98 開戦に、異世界へ
緊急討伐依頼を受ける冒険者と騎士団の全員が揃い、時刻は蓮人の体内時計によると11時を少し回ったところだ。
目の前約3キロメートル程の位置にまでスケルトンは迫ってきている。どうやら予想よりは少し速かったらしい。
「まだ正午ではないようだが、スケルトンとの距離的にそろそろ始めなければならない。
蓮人殿は王女様と共に魔法を放つ準備をしておいてもらいたい」
「了解っす」
左翼と右翼にも時間には早いがもうまもなく開戦すると伝える伝令が走っているようだ。 もう10分以内には開戦となるだろう。
オリビアも少し離れたところで魔力を練っていた。
蓮人もそれにならって目を閉じ、魔力を練ることだけに集中する。
(集まれ、俺の体の中の魔力……)
蓮人の体内を、血管を巡る血のように魔力が駆け巡っていく。
魔力が循環する度に濃密に、そして強くなっていくのが分かった。
(体が……熱い。血が沸騰してるみたいだ……でも痛くはない、むしろ力が湧いてくる……)
蓮人は今までにないほどに力が湧き出て溢れていた。
「れ、蓮人さん……大丈夫ですか……?」
心配そうなリーの声が聞こえてくる。
「何がだ?」
何が大丈夫と尋ねられたのか心当たりがない蓮人は魔力を練りながらもリーに尋ね返す。
「いえ、蓮人さんの体が燃えていますから……」
「は!?」
蓮人は慌てて目を開いて自分の体を確認する。
「な、なんだこれ!?」
蓮人の体から火が立ち昇っていた。
「スーパー〇イヤ人みたいだ!!!!」
違う所といえば立ち昇っているオーラが金色ではなく赤色というところと髪の毛が逆だっていいないことぐらいだ。
「スーパーなんとか?ってのは分からないけどそれ大丈夫なの?」
ジリーからも心配の言葉がかけられた。ジュシュも心配そうにこちらを見ている。
「うん、特に問題は無いな。むしろ絶好調だよ」
手を握ったり開いたり、腕をグルグル回して調子を確認してみるが、いつもより体は動いているようだ。
「確かに服も燃えていないですし、隣にいても熱くないので火じゃないんですかね?蓮人さんの無属性魔法を発動した時に出てくる白いオーラ的なものですかね?」
「それは一理あるな。魔力を練るとき、無属性魔法を発動させるときみたいに血管に魔力が流れていってたしそうなんだろうな」
「そ、そうなんだ……」
ジリーは蓮人の無属性魔法を見たことがないだけに何を言っているのかイメージも湧かないようだ。
そんな時、騎士団長から声が掛けられた。
「そろそろ始めたいのだが、準備はよいか?」
「いつでも大丈夫っす」
「では私が開戦の号令の後に放てと言う。それを合図にして王女様と息を合わせて魔法を撃ってくれ。頼んだぞ」
そう言って騎士団長は持ち場へ戻った。
蓮人はホワイトストライプスと少し離れてオリビアの横に行き、魔法を放つ準備を始める。
「この前の魔法でいいよな?」
「ええ……ってその火は何?でも熱くないわね。
……まあいいわ、今は魔法を撃つことに集中する、息合わせてね?」
「おう、任せろ!」
蓮人は体中に集まっている魔力を右の手の平に集中させる。すると体を覆っている火が小さくなり、代わりに右の手の平の火が莫大に大きくなった。
(なるほど、これは俺の魔力が燃えているってことなのか……?)
そんなことを考えている間に騎士団長は騎士団に開戦の号令をかけていた。
「…………我々に敗北はない、行くぞ!」
そして騎士団長はこちらへ向く。
「放て!」
「「炎よ!」」
蓮人とオリビアは同時に手を前に突き出した。
それぞれの手から燃え盛る炎が放たれ、それらがスケルトンに着弾するよりも手前で混ざり、1つの大きな猛火となった。
そしてその猛火がスケルトンを襲う。
スケルトンへと着弾するとともにその猛火は一瞬でスケルトン全体を覆い尽くした。そして巨大な火柱が上がる。
それによって生じた熱風が3キロほど離れていたはずの蓮人達にも届き、周囲の温度が一気に5度は上がったように感じられた。
「すっごいな……」
蓮人は思わず心の声を漏らしてしまった。
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