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勘違い転生者の無自覚冒険譚  作者: ルーニャ
第1章 異世界からの来訪者
12/18

勘違い宿住まいは魔法を知る

 冒険者ギルドを出たセインは昨日泊まった宿屋『穴熊の住処』に向かった。


 中に入るとカウンターには誰もいなかった。



「すみませーん」


「はいよー」



 セインが声を上げると奥から女将が出てきた。



「宿を取りたいんですが、部屋は空いてますか?」


「大丈夫だよ。個室と雑魚寝部屋、どっちにするんだい?」



 昨日は盗まれて困るような荷物も無く雑魚寝部屋を

 選んだが、今日はウサギ狩りの報酬がある。

 他の冒険者からすればわざわざ危険を冒して盗むような額ではないだろうが、100%あり得ないとも言いきれない。


 だが雑魚寝部屋では50ルニなのに対し、個室は300ルニだ。報酬の1割強が無くなってしまう。


 セインはしばらく悩んだ末、雑魚寝部屋に泊まることにした。道具を盗まれるのは防げないが、金を盗まれない方法を思い付いたのだ。



「雑魚寝部屋食事付きでお願いします」


「あいよ。130ルニと身分証を出しな」



 言われた通りにギルドカードと130ルニを手渡す。

 すぐに女将からギルドカードを返される。



「じゃあ昨日と同じ部屋に行きな。寝る場所は空いてるところならどこでも良いさね。それから、夕飯は日が完全に落ちたらもう出さないからね。気をつけな」


「分かりました。すぐに食べても良いですか?」


「はいよ。じゃあ食堂で待ってな。すぐに出すよ」



 言われた通り食堂に向かい、席についてしばらく待つ。



「お待ちどう!今日の夕飯だよ」



 そう言って女将がテーブルに置いたトレイに乗っていたのは、芋のようなものをすりつぶした料理、見たこともない野菜が盛り付けられた赤いサラダ、そして朝と同じ大きな肉が1枚だった。



(量は朝食の時とあまり変わらないんだなぁ)



 そう思いながらセインは芋(?)のペーストを口に入れる。



「熱っ」



 出来立てなのだろう。芋(?)はかなり高温でセインの口の中を蹂躙した。

 セインとしてもまさかペーストにされたものが熱々だとは思っていなかったため、口の中をまともに火傷させてしまった。


 セインは慌ててテーブルの真ん中に置かれてあった水瓶とコップを手に取り、コップに水を注いで飲み干した。



(口の中がまだヒリヒリしてるけど、かなりマシになった)



 気を取り直してサラダを食べる。

 セインは今まで緑の葉っぱの野菜しか食べて来なかった為、赤い葉野菜は初めて見た。


 恐る恐る口に運ぶ。セインの予想は良い意味で外れることになった。



(うおお、シャキシャキしてて美味しい!野菜自体の味が強くて食べやすい!)



 あっという間にサラダの皿は空っぽになってしまった。

 次は肉を食べる。



(これは今日の朝のやつと一緒かな。美味しい)



 流石に同じものでは感想も少なかった。

 それから黙々と食べ進めていくセイン。


 ふぅーふぅーと息を吹いて冷ました芋(?)は癖が少なく、肉と共に食べれば美味しく食べられた。

 お米のような扱いなのだろう。



 食事を終えたセインは階段を上り大部屋に入る。

 昨日と同じ窓際のスペースが空いていた為、そこに陣取ると、セインは魔法を使い始めた。


 セインが始めたのは金を盗まれないようにするための作戦。

 それは石を変形させた魔法を宿の床の木に応用するというものだった。


 そうすることによって床に硬貨を入れるスペースを作り、その後同じ魔法で蓋をすれば、そこに金があるとバレない限り絶対に金を盗まれる心配は無い。



(これで良いかな)



 金を隠した後、床を見てみるが不自然な点は一つもない。これならバレる事もないだろう。


 仮にバレたとしても取り出すために床を削る必要があるため、その物音で起きることが出来る。

 セインにはこれが完璧な作戦のように思えた。



(やっぱり俺は天才かもしれないな!)



 だがセインは気付いていない。

 セインが使った魔法はセインのオリジナルではなく、魔法を学んだ者なら大体が使えるようなポピュラーなものだ。


 流石に魔法を使われたら物音などしない。

 盗まれ放題なのだ。そのことにセインは気付いていなかった。



 ――――――――


 翌朝。


 起きたセインが金を隠した場所を魔法で開く。


 そこには昨日隠した金が1ルニも減ることなく入っていた。

 フラグなどなかった。



(良かった……盗まれてない。完璧なのは分かってるけど、やっぱり最初は心配だよね)



 だが、ずっと続けていればいつか盗まれるだろうことは想像に難くない。今回は運が良かっただけなのだ。


 そんな事を知らないセインは呑気にこの作戦が完璧だと信じていた。

 彼が現実を知るのはいつになるだろうか。



 朝食を食べて宿屋を出たセインは、魔法師ギルドに向かう事にした。

 足りない道具は多いが、昨日の狩りの経験からしばらくはこのままでもやっていけると感じたからだ。



 道ゆく人に尋ねて魔法師ギルドまで向かう。

 この世界には地図は普及していない。目的地に向かうには人に聞き回るしかないのだ。それが常識になっているため、道を尋ねても嫌な顔一つせず教えてくれる人ばかりだ。


 そうしてセインが辿り着いた場所。そこは冒険者ギルドの正反対の大通りに面していた。


 魔法師ギルドに掲げられた看板には、魔女が使うようなとんがり帽子が魔法杖に被せられている絵が描かれていた。


 扉は開放されており、中の様子が窺える。

 基本的な造りは冒険者ギルドと同じで、扉の近くにはテーブルスペースがあり、正面奥にはカウンターが設置されていた。


 カウンターの右側は売店になっているようで、何やら怪しげな素材が並べられていた。


 セインが魔法師ギルドに入っても振り向く人は誰もおらず、テーブルに座っている魔法師達は熱心に議論を交わしており、周りに注意を払っていないようだった。


 冒険者ギルドと似た造りでありながら、雰囲気が全く違う魔法師ギルドにセインは少し驚いた。

 ザキから、冒険者になる魔法師も多いと聞いていたため、似たようなものだと想像していたのだ。


 しかし、絡まれる心配もないため気負う事もなく、セインはカウンターに向かった。


 カウンターに座る受付嬢は、ギルドの看板に描かれていた帽子と同じものを被っており、服も如何にも魔女らしいローブであった。

 恐らくは魔法師ギルド職員の制服なのだろうが、セインにはコスプレしているようにしか見えなかった。


 魔女っ子である。

 この手のものが好きな人からすれば、ここは天国かもしれない。


 生憎とセインはそのような趣味も性癖も持ち合わせていなかったため、それ以上の感想は持たなかった。



「すみません。魔法の資格を取りたいんですけど」


「魔法資格の取得ですね。魔法師ギルドにはもう所属されていますか?」


「まだです」


「では、こちらの用紙に必要事項を記入していただきます」



 受付嬢から差し出された紙には冒険者ギルドの時と同じ要項が載っていた。

 必要事項を書いた後、受付嬢に紙を渡す。



「セイン様ですね。ではまず説明をさせていただきます。セイン様はまだ登録を完了していません。というのも、魔法師ギルドに所属出来るのは魔法師だけなのです。そのため魔法師ギルドでは、魔法資格の試験とギルドの登録を同時に行っています。登録料金は試験料金も兼ねていますので、試験に落ちても何度でも受験することが可能となっております。今のところで質問はございますでしょうか?」


「えぇっと、今から試験を受けて合格すれば、資格も得られるしギルドへの登録も出来る、ということで良いですか?」


「その認識で間違いありません」


「試験内容を聞いても良いですか?」


「詳細は規則によりお伝え出来ませんが、大まかな内容だけ説明させていただきます。まず第一に学力試験。ここではどのような魔法が第何級指定魔法に分類されるかを解いていただきます。自身の使用可能な魔法の種類を把握出来ているかを確かめるための試験です」



 受付嬢が話し始めた試験内容を聞き逃すまいとセインは静かに聞くことにした。



「続いて性格試験です。この試験では、危険思想の人物が危険な魔法を使えないようにするための試験です。この試験に落ちた人はすべての魔法資格を剥奪されますのでセイン様もご注意ください」



 セインは驚いた。性格試験なんてものがあるとは思ってもみなかった。だがそれもそうだろう、魔法というのは魔法というのは個人で絶大な効果を発揮する事ができる。

 危険な人物がそれを使えばどうなるか想像に難くない。



「最後に技術試験です。ここでは実際に魔法を使っていただき、魔法を暴発させる危険が無いかどうかを判断します。この試験は登録時のみ行われていますので、次回からは学力試験と性格試験のみとなります」


「……終わりですか?」


「試験内容は以上となります」


「学力試験がメインなんですね……」



 セインは想像していたものとは違う試験内容に驚きを隠せなかった。

 魔法師ギルドの試験なら、他にも魔法の威力やら魔力の量やらを調べられると思っていたのだ。



「セイン様がご存知かどうかは分かりませんが、魔法というのはその危険度によって分類されています。ここで注意していただきたいのが、難易度では分類されていないということです。そのため、第七級に指定されている魔法の中にも高難度の魔法が含まれているため、技術試験を続ける必要性がないのです。魔法の等級が上がったからといって必要とされる技術が高くなるわけではありませんので」


「確かに……」



 言われてみればその通りだ。魔法が難易度別で分類されていないのなら試験で技術を見たところで意味はない。

 最初だけその試験があるのは、最低限の技術が無ければ暴発を起こしまくって危険だからだろう。



「では続いて、魔法の分類について説明します――」




 それからの受付嬢の説明を要約するとこうだ。



 魔法は危険度毎に第一級から第八級に分類される。(難易度別ではない)


 第八級→魔法そのものに全く危険がなく簡単かつ魔力消費の少ないもの(俗に言う生活魔法や身体強化魔法)


 第七級→直接的な危険はないが第八級よりも難易度が高いため、暴発や魔力切れによる気絶の恐れがあるもの


 第六級→攻撃性は無いが、制御に失敗したときに術者本人に危険が及ぶもの(転移魔法はここに分類される)


 第五級→攻撃性を持つが、対象の命を脅かさない程度の威力のもの


 第四級→攻撃性を持ち、対象を殺す意図を持って用いるもの


 第三級→集団の命を奪うほどの威力を持つもの


 第二級→戦争に使われることでその勝敗を左右する威力のあるもの(大規模集団転移魔法はここに分類される)


 第一級→天災を起こし、周囲の環境に影響を及ぼすもの



 ということらしい。

 この説明から、第八級には資格が要らず、第七級に技術試験が設けられている理由をセインは理解した。


 それから魔法資格のことをその資格で使用可能になる魔法に応じて、第七種魔法資格から第一種魔法資格と呼ぶらしい。

 この説明は冒険者ギルドでも聞いていた魔法師の呼び名と一致していたためすぐに理解出来た。


 一般的な魔法師が取得している資格は第三種までらしい。というのも第二種以降の魔法資格を得るためには国の許可が必要なのだとか。



(確かに、国の運命を左右するような危険な力を持った人を管理せず放置ってのは怖いよなぁ)



 受付嬢が長い説明を終え、一息付くとすぐに言葉を発した。



「それでは、早速第七種魔法資格の試験を開始いたしますが、よろしいですか?」



 学力試験が少し、いやかなり不安ではあるが、魔法の分類方法は先程教えて貰った。

 それに照らし合わせて解けば行けるだろう。



「お願いします」


「それでは登録料兼試験料として300ルニをお支払いください」



 セインは300ルニを取り出して受付嬢に渡す。



「ちょうどお預かりいたしました。それでは試験会場にご案内しますのでこちらへどうぞ」



 そう言って受付嬢はセインをカウンターの奥へと誘う。

 セインはそれに追従し、試験会場へと向かうのであった。

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次回、セイン魔法使いになる!(ネタバレ)

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