは、私は失礼します。扉が閉まると同時に試験を始めてください。制限時間はありませんので落ち着いて解いてくださいね」



 そう言い残して魔法師ギルドの受付嬢は部屋を出て行く。

 そしてゆっくりと扉が閉まる。


 バタン


 扉が閉まったのを確認したセインはデスクの上の紙を返し、問題を確認していく。


『問 対象の筋力を増強し、身体能力を向上させる魔法【身体強化(フィジカルアップ)】は第何級指定魔法か』



(やっぱり魔法に名前って付いてたんだ。ってことは詠唱とかもあるのかな?俺何も言わずに魔法使ってるんだけど、目立ったらどうしよう!?ドヤ顔しとけば良いかな!?……ってそうじゃない、試験中なんだった……えぇっと確か攻撃性があるものが、第五級以上だったよね……なら第六級か第七級か第八級のどれかなのか。……わっかんねぇ)



 悩みながら先程受付嬢から聞いた魔法の分類方法を思い出す。



(第六級が失敗した時術者本人に危険が及ぶもの、だったかな?なら第七級か第八級……難しそうな魔法だし第七級かな)



 必死に思い出しながら、ようやく1問目を解き終える。


『問 蔓植物を成長させ、対象を縛って拘束する魔法【蔓拘束(ウィップバインド)】は第何級指定魔法か』



(これは分かる!縛るってことは攻撃性があるから第五級だ!……攻撃性、あるのかな?)



 セインは先行きが不安になりながらも問題を解き進めていく。

 それから、10問ほど解いたとき、見たことのないパターンの問題が出てきた。


『問 次のうち、第七級指定魔法でないものを答えよ。


 1,【探査(サーチ)

 2,【飛行(フライ)

 3,【点火(イグニッション)

 4,【解析(アナライズ)


 なお、各魔法の効果は以下のものであるとする。


探査(サーチ)

 術者の魔力を広げ、周囲の索敵を行う魔法。


飛行(フライ)

 術者の周囲に風を起こし、制御することで空を飛ぶ魔法。


点火(イグニッション)

 指先に火を灯す魔法。


解析(アナライズ)

 対象の詳細な情報を読み取る魔法。』



(新しいパターンの問題出てきた!こういうのもあるんだね。えーっとなになに?……解析(アナライズ)なんていう魔法あるんだ。これ使えれば鑑定無くても良いんじゃないかな?頑張って覚えよう。ってまた脱線してた。んー、点火(イグニッション)は攻撃性が無いって言えるのかな?うん、これは点火(イグニッション)だな)



 何度か思考が脱線しながらもセインは順調に解いていく。

 それからまた10問ほど解き、残った問題は一つとなった。


『問 次のうち、第七級指定魔法に属するものを全て選べ。なお、完答で5点とする。


灯火(ランプ)

水生成(クリエイトウォーター)

土人形(ゴーレム)

暗視(ナイトヴィジョン)

思念伝達(テレパシー)

魔獣(モンスター)契約(コントラクト)


 また、各魔法の効果は以下のものとする。


灯火(ランプ)

 魔力で火を模した灯りを作り、周囲を照らす魔法。


水生成(クリエイトウォーター)

 飲料水を作る魔法。


土人形(ゴーレム)

 土で作った人形を作り、操作する魔法。


暗視(ナイトヴィジョン)

 光の収集率を上げ、暗い場所での視界を確保する魔法。


思念伝達(テレパシー)

 近くにいる者に魔力を通して声を届ける魔法。


魔獣(モンスター)契約(コントラクト)

 魔獣と契約し、仲間にする魔法。』



(えぇ、難しくない?消去法使えないじゃん。んんー、分かんねえ……とりあえずそれっぽいの書いておこうかな)



 セインはフェインラミナスの恩恵により、魔法を作る知識は有しているが、魔法学を学んだわけではない。

 魔法そのものについての知識はほとんど無いに等しかった。


 魔法の分類法に至っては先程知ったばかりである。

 そうして四苦八苦しながらもセインは全ての問題を解き終えた。



(やっと終わったぁぁ……。にしても異世界に来てまでテスト受けさせられるとは思ってなかったなぁ。普通に学校のテストみたいな問題の出し方だったし、こういうところは世界が変わっても一緒なのかも)



 セインがググッと腕を上げて体を解していると、試験を終えたことに気が付いた試験官が話しかけてきた。



「随分と悩んでいたようだな。それほど難しい問題は入れていないと思うが……とりあえず試験用紙を回収する。次は技術試験だ。それが終わる頃には採点も終わっているだろうから、技術試験が終わったら採点結果を言い渡す。どちらか片方でも不合格だった場合はその場で帰っていただく、再試験がしたくなればいつでも来ると良い。両方合格していたら次は性格試験だ。では、技術試験に行ってこい。応援しているぞ」



 試験官は必要事項を述べた後、微笑みながらセインを応援した。



「はい!頑張ります!」



 返事にも自然と気合いがこもる。

 そして、次の会場へ向かおうと部屋の扉を開いたところで気が付いた。



「そういえば、技術試験ってどこでやるんですか?」


「私に付いて来てください」


「うわっ!?」



 いつの間に来ていたのか、セインの目の前に受付嬢が立っていた。

 そもそも、セインの試験が終わった後、試験官は外に合図を送るような仕草はしていなかった。どうして受付嬢はセインの試験が終わったことに気が付いたのだろうか。



(そういえば……思念伝達(テレパシー)っていう魔法があった気がする。もしかしてそれかな?だとすると、やっぱり魔法って無詠唱が基本だったり?うわぁ、ドヤ顔しなくて良かったぁ……)


「……?何をしているのですか?早く付いて来てください」



 思考の海に沈んでいたセインを受付嬢が呼び起こす。

 セインは慌てて受付嬢に付いて行った。



「ところで……」



 会場へ向かう途中、歩きながら受付嬢が声を上げる。



「セイン様の試験が終わった直後に、どうして私が向かうことが出来たのか。不思議ではありませんでしたか?」


思念伝達(テレパシー)の魔法、ですか?」



 すると受付嬢は少し驚いたように眉を上げた。



「気付いていたのですか。試験官からは気付いた様子は無いと聞いていたのですが」


「気付いていたというよりは、後で気付いたって感じですかね。試験問題にも思念伝達(テレパシー)が載っていたので、もしかするとって思いました」



 不思議そうな顔をしていた受付嬢はセインの言葉を聞き、今度は納得したように頷く。



「そういうことでしたか、しかし、その場の状況や知識から判断して正解を導く能力というのは、生きていく上で非常に重要ですからね。セイン様は見込みがある、のではないでしょうか」



 褒められている。ということに気が付いたセインは嬉しくなり口角が上がるのを抑えられなかった。

 実はセインにとって自画自賛することはままあるが、他人に直接褒められることはそれほど多くなかった。


 幼馴染である聖奈は、よく星矢のことを褒めていたが。それは別である。



 そんな話をしながら歩いていると、ギルドの屋上に出た。学校の教室2つ分ほどの広さがあり、端の方に的のようなものが置いてあるのが見えた。



「着きました。ここが技術試験の試験会場となります。普段は修練場となっているのですが、今は誰もいないようですね」



 受付嬢によるといつもは人がそれなりいる場所らしい。セインギルドに来たのは早朝だ。それから学力試験の間に1時間ほど経っているようだが、まだ早い時間なのだろう。

 昼になると人が増えて来ると受付嬢は言う。



「では早速技術試験を始めます」


「よ、よろしくお願いします」



 気付けばセインは手を握り締めていた。途端に自分が緊張している事に気が付く。



(昨日も何気なく魔法を使ってたけど、変だったりしないよね……?)



 この世界で自分以外の魔法を見たことがないのだ。

 先程の試験官もいつ魔法を使ったのか気付けなかった。

 嫌でも不安と緊張が心を塗り潰す。



「最初に確認ですが、セイン様は魔法は使えるのですか?」


「は、はい。この棍棒も魔法で作ったものです」



 そう言ってセインは手に持っていた石棍棒を受付嬢に見せる。


 受付嬢は変なものを見るような目でそれを見つめた。



「これを魔法で、ですか?わざわざ魔法で武器を作るとは、セイン様は不思議なことをするのですね」


「あ、あはは」



 本当のことを言えるはずもなく、宿荒らしにあったという言い訳も用意しているが、それも人に言うようなものでもない。

 セインは笑って誤魔化すことにした。



「とにかく魔法が使えるのであれば話は早いですね。セイン様、なんでも良いので魔法を使ってください」



 受付嬢にそう言われたセインはこの世界に来て最初に使った石を生成する魔法を使うことにした。


 自身の内側に意識を向ける。

 心臓から溢れてくるモノを少しずつ動かす。

 初めて魔法を使ったときは手間取った魔力操作も、今はすっかり慣れてしまった。


 すぐに心臓から溢れる魔力は手に取るように動かせるようになる。

 魔力を掌へ向けて動かす。そして今度は魔力を動かし掌に魔法陣を描く。



 魔法陣が完成した時、魔法陣に使った魔力がフッと消え、掌には小さな石が乗っていた。


 魔法を使い終えたセインは受付嬢に視線を向ける。

 自分の魔力操作技術が、どれほどのものか。それを見られているのだ。



「えっと、石を作る魔法です」


「ふむふむ。なるほど。魔力の操作はなかなかですね。動き始めは辿々しいですが、途中からかなりスムーズに動かせていました。魔法資格を持っていない人とは思えない熟練度です」



 べた褒めだった。



「あ、ありがとうございます!」


「でもまだ試験は終わりではないですよ。次はこの魔法陣を描いてみてください。これは試験用の魔法で、第八級指定魔法の中ではトップクラスに難易度の高い魔法です」



 受付嬢はそう言って魔法陣の描かれた紙をセインに渡す。どんな効果があるのかすら教えてもらえなかった。


 しかし試験で使う魔法が危険なはずがない。セインはほんの少し怯えながらも魔法陣を描くために魔力を動かしていく。


 受付嬢に渡された紙に描かれた魔法陣はセインの知らない魔法だった。


 二重の円の間に魔法文字と呼ばれる文字が書かれている。真ん中は内側の円を4つに割るように十字が走っており、それらの頂点を結ぶ正方形が描かれていた。


 セインの持つ魔法の知識がその魔法陣から魔法の効果を読み取る。


 真ん中の十字は分割を意味しており、正方形は凝固を意味している。しかしそれらを合わせて描いた場合、不定形という意味になるらしい。


 そして二重円の間に書かれた魔法文字の意味は生物の創造。



(もしかして……)



 セインの脳裏に一つの可能性が浮かぶ。

 それと同時にセインが描いていた魔法陣が完成した。


 その瞬間、魔法陣が光を放ち熱を帯びる。



(こんな効果魔法陣には描いてなかったぞ!?)



 困惑するセインの心とは裏腹に魔法陣の光と熱は少しずつ収まっていき、魔法陣がパッと消えた。


 魔法陣が消えた後、魔法陣があった場所には、



 透き通ったゼリーのようなものが蠢いていた。


試験を1話で終わらせて結果発表まで行こうとしたんですが無理でした。

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