OP
OP1
初投稿作品です。よろしくお願いします。
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コンクリートの無機質な壁。役目を終えた蛍光灯。床に散らばる無数の銃器と剣。
そんな物騒な部屋に似つかわしくない一人の少女と3名の男が座っていた。
「なぁ、隊長。考え直してくれよ。俺たちには…あんたを手に掛けることはできない。」
「俺もです。せっかく貴女は意志を得たんだ。もっと生き永らえてもいいのでは?
例え、こんな世の中でも。」
「ふふ。心配してくれているのはわかってる。でもね?私は…今のままじゃこの世に不幸を齎してしまう。
ほんとは生きたいよ。せっかく…心を持ったんだからさ。でもいいんだ。私の心が保たないし…何よりこれが終わった後はどうするの?私自身が争いの火種になるのは御免だよ。」
「まったく…何で心なんて持っちまうんですかね?なぁ、桑原中尉?」
「不敬ですよ。神谷少佐。隊長は自分の立場を理解しておられる。それ故の決断でしょう。
当然、私も隊長を手には掛けたくないですから。」
「はぁ…君達も強情だよね。もうこの際本音をぶっちゃけちゃうとさ…私は…私でいられるうちにキリをつけておきたいんだ。
この心はもう壊れかけてる。なんで機械とはいえ、意思あるものを壊さなきゃいけないのか?なんで戦いを続けなければならないのか?
もう…たくさんだよ。守るための、終わりの見える戦いならまだしも、なんで続けるかも解らなくてただ戦ってるだけなんて。もう…………………嫌だよ…」
そう言うと同時に、少女は身体を震わせる。その仕草は涙という機能を持たない彼女なりの悲しさと悔しさの表現だった。
「強情なのは貴女の方でしたね。隊長?」
「…………………え?」
「やっと本音を見せてくれたな。まぁ、それでどうなるという訳でもないが。俺たちは気付いてましたよ?
…………………伝説とか迷信の類いの話だが、記憶を持って生まれ変わることができるらしい。本当かどうかは知らんがな。」
「それは本当ですか?林堂中佐。」
先程、桑原中尉と呼ばれた軍服姿の男がそれを聞いて机に手を叩き付けて立ち上がる。
「あぁ。ま、迷信の類いだろうから、期待はするなよ。」
突き放す様な口調。しかし、それにはほんの僅かな期待も篭っていた。
「しかし…隊長に心が宿ったことを考えると…可能性はあるのではないでしょうか?」
「「確かに」」
桑原中尉と『隊長』以外の全員が同調した。
彼が言ったのは、『隊長』の心がどこかから生まれ変わり、彼女に宿ったのだということ。
もしそれが偶然だったとしても、1%でも可能性があるのであれば桑原はそれに賭けるつもりでいたのだ。それほどまでに彼が『隊長』にかける想いは強い。
「それは本当なんですかねぇ?よしんば本当だったとしても…そこまで運良く「転生」できるものなんですかね?」
神谷少佐と呼ばれた男が疑問を口にすると
「まぁ、それは…アレだ。天命に任せる」
「「「えぇ…」」」
林堂中佐以外の全員が溜息をついた。
ただ、少女はそれに同意する。
「私はいいよ?というか、さっさと殺って。
私の気が変わらないうちに。」
「なら…俺も覚悟を決めるとしますかね?」
「!?神谷少佐!まさか…」
「今から私は記憶を消す。それから…----
緊急プログラムを行使。解除コードの入力………成功
安全装置の解除、並びに記憶の変化を開始します。
現在の記憶をクリア━━━記憶の変化に成功。」
この場合の緊急プログラムとは自分が敵の手に渡った時にデータを全て消去するものだ。何故かそれに記憶の変化機能が付いており、彼女は物珍しさからなんとなくそれを選んでいた。
何者かの意思がそうさせているように…
「あの廃工場に連れて行く。準備してくれ。
……………桑原。彼女が記憶を消した以上、もうお前の………いや、俺たちのことも分からない筈だ。どうしようもない。」
桑原中尉は反論しようとしたが、中佐と少佐という自分より階級が上の人物には逆らえない。それに、「隊長」自身が既に決めていることであり、自分がどうこうできる問題でもない。
「やはり…こうなってしまいましたか…」
実は桑原中尉は『隊長』がこう言い出すことを半ば勘づいていた。
彼にとって『隊長』とは特別な存在であり…何より、短い間ではあったが自分に戦闘技術を授けてくれた恩師のような人だった。
そんな人を自分の手に掛けるなどと…そんなことはできないと。何より自分自身が理解していた。
せいぜい自分達にできることはもし来世があるとしたら平和な世の中であってほしいと祈ることのみ。そんな自分に無力感を感じつつも彼は祈る。せめて争いの少ない世の中であってほしいと…………
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そして、私は目を覚ました。
と、思ったらなんか軍服を着た男の人に担がれてた。あれ?怪我とかしたっけ?
そもそも私がいた国って戦争の火種すら無かった気がするんだけど。
この軍人さんたち、なんか悲痛というか悲しそうな表情だな…
あれやこれやと考えている間に軍服さん達の目的地に着いたらしい。なんか沢山の木材やら金属類やらが置かれた場所だった。
と思ったらまた壁にもたれかからせられる形で座らせられた。
なんやねん。どっちかにしてよ。
そう思っていると、男の人の顔がさらに悲痛になっていく。その人の手には金属の塊のようなものが握られていた。
何?あれ。と思ったその瞬間。何か大きな音と共に私の左胸に激痛が走り…私の意識は闇に沈んでいった。
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「せめて…埋葬してやりましょう。これが私たちにできるせめてもの弔いですから。」
「そうだな。世話になった。」
そして、彼女が愛用していた軍刀と銃を土に突き刺し…名を刻んだ。
「「「隊長………貴女のことは…何があっても。例え魂が消えようとも。絶対に忘れない。」」」
彼らは敬礼をし、その場から立ち去った。
それを、何者かが観察していた。くつくつという嗤い声をたてながら。
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???????
「わたくしに出来るのはここまでです。さっさと消滅するとしましょうか」
「待っ…………て」
「…………?どうかしたのですか?」
「付い……て…行って。それ……と……….この…欠片…を…いず…れ…使う……時…が…………」
「ふぅ…貴女も人遣いが…いえ…神……まぁ、罪滅ぼしのつもりでやりますが。では」
「あり……がとう………頑張っ……て」
それきり、声は聞こえなくなった。