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少年が「感情」を知るまでの話  作者: あんぱん
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第1話

僕は喜びを感じない。

中学校生活最後の体育祭で優勝したけれど、

別に嬉しくなかった。

僕は悲しみを感じない。

一昨年、自分を育ててくれた叔母が亡くなったが、

別に悲しくなかった。

僕は怒りを感じない。

いきなり知らない人にぶつかられ、睨まれても、

別に怒らなかった。

僕は恐怖を感じない。

目の前の女の子が車に轢かれそうになっている。

彼女を助けようと車道に飛び出していくことも、

別に怖くなかった。

無事に、とは言い難いが、彼女を助けられた。

しかしどうだろう、当の彼女は泣いている。

人が泣くのは大きく分けて二つ、嬉し泣きと悲しみ泣きがあるらしい。 よく分からないが。

じゃあ、なぜ彼女は泣いているのだろうか。

僕が身代わりになり、傷ついたことに「してやったり、馬鹿な男だ」とか思いつつ、嬉しくて泣いているのか。

とんでもない自殺志願者で、死ねなかったことが悲しかったのか。

自分の命が助かったことが嬉しかったのか。

僕が傷ついたことが、悲しかったのか。

それは分からないが、確かに僕は彼女の瞳の中に涙を見た。




僕が目覚めたのは、おそらく病院のベッドだろう。

ああ、全くなんてことをしてしまったんだ。

今日は高校二年生になる始業式の日なのに。

まあ、ワクワクとかを知らない分、他の人よりはマシだろう。

ふと、僕は気づく。

隣に先ほどの彼女がいることに。

彼女も僕と同じ制服を着ている。

うちの高校はカバンまで指定されていて、学年ごとに色の違うラインが入っている。

見ると、僕と同じ学年だった。

そうか、僕は同じ学校の、同じ学年の人を助けたのか。

ん?同じ学校の?

僕は「慌て」、思わず

「始業式はどうするんだ!?」と叫んだ。

彼女も驚いただろう。

しかし、それよりも先に医者が駆けつけ、僕をなだめてくれた。

彼の話では、足が折れただけで済んだそうだ。

だけと言っていいかは分からないが。




レントゲンなどの軽い検査を受けた後、病室に戻ると、まだ彼女は座っていた。

彼女は「あの……」と口を開き、続ける。

「私は羽島玲乃と言います。助けていただき、ありがとうございました」と頭を下げる。

僕は「感謝」というものを知らないので何故今彼女が僕に頭を下げているかわからなかった。

「困惑する」僕を見て、彼女はクスクスと笑う。

彼女はすぐに「ごめんなさい」と言ったが、完全には笑顔が抜けていない。

いよいよ分からない。何故彼女が笑っているのか。

だが、少し考えて答えは出た。

ああ、僕は大変なことをしてしまったのだろう。



つまらなかったらやめます

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